千葉市 「花の美術館」 花壇ほとんど撤去され改善求める

千葉市にある公共施設「花の美術館」で、リニューアル工事に伴って庭園に設けられていた花壇のほとんどが撤去され、市が工事を進めている事業者に対し、施設に花を増やすよう改善を求めていることが分かりました。

「花の美術館」は、千葉市美浜区の「稲毛海浜公園」の中にあり、季節ごとに花と緑が観賞できる施設として市民に親しまれてきました。
しかし、施設の老朽化が課題となり、市は、リニューアルや管理を担う事業者を公募で選定して去年から工事を進めています。
ことし10月には施設の一部が先行的にオープンしましたが、色とりどりの花が植えられていた庭園の花壇はほとんど撤去され、代わりにドッグランが設けられました。
ドッグランは週末を中心に多くの人でにぎわっている一方で、「花を戻してほしい」という要望も寄せられ、市は事業者に対し、来年春ごろの全面オープンまでに花を増やすよう改善を求めています。
事業者側はNHKの取材に対し、「花と緑という施設のテーマを大事にして、花をどこまで増やせるのか検討したい」としています。
千葉市緑政課の植木崇夫課長は「民間の発想を取り入れながら、多くの利用者に楽しんでもらえる新しい空間になるよう、事業者と協議していきたい」と話しています。

千葉市の稲毛海浜公園にある「花の美術館」は、1995年に開かれた「全国都市緑化フェア」の会場だった建物を展示施設として整備したもので、1996年にオープンしました。
施設は、広さおよそ3600平方メートルの庭園や、温室などで構成され、あわせておよそ1600種類、4万8000株の花々を楽しめることから多くの利用者に親しまれてきましたが、近年は施設の老朽化が課題となっていました。
千葉市は7年前、美術館を含めた公園全体の今後のあり方に関する「グランドデザイン」をまとめ、これをもとに、施設のリニューアルとその後の管理や運営を行う事業者を公募で選定しました。
「グランドデザイン」では、美術館は都市部の緑化の拠点として位置づけられ、周辺を含めて市民が植物や花の観賞を楽しめるエリアとされています。
事業者は、「グランドデザイン」を踏まえてリニューアルを行うことと定められていて、選定された事業者は、市に示した方針のなかで美術館について「庭園は花と緑のあふれるドッグランとするほか、温室などでは従来の花や植物の展示と、デジタル技術の融合を楽しめる施設にする」としています。
美術館は、去年4月から閉館してリニューアル工事が進められていて、ことし10月に屋外のドッグランが先行的にオープンし、来年春ごろに全面オープンすることになっています。

「花の美術館」のリニューアルを巡って、市が事業者に改善を求めることになった背景には、施設の運営のあり方が変更されたことがあります。
以前、「花の美術館」は、市が事業者に料金を支払って施設の管理などを委託する形で運営され、市は光熱費などを含めた運営費として毎年1億円を超える予算を計上していました。
しかし、老朽化によってリニューアルが必要になり、この機会に民間のノウハウを導入してよりにぎわいのある施設を目指そうと、新たに「設置管理許可」という制度を活用することにしました。
この制度では、民間事業者が整備や管理の方針を提案して自治体の許可を受ければ、施設のあり方をある程度自由に決めることができ、管理の方法などに細かい取り決めがある通常の委託と比べて、事業者の裁量が大きくなります。
また、施設は独立採算となるため管理を委託する費用はかからず、逆に、改修や運営にかかる費用は事業者の負担となるほか、事業者から自治体に土地などの使用料を支払うことになります。
このため、自治体の経費は大幅に削減できますが、事業者は、収益によって運営費を賄う必要があるため、集客を図ることが求められます。
「花の美術館」では、リニューアルを担っている事業者が、立地環境などから愛犬家のニーズが高いと考え、花壇があった庭園に新たに有料のドッグランを設けたということです。
リニューアルを担っている「ワールドパーク」の木村俊孝さんは、「これまで美術館は収益よりも市民サービスとして位置づけられていたが、これまで通り運営費がかかると収支は厳しいのが実情だ。あくまで公共施設なので市との協議を重ねるが、収益の確保については、民間の視点を伝えてバランスが取れた運営を行っていきたい」としています。
公園の整備や管理に民間のノウハウを導入する手法は全国的に拡大していて、2017年には、民間資金をより広く活用することなどを盛り込んだ国の新たな制度が設けられ、新宿中央公園や横浜市の山下公園などでは制度の活用によって交流施設や飲食店などが設けられました。

公共施設のあり方に詳しい東京都市大学の坂井文教授は、民間のノウハウを活用して施設の再整備などを行う場合、自治体と事業者との間のコミュニケーションと、住民の理解を得ることが重要だと指摘しています。
坂井教授は、今後の公共施設の整備について、「少子高齢化が進むなかで、全国に数多くある公共施設の魅力を高めて持続可能な形で運営することが求められている。民間のノウハウを活用することで、行政だけでは難しい効果的な運営が実現できる」と分析しました。
そのうえで、「公共施設は多くの人がそれぞれに楽しむ場所で、多様な意見があるのは当然だ。民間のノウハウを活用して施設の再整備などを行う場合、自治体は事業者と十分にコミュニケーションを取り、整備の方向性を地元の住民や関係者によく理解してもらうことが重要だ」と指摘しました。