JR津軽線 今別町長が自動車交通への転換受け入れへ

一部区間の不通が続くJR津軽線の存廃をめぐる会議が開かれ、鉄道路線の維持を求めてきた今別町の阿部義治町長はJRが提案する自動車交通への転換を受け入れる考えを示しました。
これですべての自治体が不通となっている区間での自動車交通への転換に合意し今後、具体的な議論が進められることになります。

おととし8月の記録的な大雨以降、一部区間が不通となっているJR津軽線の存廃をめぐってはJRと沿線自治体、それに青森県がトップ級の会議を続け、JRがバスやタクシーによる自動車交通に転換する案を示したのに対し、今別町は鉄道路線の維持を求めてきました。

23日、およそ3か月ぶりに会議が開かれ、今別町の阿部町長は、「鉄路の復旧は断念した。今別町がこだわりすぎても町やほかの沿線自治体のためにならないので、自動車交通への協議に応じるという苦渋の決断をした」と述べ、JRの案を受け入れる考えを示しました。

また、青森県も地元住民の意見などを踏まえると鉄道路線廃止はやむ得ないとの見解を初めて示しました。

会議ではほかの自治体から異論は出ず、すべての自治体が不通となっている区間での自動車交通への転換に合意したことが確認されました。

今後は、鉄道の代わりとなるバスやタクシーをどう運行するか具体的な議論が進められることになります。

赤字が続く全国の地方鉄道の今後のあり方が課題となる中、JR東日本はおととし管内の路線のうち、利用者が特に少ない区間の収支を公表していてこの収支の公表後、自動車交通への転換を前提に議論が行われることになったのはJR津軽線が初めてです。

JR津軽線の自動車交通への転換を提案していたJR東日本盛岡支社の久保公人支社長は「この先どこまでこう着状態が続くのかと心配したところもあったが、取り組みを続ければいつかは皆さんにわかってもらえると思っていた。廃線というとあるものがなくなるというマイナスのイメージになるが、そうではなくていい形で交通モードを変えてこの地域をよくする取り組みだということを発信していきたい」と話していました。

会議の後、今別町の阿部義治町長は「県が『廃止はやむをえない』という考えを示したのでそれが大きな決め手だ。鉄路がなくなるのは残念だが、これからJRを巻き込んで住民が困らないような交通体系を作っていきたい」と話していました。

その上でJRが転換後の自動車交通について18年以上の長期的な運営を目指すとしていることについて「私の中で心配な部分はあるが書面でしっかりと確約もらい、JRが逃げていかないようにくさびを刺したい」と話していました。

自動車交通への転換に賛成していた外ヶ浜町の山崎結子町長は「今別町長も苦渋の決断だったと思うが、今後のことを考えて自動車交通への転換を受け入れてもらったのでこれからは手を携えて前向きな話し合いを進めていきたい。これからも地域住民の意見をしっかりと聞き、『やはり電車がよかった』と思われないような交通体系を作っていきたい」と話していました。

JR津軽線の自動車交通への転換が合意されたことについて地域振興に詳しい青森大学の櫛引素夫教授は、「鉄道がなくなることで地域の暮らしの質の低下が加速する可能性はあるが、JR津軽線の沿線自治体がある津軽半島北部は県内で最も人口減少と高齢化が進んでいる地域で、鉄路が存続しても相当頑張って地域を支える努力をしないと非常に厳しい場所だ」と指摘しています。

その上で、「鉄路を残しただけでは地域の存続には直結しない時代や環境になっているので、バスやタクシーを組み合わせるなどの新しい交通の仕組みや地域の未来を新しく作っていくという契機として前に進むしかないと思う」と話していました。

不通となっているJR津軽線の一部区間で自動車交通への転換が今後、具体的に議論されることについて沿線の今別町や外ヶ浜町ではさまざまな声が聞かれました。

今別町の50代の女性は「復旧してほしいと思っていた。五能線はすぐに復旧したのに、なぜ津軽線だけ廃線の方向になるのか」と話していました。

今別町の80代の女性は、「バスよりは電車のほうがスムーズなので電車があるにこしたことはないが、人口が減っている地域で鉄道の維持をお願いするのはできないと思う」と話していました。

一方、外ヶ浜町の50代の男性は「車を持っておらず電車に頼るしかないのでとても困る。月に一度の通院にも電車を使っているので、自動車交通になっても本数を減らさないでほしい」と話していました。

JR津軽線は、青森駅から外ヶ浜町の三厩駅まで津軽半島を南北に結ぶ路線で、60年余り前に全線で開業しました。

しかし、赤字が続きJR東日本が、おととし11月に公表した「利用が特に少ない66区間」にも含まれていたほか…。

おととし8月の記録的な大雨で土砂が崩れるなどした影響で、外ヶ浜町の蟹田駅と三厩駅の間で運転出来ずいまも復旧のめどは立っていません。

こうしたなか、JR東日本と沿線自治体などは今後の地域交通のあり方について検討を進め、このなかでJR側はバスやタクシーといった自動車交通への転換について繰り返し説明してきました。

沿線自治体の外ヶ浜町は、早い段階で自動車交通への転換に理解を示した一方で、今別町は一貫してJRによる鉄道復旧を求めていて、話し合いは平行線をたどっていました。