核燃料サイクルで知事と関係閣僚の協議会 3年ぶりに開催

使用済み核燃料を再利用する国の核燃料サイクル政策について、中核となる施設がある青森県の知事と関係閣僚などが意見を交わす協議会が29日、開かれ、青森県の宮下知事は地域と原子力施設の共生を考える会議体の設置などを要請しました。

国は原子力発電所から出る使用済み核燃料からプルトニウムなどを取り出し、新たな核燃料として加工し、再び原発で利用する「核燃料サイクル政策」を進めていて、青森県には政策の中核となる原子力関連施設が集中的に立地しています。

29日、開かれた協議会は、20年ぶりに新たな知事となった青森県の宮下知事の呼びかけで3年ぶりに開かれ、国からは、松野官房長官や西村経済産業大臣といった関係閣僚などが参加しました。

会議の中で宮下知事は、高レベルの放射性廃棄物、いわゆる「核のごみ」をめぐり、国が青森県内を最終処分地にしないとした確約などについて質問したのに対し、松野官房長官は確約は引き続き、現内閣で継承されているとの考えを示しました。

また、宮下知事は、国や立地自治体、事業者などが一体となって地域と原子力施設が共生する未来像について協議する会議体の設置を求めました。

これに対し、西村経済産業大臣は、青森県全体の持続的な発展を図っていくことが重要との観点から、会議体を早期に設置する考えを示したということです。

核燃料サイクル政策をめぐっては、要となる六ヶ所村にある再処理工場は、新たな規制基準に適合するための手続きなどが長引いていることから完成が大幅に遅れています。

このため、事業者が示している「来年度上期のできるだけ早期」とする完成時期の目標の実現も危ぶまれています。

国の核燃料サイクル政策について青森県の知事と関係閣僚などが意見を交わす協議会で、宮下知事は「青森県を核のゴミ捨て場にしない。核のゴミ捨て場のように扱われることだけは絶対に許さない。このことを維持しながらも政府に協力してサイクル事業を通じて青森県政を大いに発展させていく」と述べました。

【知事「“共生未来像”会議体 年内に初会合を」】
協議会のあと宮下知事は、東京都内で会見を開き、国に設置を要請した地域と原子力施設が共生していく未来像などを協議する会議体について、遅くとも年内には初回の会議を開催してほしいという考えを示しました。

そのうえで「地域の理解なくしてこの事業は進まず、地域の理解は地域の発展がその源泉にある。国策である原子力・核燃料サイクル事業で事業だけが成功してもある意味成功とはいえず、事業が成功したうえで地域が発展していく姿を描くことこそが非常に重要だ」と述べ、核燃料サイクルの政策の実現には地域の協力や発展が不可欠だとする考えを示しました。

宮下知事としては、設置される会議体で地域振興について国や事業者などと話し合うことで、地域課題の解決策を見いだし、低い水準にとどまっている県民所得の引き上げや医療水準の改善などにつなげたい考えです。

また、宮下知事は「核燃料サイクル協議会に来た関係閣僚の顔ぶれをみて青森県の担う大きな役割を改めて感じた。任期中のこの4年間はこの事業が大きく動く可能性があるが、まず大切なのは、県民の理解であると同時に国民的な世論や合意形成だと思う」と述べて、国などに立地地域の歴史や実情を伝えていく必要性も強調しました。