東電株主代表訴訟2審始まる 旧経営陣側「事故回避は不可能」

福島第一原発の事故で多額の損害を被ったとして東京電力の株主が旧経営陣に会社への賠償を求めている裁判の2審が、24日から始まりました。

1審は国内の裁判で最高額とみられる合わせて13兆余りの賠償を元会長ら4人に命じましたが、旧経営陣側は「事故を回避することは不可能だった」として1審判決を取り消し、訴えを退けるよう求めました。

東京電力の株主たちは、原発事故が起きたために廃炉作業や避難者への賠償などで会社が多額の損害を被ったとして旧経営陣5人に対し、22兆円を会社に賠償するよう求めました。

去年7月、1審の東京地方裁判所は「浸水対策をとっていれば重大な事態を避けられた可能性が十分ある」などと指摘して旧経営陣5人のうち勝俣恒久元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、それに武藤栄元副社長の4人について賠償責任を認め、国内の裁判で最高額とみられる合わせて13兆3210億円の賠償を命じました。

判決を不服として旧経営陣側と株主側の双方が控訴し、24日から東京高等裁判所で2審が始まりました。

この中で旧経営陣側は、国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した「長期評価」の信頼性について、「津波対策を義務づけるに足りる信頼性は無かった」と述べ、巨大津波の襲来は予測できなかったと強調しました。

その上で、「事故を回避することは不可能だった」として1審判決を取り消し、訴えを退けるよう求めました。

一方、株主側は、「旧経営陣は巨大津波は来ないものだと思考停止していた。長期間、対策を先送りした責任がある」と改めて主張しました。

審理を終えたあと株主側は記者会見しました。

原告の1人で、事故後に福島県から避難を余儀なくされた浅田正文さんは24日の法廷で意見陳述した思いについて、「原発事故で穏やかな生活が奪われてしまった。東京電力には人の命を大事にする意識が欠けていることを伝えたかった」と訴えました。

弁護団によりますと、裁判所からは当面の予定として来年2月までの審理計画が示されたということです。

海渡雄一弁護士は、「1審は、どのような経緯で原発事故が発生したのかを明らかにし、旧経営陣の責任を断罪した歴史に残る判決だった。2審でも1審の判断を死守したい」と話していました。