国内最大級 オウムガイの化石 福島 南相馬で見つかる

県立博物館などの研究グループは国内最大級の「オウムガイ」の化石が南相馬市にある白亜紀の地層から見つかったと発表し、オウムガイの進化の解明につながる貴重な資料だとしています。

この化石はおととし、南相馬市鹿島区にあるおよそ1億4500万年前の白亜紀の地層から宮城県の愛好家が発掘し、福島県立博物館に寄贈しました。

博物館の主任学芸員の猪瀬弘瑛さんらのグループが調べたところ、「シュードノーチラス属」と呼ばれるオウムガイの一種であることがわかりました。

殻の直径は31センチ余りあり、グループによりますと、オウムガイの化石としては国内で2番目に大きいとみられ、このうち恐竜が生きていた中生代のものでは最大だということです。

南相馬市内では、別の場所のより古い地層から、直径およそ7センチの「パラセノセラス属」と呼ばれる種類も見つかっています。

オウムガイの仲間は、太古の昔に、ヨーロッパなどから現在の太平洋西部に生息域を広げたことがわかっていますが、国内での化石の報告は限られていて、今回の発見は、当時、日本近海にさまざまな種類が生息していたことを裏付けるもので、その進化と分布を知る上で貴重な資料だとしています。

猪瀬さんは「こんなに大きなオウムガイの化石は珍しく、できれば自分で発掘したかった。さらに分析を進め、新種かどうかも確かめたい」と話しています。

「シュードノーチラス属」の化石を見つけた鈴木颯一郎さん(26)は宮城県の大学で航空宇宙工学を専攻する大学院生です。

小さい頃から化石好きで、「とんでもないものを見つけてしまったという気持ちはあった」と発見当時の驚きを話してくれました。

鈴木さんが化石を発見したのはおととし3月で、アンモナイトの化石を発掘したいという友人の要望で、一緒に南相馬市の地層を訪れた時に見つけました。

鈴木さんは「下がもろくなっていてバラバラになってしまいそうだなと思い、山を下りて店で接着剤やこん包材など資材を買い込みました。戻ってきて、接着剤で補強して固めながら掘り出すと10個ぐらいの部分に分かれたので、家に持って帰って泥を落として組み立てました。その時に初めてこんな大きなものだったんだと気づきました」と当時を振り返りました。

本格的に化石の発掘を始めて8年になり、自宅にはおよそ1000個のコレクションがあるという鈴木さんですが、自分が掘った化石が展示される喜びは大きく、今後も力を入れて発掘に取り組みたいといいます。

鈴木さんは「展示されている姿を見るとわが子の晴れ舞台を見るような感じですかね。珍しいもものや、見つかっていないものを採集して、今回のように学術的に貴重な成果を出し続けられれば」と話していました。

オウムガイはタコやイカなどと同じ仲間の頭足類と呼ばれる生き物で、化石として知られるアンモナイトと共通の祖先から分かれたと考えられています。

4億年以上前のシルル紀と呼ばれる時代から生きていたとされ、長くその姿を変えずに生き残ってきたことから、「生きた化石」などと呼ばれます。

もとは現在のヨーロッパや北アフリカに生息していましたが、およそ1億4500万年前のジュラ紀と白亜紀の間に太平洋にも進出し、分布を広げたと考えられています。

およそ6600万年前、恐竜やアンモナイトなど多くの生き物が姿を消した巨大隕石の地球への衝突が原因とされる大絶滅を生き延び、現在もフィリピンやタイなど太平洋西部を中心に4種ほどが確認されていて、国内でも飼育されている個体を見ることができます。

一方、化石の発見例は、ヨーロッパなどが多く、国内では限られています。

恐竜が生きていたのと同じ中生代の化石はオウムガイの進化を考える上で特に重要とされていて、今回を除けば、福井県や大分県で3例しかなく、オウムガイが日本を含めた太平洋でどのように進化し、分布を広げてきたのかは謎に包まれています。