“災害関連死防ぐには” 東日本大震災教訓に福島の医師が指摘

能登半島地震の被災地では「災害関連死」の疑いで亡くなる人が増えていて、どのように防いでいくかが大きな課題となっています。
13年前の東日本大震災と原発事故による災害関連死が全国で最も多くなった福島県南相馬市のケースについて調査・研究を行った医師は、福島県での教訓を踏まえ、能登半島地震の被災地では、リスクの高い要介護者など、災害弱者への医療や介護を途切れさせることなく、平時と同じように提供できる環境を最優先で取り戻すことが重要だと訴えています。

福島県立医科大学教授の坪倉正治医師は、13年前の東日本大震災と原発事故のあと、被災地の南相馬市で医師として活動するほか、500人以上にのぼった南相馬市の災害関連死について、研究チームを立ち上げ、およそ10年かけて調査・研究しました。

520人の分析結果では、平均年齢は82歳で、死亡時期は、直後の3か月がおよそ4割、3か月から6か月が2割あまり、6か月以降がおよそ4割だったほか、全体の半数あまりの267人が被災時点で要介護認定を受けていました。

坪倉医師は、能登半島地震の被災地と、福島県での今後の大規模災害への教訓として、災害関連死を防ぐため、まずは、要介護者に加えて障害がある人や持病がある人など、リスクが高く自らケアを行うことが難しい災害弱者を正確に把握することが重要だと指摘しています。

そのうえで、診療や薬の服用、たんの吸引などの医療や介護、ケアの中断が命を落とすことに直結するとして、これらを平時と同じように提供できる環境を最優先で取り戻すことが重要だと訴えています。

また、今後、医療や介護が行き届く場所への二次避難が進められるなか、一人ひとりの病状や健康状態、必要な薬やケアなどの命に関わる情報を次の避難先に共有することが不可欠だとしています。

坪倉医師は「現地では人材や物資が圧倒的に足りなく、医療・介護スタッフ自身も被災しており、関連死を防ぐには平時の医療や介護の環境を早く取り戻すことが大事だ。それを現場で取り戻すのか、避難先で提供するかのいずれかしかない。支援する人の数を十分確保し、介護やケアの質を落とさず息の長いサポートが求められている」と話しています。