国連科学委員会のメンバーが県立医科大学で講演

去年、東京電力福島第一原子力発電所の事故による健康への影響に関する報告書をとりまとめた国連の科学委員会のメンバーが福島県立医科大学で講演し、「被ばくによる甲状腺がんの発生率の上昇が識別できる形で起こる可能性は低い」などと見解を述べました。

県立医大を訪れたのは、放射線の影響に関する国連の科学委員会=UNSCEARのギリアン・ハース元議長やボリスラバ・メットカーフ事務局長ら3人です。

委員会は去年、放射線被ばくによる住民の健康への影響について、「被ばくが直接の原因となる発がんなどの健康への影響が将来的にみられる可能性は低い」とする報告書をまとめています。

委員会のメンバーたちは大学生およそ80人に対し、原発事故で大気中に放出された放射性物質のデータなどを元に、健康への影響を調べたことを説明しました。

その上で、原発事故のあと福島県内の子どもに、甲状腺がんと診断されるケースが相次いでいることについては、「被ばくによる甲状腺がんの発生率の上昇が識別できる形で起こる可能性は低い」として、「甲状腺がんと診断された多くは超高感度のスクリーニング検査によるもので、放射線被ばくによるものではない」と述べました。

一方で、委員会の報告書には疑問も寄せられていることについて、メットカーフ事務局長は「事務局に寄せられた質問にはすべて回答している。重大な誤りがあるという指摘があるが、実際には小さなミスで、大部分に影響するものではない」と話していました。

国連の科学委員会の報告書には、疑問の声もあがっています。

20日は、原発事故当時県内に住んでいて、その後、甲状腺がんと診断された20代の女性と支援グループが記者会見し、「放射線が直接影響した健康被害はない」とした結論について、「患者の不安を押さえつけ、患者と家族を孤独に追いやるものだ」と批判しました。

その上で、「事故の初期にどれだけ被ばくしたかは十分なデータがない」などとして、報告書の再検討を求めました。

また、今回の委員会の来日に合わせ、国内の研究者らで作るグループが報告書の検証結果を発表し、甲状腺被ばくの原因となる放射性物質のヨウ素131が、原発事故の発生直後、大気中にどれだけ存在したか試算した部分で、元となった論文のデータを誤って引用し、被ばく量を少なく評価しているなどと指摘しました。

グループによりますと、委員会側は一部誤りを認めて訂正の意向を示しているということですが、内容に関わる本質的な質問には回答がないということで、グループ側は結論の撤回を求めています。