大型燃料電池車対応の水素ステーション 物流の脱炭素化 本宮

トラックなど大型の燃料電池車に対応した水素ステーションが本宮市に完成しました。
秋頃から、国内初の休みのない24時間営業に移る計画で、物流の脱炭素化を支える拠点になると期待されています。

完成したのは、物流を担う大型トラックなどの燃料電池車に対応した水素ステーションで、東京に本社がある産業ガスの大手企業が、本宮市の東北道のインターチェンジのそばに開設しました。

15日は現地で開所式が開かれ、エネルギー政策を所管する経済産業省の幹部や地元の関係者らも出席しました。

この中で運営会社のイリョン・パクCEOは「本宮市は東北地方の玄関口に位置していると言える。今後ますます燃料電池トラックが増えると見ていて、日本社会の持続可能性に貢献していきたい」と述べました。

この水素ステーションは、福島市やいわき市などについで県内5か所目で、当面は日中のみの営業ですが、秋頃からは国内初の休みのない24時間営業に移行し、深夜も含めて途切れることのない物流の需要に応じる計画だということです。

本宮市は東北道と磐越道にアクセスしやすいことから、物流倉庫やメーカーの工場が多く立地するなど、首都圏と東北地方を結ぶ要所となっていて、大手コンビニなどが利用を決めているということです。

多額の費用がかかる水素ステーションを整備するにはユーザーを一定数、確保することが欠かせません。

国土交通省のことし4月末時点の集計で、福島県内にあるFCV=燃料電池車は458台で、愛知県、東京都、神奈川県に次いで、全国で4番目に多くなっています。

福島県内の燃料電池車は、458台のうち現在、大半が乗用車ですが、今後、トラックが増える計画もあります。

トヨタ自動車のグループなどが脱炭素の技術開発を進めるための会社「CJPT」は、今後、郡山市といわき市で燃料電池トラックおよそ60台を供給する計画です。

県内のスーパーや本宮市に工場が立地するビール会社などが利用する計画だということで、乗用車に続いて、商用車の分野でも燃料電池車のユーザーが増える見込みです。

また、浪江町には、国内最大級の水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」もあり、今回の水素ステーションは、将来的に、浪江町で作られた水素を取り扱うことも計画しているということです。

県内では、このように、燃料電池車のユーザーが豊富なことに加え、水素を供給するサプライチェーンも整いつつあり、需要と供給の両面で水素社会実現への機運が高まっていることを背景に国内初の無休の水素ステーションが実現する見通しです。

トヨタ自動車の水素ファクトリープレジデントで「CJPT」の山形光正取締役は「福島の皆さんは水素に高いモチベーションと信念を持っていて、どのように水素社会を実現すればいいのか議論する中で、皆さんが作り上げた結果が今回の水素ステーションだ。大型、小型のトラックを福島県、日本全体でこれからどんどん増やしていきたい」と話していました。

FCV=燃料電池車は、トヨタ自動車が世界に先駆けて投入したMIRAIなど、乗用車の分野で先行して普及が進んでいます。

しかし、燃料電池車の活用で政府やメーカーなどが本命視しているのは、物流を担う大型トラックなどの商用車です。

自動車の脱炭素化に向けて、EV=電気自動車は、世界的に急速な普及を見せていますが、大型トラックなど物流の現場に本格導入するには、走行距離が短いことや充電に時間がかかることが課題となっています。

これに対し、燃料電池車は、電気自動車に比べて走行距離が長く、燃料に当たる水素の充填に必要な時間が短く済む特徴があります。

ただし、水素ステーションの整備に多額の費用がかかるのがネックでした。

そこで、水素ステーションの運営各社は、東京、名古屋、大阪などの物流の大動脈となる幹線道路沿いを優先して整備を急いでいて、今回、本宮市も、関東と東北地方を結ぶ交通の要所として設置された形です。