岸田首相 漁業者代表と面会「放出長期でも国が全責任持つ」

東京電力福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、岸田総理大臣は漁業者の代表と面会し、放出が数十年の長期にわたっても国が安全性の確保などに全責任を持って対応していくと強調し、理解を求めました。
漁業者側は反対の立場に変わりないものの、関係者の理解は進みつつあるという認識を示しました。

福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、岸田総理大臣は放出時期を判断すべき最終段階にあるとしていて、21日、全漁連=全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長らと総理大臣官邸で面会しました。

この中で岸田総理大臣は「漁業者の『これまでどおり漁業を続けたい』という思いを重く受け止めている。国として海洋放出を行う以上、安全に完遂すること、また安心してなりわいを継続できるよう必要な対策をとり続けることを、たとえ今後数十年の長期にわたろうとも、全責任を持って対応することを約束する」と述べました。

さらに、風評対策などの予算について、既存の水産予算とは別枠で長期にわたって確保し、対応していく意向を伝え、処理水の放出への理解を求めました。

これに対し、全漁連の坂本会長は「国民の理解が得られない処理水の海洋放出に反対であるということはいささかも変わりはない」と述べつつも、「科学的な安全性への理解は、私ども漁業者も深まってきた。しかしながら科学的な安全と社会的な安心は異なるものであり、科学的に安全だからといって例えば風評被害がなくなるわけではない」と述べました。

一方で「岸田総理の『たとえ数十年にわたっても国が全責任を持って対応をしていく』という発言は非常に重い発言だと受け止めている」と述べました。

これに関連し、西村経済産業大臣は22日関係閣僚会議を開いて、放出を始める時期を判断する考えを明らかにしました。

【漁業者は】
東京電力福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、政府が、できるだけ早く放出を始める方向で調整を進めていることを踏まえて地元・福島県相馬市の底引き網漁の漁業者からは「政府との信頼関係は深まっておらず、放出は受け入れられない」と反対する声が聞かれました。

相馬市の漁業者、高橋通さんは来月に解禁される底引き網漁の船主らでつくる団体の会長を務めています。

これまで、処理水の放出による風評被害への懸念や、国や東京電力の説明不足などを理由に、一貫して、放出に反対してきました。

岸田総理大臣が20日原発を視察し、21日夕方に漁業者の代表に計画への理解を求める見通しとなるなど、政府ができるだけ早く放出を始める方向で調整を進めていることを踏まえて、高橋さんは「原発事故から12年たっても漁業者に理不尽なことばかり。政府との信頼関係は深まっておらず、放出は受け入れられない」と改めて、強く、放出への反対を訴えました。

そのうえで、処理水の放出後の漁業の復興について、まもなく底引き網漁が解禁されることを踏まえて「放出後の魚の検査で、万が一通常より高い値が出たら処理水を放出したためと理由づけされて大問題となり、漁ができなくなることも起こりうる。われわれの目標は元どおりの漁業に戻すことで、若い世代につなぐためにも漁業の復興を諦めるわけにはいかない」と思いを語りました。

【内堀知事は】
東京電力福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、岸田総理大臣が21日夕方、漁業者の代表に計画への理解を求める見通しとなったことを受けて、福島県の内堀知事は「総理自身が全漁連と真摯(しんし)に向き合い信頼関係を作っていくことが重要だ」と述べ改めて、政府が責任をもって対応するよう求めました。

福島第一原発にたまる処理水を海に放出する計画をめぐり、岸田総理大臣は21日夕方全漁連=全国漁業協同組合連合会の坂本雅信会長や福島県漁連幹部らと面会し、直接、計画への理解を求める見通しです。

内堀知事は21日の定例会見で政府ができるだけ早く放出を始める方向で調整を進めていることを踏まえて、「国は引き続き国際機関と連携し、透明性の確保に努めるとともに最後まで責任をもって対応していくことが重要だ」と述べました。

そのうえで、岸田総理と漁業者の代表との面会について「風評被害を懸念している漁業者は『本当に漁業を続けられるのか』と痛切な思いを訴えている。岸田総理自身が、全漁連との関係を含めて真摯に向き合い信頼関係を作っていくことが重要だ」とし改めて、政府が責任をもって対応するよう求めました。