青森の飲食店クチコミに集中的低評価 犯罪者グループの攻撃か

検索大手の「クチコミ」で、青森市の飲食店が来店していないとみられる人のアカウントから集中的に低い評価が付けられていたことがわかりました。
この評価はすでに削除されていて、専門家は「犯罪者グループが手当たりしだいに攻撃した可能性がある」と指摘しています。

青森市の飲食店では今月21日、「グーグル」の「クチコミ」に1時間で40件近く、最も低い評価を表す「星1つ」のレビューが付けられ、高評価だった「クチコミ」が一時、半分近くまで下がったということです。

この「クチコミ」は、店や目的地の検索を行った際に表示されるもので、店の評価や店員の対応などを5段階で投稿できます。

店側の説明によりますと、投稿は外国人のアカウントからがほとんどで、コメントは外国語で投稿されていたということですが、店のオープン以降、外国人客はほとんど来ていないため、投稿は来店していない人ではないかと話しています。

原因はわからないとしたうえで、不審な投稿の前に「グーグルサポート」を名乗る女性から「金を払えば『クチコミ』の評価を操作して上げることができる」などと店に電話があったということですが、断ったということです。

店では「グーグル」に対し不審な投稿について報告し、すでに削除されたということです。

「青森居酒屋いい友」の店主、櫻庭康さんは「小規模な飲食店ではこの「クチコミ」は生命線です。コロナ禍を乗り越えこれからという矢先だったので、頭が真っ白になりました」と話していました。

グーグルはNHKの取材に対し「この問題は現在修正されています」とコメントしています。

インターネットに詳しい青森大学の下條真司教授は「AI=人工知能やテクノロジーの進化で、犯罪者グループが手当たりしだいに攻撃を広げ、青森の小さな店にまで攻撃が及んだと考えられる。全国でも同じような事例が起きる可能性がある」と指摘しています。

今回の一連のいきさつについて、グーグルの広報部担当者はNHKの取材に対し「この問題は現在修正されています。Googleマップのチームは、不正なクチコミを行うユーザーや詐欺集団による攻撃を阻止し、不正なクチコミを削除したり、影響を受けている事業主がいる場合は、企業プロフィールを保護するため、24時間体制で取り組んでいます」とコメントしています。

店主の櫻庭康さんによりますと、「星1つ」のレビューは、海外のものと思われるアカウントから日本語ではない言語で「妹のミリアムに会いに来てください」などと関連のない文章とともに星1つの評価がつけられていました。

しかし、櫻庭さんは店を1人で切り盛りしていて、外国人の対応は難しいというメッセージを店の入り口にはるなどの対応をしていて、実際に外国人の入店はほとんど記憶にないということです。

櫻庭さんは「コロナも落ち着いて、これから本格的に商売をやっていけるというタイミングだったが、お店を閉めるしかないと絶望した」と、涙を浮かべて当時を振り返りました。

そのうえで、櫻庭さんは「私自身が初めて行く店だったら評価は見るし、星が2点台だとこの店に行こうと思う可能性はほぼなくなる。小さいお店ほど弁護士を雇うとか情報開示請求するなどの対処は難しく、星1つが相次いでいて、困っているときに電話があればお金を払ってでも回復したと思う」と話していました。

櫻庭さんは、いまもストレスで体調に異変をきたしていて「今後、店をやっていても客が来ないかもしれない。子どもの生活もあるので、寝ても覚めてもこれからどうしていこうということばかり考えている」と話しています。

現在は、櫻庭さんの妻が情報拡散を呼びかけ、高評価も含めて最近ついたほとんどのクチコミが消えたと言うことですが「いっそグーグルのマップ上から店の情報を消してほしいくらいだ。来たことがない人の投稿で、これまで積み上げてきた店の評価がぶち壊されてしまうのはもう二度と味わいたくない」と話していました。

インターネット全般に詳しい青森大学の下條真司教授は「スパム攻撃のように自動的に評価を送る仕組みが使われ、いわゆる『ブラックマーケット』で乗っ取られたアカウントが、攻撃者の手にわたって使われた可能性がある」と話しています。

下條教授によると、これまで大企業をターゲットにしていた犯罪者が、AI=人口知能の進歩やテクノロジーの向上でコストが安くなることによって、手当たりしだいに攻撃を広げている可能性があるとみられるということです。

さらに、下條教授は「青森のような地域ではそもそも情報量自体が少なく、評価サイトへの掲載が少なければ少ないほど1回の攻撃に効果があり、狙う側にとっては非常に狙いやすいといえる」と分析しています。

そのうえで、最近では「ChatGPT」などの新たな技術により、攻撃がより巧妙化するとみられ、現状では小規模な店が防御対策を取るのは難しいという認識を示しました。

そして、「店としては大きく慌てずに毅然とした態度でいることが重要だ。利用する側もそうしたレビューに踊らされず、複数のサイトを比較して真偽を見極める力をつけていくことが必要だ」と話しています。

インターネット検索エンジン、グーグルのクチコミは、グーグルでの検索や「Googleマップ」で店や目的地の検索を行った際に表示される投稿で、その店の評価や店員の対応などのほか、最高の評価の星5から最低評価の星1まで5段階の評価の平均が表示されます。

こうしたクチコミの投稿はグーグルのアカウントさえ持っていれば誰でも投稿でき、クチコミは一般公開されるため、アカウントを持っていない人でも見ることができます。

グーグルのホームページによりますと、世界中のユーザーから数百万件に上るクチコミが投稿されているということで、情報の有益性と正確性を保つため24時間体制でサポートしているほか、クチコミが実際の体験や来店に基づいているかを確認し、関係性のないコメントなどは除外するために厳格な方針を設けているということです。

また、短期間に極端に多くの1つ星または5つ星の評価を得るビジネスや場所までの疑わしいパターンを監視しているということです。

グーグルは、ホームページで「常にシステムを改善し、マップから不正なクチコミを含む悪用をなくすために努力を続けています。この領域におけるGoogleの取り組みは終わることがありません」としています。