世界初 サンマ養殖技術の基礎研究開始 アクアマリンふくしま

近年、深刻な不漁が続いているサンマについて、いわき市の水族館、アクアマリンふくしまは、国内の研究機関と連携し、世界初となる本格的な養殖技術の基礎研究に乗り出しました。

いわき市の水族館、「アクアマリンふくしま」は、サンマの飼育に力を入れていて、史上初の水槽での繁殖を成功させ、23年前の開館当初から世界で唯一の飼育展示を行っています。

「アクアマリンふくしま」は、こうした知見を、近年続いている深刻なサンマの不漁の対応に生かすため、北里大学など国内の3つの大学や研究機関と連携してチームを作り、世界初となる本格的なサンマの養殖技術の基礎研究に乗り出しました。

チームのうち、水族館が研究材料となるサンマの安定供給と、効率のよい飼育数の検討などを、北里大学などは自然界でエサとしているプランクトンに着目し、養殖に適したエサの開発などを、それぞれ担当します。

研究グループは、5年以内をめどにサンマに適した条件を明らかにして養殖技術の確立を目指したいとしています。

サンマの飼育に取り組んできたアクアマリンふくしまの山内信弥さんは、「わたしたちしか持っていないサンマの飼育技術を生かしていけると思うが、展示と養殖では性質も規模もまるで異なる。いかに効率よく、大量のサンマを育てていけるか基礎的な知見を積み上げていきたい」と話しています。

【サンマの水産加工品 製造販売会社は】
いわき市小名浜で主にサンマを使った水産加工品の製造販売を行っている会社では、仕入れるサンマの量は年間およそ100トンに上るということで、今後、不漁によって安定的に仕入れることができなくなるのではないかと不安を感じています。

このため、アクアマリンふくしまが取り組む今回の研究に期待を寄せているといいます。

会社の上野台優社長は「年々、サンマの値段が上がっていますが、現在の状況を考えると、いずれ本当にサンマが入手できなくなるのではないかと、大きな不安を感じています。もう一度、みんなが気軽に食べられる魚になるよう、研究には期待しています」と話していました。

【養殖が難しいサンマ】
サンマは日本の沖合を含む亜熱帯から亜寒帯にかけての広い範囲を回遊する魚で、北海道から東北地方で秋に多くとれることから、古くから庶民の味として親しまれています。

寿命は2年程度とされ、日本周辺では南方の黒潮で生まれて北上し、初夏にエサとなるプランクトンを追って北海道付近まで移動しながら徐々に南下すると考えられています。

しかし、近年は深刻な不漁が続いていて、全国さんま棒受網漁協によりますと、去年の国内の水揚げ量は1万7910トンと、2008年の34万トン余りの20分の1近くにまで減り、農林水産省の審議会も、ことしのサンマの漁獲量の上限を去年より24%少ない11万8000トン余りとするこれまでで最も少ない案を承認しました。

不漁の背景には、気候変動に伴う各地の海水温の上昇により、サンマに適した生息海域が変化している可能性などが指摘されています。

一方で、サンマは、光などのわずかな刺激にも驚いて壁にぶつかって傷つきやすいなど、飼育が難しいうえ単価が比較的安く、採算性が低いとして、これまで養殖技術の研究が本格的に行われた事例はありませんでした。

今回の研究はアクアマリンが水槽での繁殖で得たノウハウもあわせて大学や研究機関と連携してその成果をシンポジウムや論文などの形で発表し、サンマの資源維持につなげていくねらいがあります。