農業高校の牛舎で起きた重体事故 調査委員会が現地調査へ

去年、十和田市の農業高校の牛舎で、男子生徒が頭の骨を折り重体となっている事故で、高校の安全管理体制や再発防止策などを検討する調査委員会の初会合が開かれ、当時の状況を確認するため現地調査を行うことになりました。

去年12月、十和田市の県立三本木農業高校にある牛舎で清掃などの実習にあたっていた男子生徒1人が頭の骨を骨折して倒れているのが見つかり、いまも意識不明の重体となっています。

県教育委員会は学校の安全管理体制や再発防止策などを検討するため、牛の飼育の専門家や弁護士など6人の委員でつくる事故調査委員会を設置し、28日夜、県庁で初会合を開きました。

この中で県教育委員会の和嶋教育長は「学校の管理上の問題を解明し再発防止策を策定してほしい」と述べました。

このあと会合は非公開で行われ、当時の状況を確認するため、次回の会合までに高校で現地調査を行うことを決定したということです。

一方、県教育委員会は来年3月までに会合を4回から5回開いて再発防止策などをまとめるとしていましたが、今回の会合で、想定されたスケジュールにとらわれず検証していくことを確認したということです。

事故調査委員会の委員長で危機管理が専門の青森中央学院大学の大泉常長教授は会合のあと、「同じような事故が起こらないようにするため、教訓を明らかにする点に力を入れていきたい」と述べました。

警察によりますと、生徒は当時、『牛房』と呼ばれる鉄製の柵に囲まれたスペースのうちの1つで作業をしていて、体重がおよそ600キロの牛2頭が飼育されていたということです。

関係者によりますとその後の調べで、1頭の牛が興奮した状態で生徒に近づいていたため、その場にいた男性教員が「ピッチフォーク」と呼ばれる先端のとがった鉄製の道具で牛を追い払った際に生徒の頭にあたった可能性があるということです。

全国の高校で実習などの際に生徒が動物と接触してケガをする事故は、この5年で100件以上起きています。

学校で起きる事故や災害の調査研究などを行っている日本スポーツ振興センターによりますと、全国の高校で実習などの際に生徒が動物と接触してケガをし、医療費を給付した件数は令和2年度までの5年間で合わせて110件ありました。

接触した動物の内訳は牛が98件、馬が10件、山羊が2件と、牛がおよそ9割を占めています。

文部科学省によりますと、子どもの安全を守るため、各学校は部活動中の事故や登下校中の交通事故、それに地震などの災害を想定した危機管理マニュアルを作成するよう、法律で義務づけられています。

一方で、動物を扱う実習を想定したマニュアルの作成は義務づけられておらず、三本木農業高校はNHKの取材に対し、実習の事故防止を目的としたマニュアルは作成していないとしています。

今回の事故について、牛の生態などに詳しい東北大学農学研究科の深澤充准教授は「牛は、基本的に怖がりな動物なので、金属音や人の急な動きなどにびっくりして蹴飛ばしたり激しい動きをすることがある。牛は体が大きく破壊力があるので、危険で、けがにつながることがある」と述べ、牛の周辺での作業には危険が伴うと指摘しています。

その上で「牛に関わる事故が起きることを認識し、作業の安全性を図ることが必要だ。例えば、牛を別のところに出してから作業したり、一緒作業をするのであれば不測の事態が起きた時に、頭や足など大切な部分を守れるよう、ヘルメットをかぶったり長靴を履いたりするなどの装備が必要だ」と話しています。

また、各学校に動物を扱う実習を想定したマニュアルの作成が義務づけられていないことについては、「畜産の教科書はあっても実習を行う際の牛とのマニュアルはなく、今までも課題だった。この機会に、事故防止のために装備をきちんとするといったマニュアルなどを整備することが大切だ」と指摘しています。