福島大学 寄付金を投票で配分 学生サークル活動を支援

福島大学は一般の人たちによるオンライン上の「投票」によって集まった寄付金で学生サークルの活動を支援するユニークなキャンペーンを今月から新たに始めました。
新型コロナの影響で、制限されてきた学生の課外活動の活性化につながると期待されています。

この取り組みは東京に本社があるスタートアップ企業と福島大学が今月19日から始め、オンライン上の特設サイトには運動部や文化系など合わせて29のサークルの活動内容などが掲載されています。

大学のOBや保護者などのほか一般の人も、支援したいサークルを選んで投票ボタンを押して活動を支援する仕組みで、投票数が多い順にこの企業が集めた資金が配分されます。

このほか個別に寄付も受け付けます。

福島大学によりますと、通常、企業や個人からの寄付金は主に施設の修繕や、研究教育活動などに利用されるということで、学生活動の支援を目的としたものは珍しいということです。

ほかに11の大学でも行われていて、新型コロナの影響で資金をはじめ、多くの面で3年以上、活動を制限されてきた課外活動の活性化につながると期待されています。

投票期間は今月25日までで、福島大学総務課の鹿又暁主事は「コロナ禍や物価高などで学生の経済情勢が厳しさを増す中で、少しでも充実した学生生活の機会を増やしたいと考え、実施しました。コロナ前のようにサークル活動が再び活発になるとうれしい」と話していました。

キャンペーンに参加するサークルの学生たちからは、支援に期待する声が聞かれました。

このうち、福島大学の書道研究会はふだんは学内向けの展示や、県内外の展示会などに出展するため、30人余りの部員が日々、書の腕を磨いています。

研究会ではことしの秋の大学祭でコロナ前と同じ規模で書道のパフォーマンスを行おうとしています。

しかし、パフォーマンス用の大きな筆は安いものでも1本1万円以上と高額で、半年に1回、部員から徴収する部費もふだん練習に使う墨や紙などの消耗品に消え、筆を買い換える余裕はないといいます。

書道研究会は今回のキャンペーンに参加して筆の購入資金を調達したいと考えていて、SNSで何回も投票を呼びかけていました。

サークル長で3年生の野村奈緒さんは「ことしはコロナ前と同じようにたくさんの人の前でパフォーマンスをしたいと考えているのですが、古い筆では少し格好悪いので後輩たちのことも考えると新しい筆がほしいです。キャンペーンで少しでもお金が集まるとうれしい」と話していました。

ことしからコロナ禍前のように盛んに大会などが開かれるようになったことで、支援を求めているサークルもあります。

福島大学馬術部は現在12人の部員が所属し、3頭の馬を飼育しています。

大会に参加するため学生たちがほぼ毎日、早朝から馬術の練習を行っています。

新型コロナの影響で、過去3年間は大会の中止が続きましたが、ことしは今月下旬以降、県内や北海道で開かれる3つの大会への参加が決まるなど活動が活発になっています。

参加するためには馬のエサ代などの日常的な経費に加え、馬の輸送に最低5万円かかるほか、部員の旅費など多額の費用がかかると予想されます。

3年生の主将、深谷舞さんはコロナ禍前でも資金繰りが大変だったという話を聞いていたため、今後の活動に備えて少しでもお金を工面しておこうとキャンペーンの参加を考えたといいます。

深谷さんは「わたしたちの世代はコロナの影響で、これまで思いきり活動できなかったのでことしは楽しみな反面、お金の面で不安はあります。費用で困らないよう少しでも多く支援をいただきたいです」と話していました。

このキャンペーンを考案し、大学に提案して行っているのは3年前に設立された東京に本社のある大学の財政基盤の強化を支援するスタートアップ企業です。

今回のキャンペーンと同様のイベントは、2年前に東京大学で初めて行われ、会社によりますと福島大学と同じ期限の1週間でおよそ1000万円のお金を集めたということです。

去年からは東北大学や大阪大学なども加わって合わせて18大学でキャンペーンを開催したほか、ことしは同じ期間、福島大学とはほかに11大学が開催しているということです。

学生たちはキャンペーンを通じてサークル活動で足りない資金を補てんできるほか、大学側は厳しい経営状況が続く大学を支援する意思のある個人や企業、団体を把握できるといったメリットがあるといいます。

キャンペーンを企画した会社の中沢冬芽社長は「少子高齢化を大きな背景に、大学はこの先、新しい財源を作っていかなくてはならず、支援者の裾野を広げていくイベントとして役立つのではないか。学生の方々には支援されたお金で何をしたいのか、その思いを相手に熱意を伝えることが大事なので、ぜひ支援したくなるようなアピールをしてほしい」と話しています。