原発事故 東電旧経営陣13兆円余賠償命令 過去最高の賠償額

福島第一原発の事故で多額の損害を被ったとして、東京電力の株主が、旧経営陣5人に対し22兆円を会社に賠償するよう求めた裁判で、東京地方裁判所は元会長ら4人に合わせて13兆3000億円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。
原発事故をめぐり旧経営陣の民事上の責任を認めた司法判断は初めてで、賠償額は国内の裁判では過去最高とみられます。

東京電力の株主たちは、原発事故が起きたために廃炉作業や避難者への賠償などで会社が多額の損害を被ったとして旧経営陣5人に対し、22兆円を会社に賠償するよう求めました。

13日の判決で東京地方裁判所の朝倉佳秀裁判長は勝俣恒久元会長と清水正孝元社長、武黒一郎元副社長、それに武藤栄元副社長の4人に合わせて13兆3210億円の賠償を命じました。

判決は、国の地震調査研究推進本部が2002年に公表した「長期評価」の信頼性について「推進本部の目的や役割、メンバー構成などから一定のオーソライズがされた相応の科学的信頼性がある知見だった」として「旧経営陣に津波対策を義務づけるものだった」と指摘しました。

その上で「旧経営陣はいずれも重大な事故が生じる可能性を認識しており、事故が生じないための最低限の津波対策を速やかに実施するよう指示すべき義務があったのに怠った。浸水対策をとっていれば重大な事態を避けられた可能性が十分ある」として、4人の賠償責任を認めました。

小森明生元常務についても過失があったと認めましたが、就任したのが震災の前の年の6月で、対策を指示しても間に合わなかったとして、賠償責任はないと判断しました。

賠償額は廃炉と汚染水の対策費用として1兆6150億円、被災者への損害賠償で支払いを合意している7兆834億円、さらに除染と中間貯蔵の対策費用で平成31年度までに必要とされた4兆6226億円の総額で、これらが最終的に東京電力の負担になるとして、旧経営陣による損害と認定しました。

原発事故をめぐり旧経営陣の民事上の責任を認めた司法判断は初めてで、賠償額は国内の裁判では過去最高とみられます。

会社の損害について株主などが経営陣の責任を追及した裁判では、これまでにも巨額の賠償を命じる判決が出ています。

2011年に発覚した巨額の損失隠しをめぐって大手精密機器メーカー、「オリンパス」の会社や株主が歴代の経営陣16人に対し会社が受けた損害の賠償を求めた裁判では、元社長と元監査役、それに元副社長の3人に総額594億円を会社に賠償するよう命じた判決がおととし確定しています。

「蛇の目ミシン工業」が仕手グループに300億円を脅し取られた事件をめぐって株主が旧経営陣5人を訴えた裁判では、2審の東京高等裁判所が583億円の賠償を命じ、その後、確定しました。

同じ年の2月には「ダスキン」の旧経営陣に53億円の賠償を命じた判決が確定していましたが、「蛇の目ミシン工業」の賠償額はその10倍を超え、当時、確定した賠償額としては過去最高とみられていました。

13日の判決は13兆円余りの賠償を命じ、こうした過去の判決をはるかに上回るものとなりました。

判決を受けて、原告団が東京・霞が関で記者会見を開きました。

原告のひとりである木村結さんは「東電のずさんな経営を許してはいけない、首都圏の電気をつくるために福島の人たちが危険にさらされる現実を変えなければと長きにわたって闘ってきた。原子力発電所は、ひとたび事故を起こせば、取り返しのつかない被害を生命と環境に与えるもので、その重責を担う覚悟を持たないものは取締役などになってはいけないということを示していただいた」と述べました。

海渡雄一弁護士は「原発事故で非常に苦しい生活に追い詰められた大勢の住民に心から喜んでもらえる100点満点の判決になったと思う。原子力事業者の取締役たちに事故の責任があると認定されたことで、今後各地の原子力事業者の経営判断にも影響が出てくると思う」と述べました。

また、河合弘之弁護士は「きょうの判決で非常に印象的だったのは裁判官たちの正義感だ。手を抜いて逃げ回って、何も対策を取らずに事故を起こした旧経営陣に対する怒りが満ち満ちていた。歴史的な意味がある名判決だと思う」と述べ、判決を高く評価しました。

判決について、原子力政策などが専門で、福島第一原発事故では内閣官房参与として対応にあたった多摩大学大学院の田坂広志名誉教授は「個人4人に13兆円という大きな賠償額が示されたことと、旧経営陣には、必要な対策を取らなかった責任があることを極めて明確に示した判決だ」と指摘しました。

また「経営者が安全対策を怠った場合には、現場に関与していなくても、専門的な知識がなくても、最後は極めて大きな責任を問われることが示された。東京電力に対する責任がどう問われたかについては、そのままほかの電力会社にも当てはまり自らの組織のあり方を見直す非常に重要な警鐘だ」と述べ、東京電力を含め原発を運営する電力事業者は、経営陣が安全への責任を自覚するべきだと指摘しました。

その上で「最悪の事態には至らないとして対策が後手に回るというのは、日本の企業や組織にもある根本的な問題で、最後の責任は自分には来ないという、楽観的で甘い対策のまま放置する傾向が高い。判決は、集団的な無責任体制への警告だとも受け止められる」と述べました。