鯖江のいじめ問題 専門委員会”6件のいじめ”あった

鯖江市の女子中学生が複数の生徒からいじめを受けたとして不登校になった問題で、調査にあたった専門委員会は6件のいじめがあったとする報告書をまとめました。
その上で、学校と教育委員会に不適切な対応や遅れがあったと指摘しました。

この問題は、去年3月まで鯖江市内の中学校に通学していた女子生徒が複数の生徒から嫌がらせを受けたとして不登校になり、著しく体調に支障が出たものです。
生徒の家族からの求めに応じて市の教育委員会は「いじめ防止対策推進法」に基づく「重大事態」にあたるとして去年4月に専門委員会を設置し弁護士や精神科医などによる調査が進められてきました。
専門委員会は13日、女子生徒に対するからかいなどのいじめが3年間で6件確認されたとする調査報告書の概要を公表しました。
また、女子生徒が求めたカウンセラーへの相談が実現しなかった点など学校や教育委員会の生徒に対する支援のあり方や調査の体制に問題があったと指摘しました。
調査専門委員会の委員長を務める海道宏実弁護士は会見で「いじめ防止対策に関する法律について、現場レベルでは、正しく浸透しておらず、組織体制に課題があった。いじめの疑いが生じた段階でより速やかな『重大事態』の認定と第三者を含めた調査を行う体制の整備が必要だ」と述べました。

今回の報告書について女子生徒がコメントを出しました。

いじめ重大事態報告書を読んで報告書を読ませて頂き率直な意見を述べさせていただきます。
私が一番に感じたことは、学校の先生の対応は酷いものだったと感じたことです。
先生がもっと適切に早く対応してくだされば私もここまで苦しむ必要がなかったのだろうかと何度も考えました。
中学の時は、本当に死にたい気持ちでいっぱいでした。
毎日のように罵声を浴び、死んでしまった方が楽なのではないのかと思っていました。
しかし、いざ死のうとすると母や父の顔が浮かんできて死ぬことはできませんでした。
とても複雑でした。
幻聴、幻覚が出て辛くなることが何度もありました。
眠りにつくと私をいじめた人達が夢に出てきて、そのことが現実に起きないかと不安でいっぱいでした。
人混みに行くと息が苦しくなり外出することも恐ろしくなりました。
大きな声を聞くと過呼吸発作が出ました。
周囲でコソコソ話をしていると自身の事を言われているのではと思ってしまいます。
もう一生治らないかと悲観し、怖かった日々を送りました。
現在でも人の顔色を窺い、友達を信用しようとしても裏切られるのではと思ってしまい、人を信用することができません。
そんな自分に対しての自己否定も強いです。
時には、加害者生徒は楽しく学校生活を送っているのかと考えることもあり、私はたくさんの薬を服用しなければならなく不条理だと感じてしまうこともあります。
フラッシュバックや過呼吸、時にはきつい言葉を受けると身体的に異常をきたします。
毎日の生活を送るために精一杯生きています。
しかし、辛くても今は前を向き歩かなければと思っています。
両親、親族、私に関わって下さる方がたくさん支えてくれています。
今後の進路についての不安もありますが、少しずつ考えたいと思っています。
加害者生徒の方にお願いです。
二度と人を傷つける行為はしないでください。
言葉は時には鋭い刃になります。
いじめを受けた被害者の心には消えない傷が残り続けます。
その傷は一生消えないものです。
その傷を受けたためにその人の人生が変わってしまうことを頭において自身の口から出す言葉に責任を持ってほしいです。
相手の気持ちになって言葉を選んでほしいです。
学校の先生にお願いです。
助けを求めている生徒の話をしっかり聞いて、先生の主観ではなく、その子が求めている救済方法で救ってあげてほしいです。
被害者に寄り添ってあげてほしいです。
加害者が多くても加害者寄りには絶対にならないでください。
また、先生の言動は生徒に大きく影響することを感じてください。
学校という中で先生の言葉が持つ威力は大きいのです。
だからこそ言葉を選んでください。
鯖江市長さんにお願いです。
いじめはなくならないと思います。
でもいじめが大きくなる前に防止することは出来ると思います。
学校、教育委員会、父兄、本人、専門家たちみんなで考えてほしいです。
少なくとも私のように死にたいと思うまでになる前に救ってあげてください。
今回の調査報告書で、鯖江市のみなさんがいじめについて考えるきっかけとなり、いい方向に向くことを心から願っています。
二度と私のような思いをすることがなく、明るい学校生活が送れるような鯖江市であってほしいです。

調査報告書の公表を受けて鯖江市の教育委員会は会見を開き、同じようないじめが確認された際、迅速に対応するための体制を整えたことなどを明らかにしました。
この中で、齋藤邦彦教育長は「いじめ防止対策をまとめた法律の解釈に甘さがあり、いじめの発生を防ぐことができず、被害生徒や保護者に大変申し訳なく思っている」と陳謝したうえで、いじめが確認された際、調査のための第三者委員会をすみやかに設置する条例の制定などの対応にあたったと説明しました。
一方、法律に基づくいじめの「重大事態」の認定などが遅れた理由について「3年生が受験を控える時期だったということや調査委員会を立ち上げることに伴う経費的な問題もあった」などと述べて、調査専門委員会を立ち上げるための予算措置が遅れたことを明らかにしました。
これについて、女子生徒の母親は、NHKの取材に対し、「早くいじめの認定をして調査を行ってほしいと訴えていたのに、教育委員会の対応は、命より経費の方が重要としか考えていない。極めて強い憤りを感じる」と話しました。

女子生徒の母親はNHKの取材に対し、「これまで訴えてきたことがいじめとして認定され、娘にいじめられる要因は見あたらなっかったという内容に安堵しました。学校、市の教育委員会とも早期に問題に対応してしていただけたなら、娘の中学校での思い出も心の負担も違ったものになったと思います。この報告書の提言が多くの方が救われるきっかけとなることを願っています」とするコメントを出しました。