美浜・高浜原発 福井地方裁判所が仮処分の申し立て退ける決定

福井県にある関西電力の美浜原子力発電所3号機と高浜原発の1号機から4号機について、福井地方裁判所は、住民たちが老朽化による事故の危険性などを主張して運転しないよう求めていた仮処分の申し立てを、いずれも退ける決定を出しました。

福井県などの住民は、去年とおととし、関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1号機から4号機について、設備の経年劣化に加えて、巨大地震への耐震性が不十分で重大な事故が起きる危険性があるなどと主張して、関西電力に対し、運転しないよう求める仮処分をそれぞれ、申し立てました。
これについて、福井地方裁判所の加藤靖裁判長は、29日決定を出し、この中で、原発で想定される地震の揺れの強さについて、「原子力規制委員会の判断などに見逃しがたい誤りや欠落は見当たらない」などと指摘し、このうち美浜原発3号機については、震源となる活断層との距離が1キロ以上離れているとした上で「震源に極めて近い場合に当たらないとした判断は、不合理とは言えない」としました。
また、老朽化した原発の危険性についても、「経年劣化を保守的に想定した上で、耐震安全性評価を行っていて、規制委員会の判断は合理的だ」などと指摘しました。
さらに、避難計画については、原発自体の安全性を考慮せずに、無条件に事故が起こるという住民側の主張の前提は適切ではないなどと指摘した上で「計画に不備があれば直ちに地域住民に被害が及ぶ具体的な危険があると認めることはできない」などとして、申し立てをいずれも退けました。
原発の運転は、東京電力・福島第一原発の事故のあと、原則40年に制限されていますが、関西電力の美浜原発3号機と高浜原発1号機と2号機は、原子力規制委員会の認可を受けて、運転開始から40年を超えて再稼働していて、高浜原発3号機と4号機は来年、運転開始から40年となります。

福井地方裁判所の決定が出ると、裁判所の前では仮処分を申し立てた住民たちが、「命と暮らしを奪う不当決定」とか「能登半島地震を顧みない決定」などと書かれた紙を掲げました。
集まった支援者からは、ため息や「日本の司法は終わった」などという声が上がっていました。

福井地方裁判所が決定を出したあと、住民側が福井市内で会見を開きました。
住民側の代理人の井戸謙一弁護士は、決定の内容について、「関西電力の主張や原子力規制委員会の言い分をそのまま取り入れたもので、私たちが提起した問題に正面から取り組んだといえる部分は全くない」と非難しました。
その上で、「老朽化した原発を一刻もはやく止めるということをさらに追求していきたい。今後、即時抗告するかどうか検討する」と話していました。
仮処分を申し立てた福井県小浜市の82歳の男性は、「万が一の事故が起きてからでは遅い。事故やトラブルが絶えない原発が稼働していることは、私たち若狭の住民にとってけっして抽象的な危険ではない」と訴え、今後、即時抗告したいとする考えを示しました。
また、仮処分を申し立てた福井県坂井市の75歳の男性は、「能登半島地震のひどい被害で、逃げることも家にいることもできなくなっている中、避難ができない状態について触れておらず、結論が決まっていたとしか思えない。命や暮らしを奪う決定で、とても認められない」と怒りをあらわにしました。

福井地方裁判所の決定について、関西電力は「当社主張を裁判所にご理解いただいた結果であると考えている。引き続き、安全性や信頼性の向上に努め、今後も立地地域をはじめ、社会の皆さまのご理解を賜りながら、高浜原発と美浜原発の運転や保全に万全を期していく」などとコメントしています。

福井地方裁判所の決定について、関西電力・美浜原子力発電所3号機が立地する福井県美浜町の戸嶋秀樹町長は「司法の決定に対して意見を述べる立場にないが、引き続き国や事業者は、安全最優先とする発電所の運営管理や立地地域の安全安心の最大限の確保に尽力するよう努めてほしい」とするコメントを出しました。

福井地方裁判所の決定について、関西電力・高浜原子力発電所1号機から4号機が立地する福井県高浜町の野瀬豊町長は「事業者には引き続き安全を最優先に今後も慎重かつ丁寧な運転を継続していただきたい。また、政府には引き続き原子力の重要性や安全対策等について、国民理解の促進をお願いしたい」とするコメントを出しました。