記録的大雨から半年 暮らしへの影響長期化 さまざまな課題も

去年7月の記録的な大雨から14日で半年です。
秋田県内で確認された住宅の被害は7000棟余りにのぼり、被災した人たちの暮らしへの影響は長期化しています。

去年7月14日から16日にかけての記録的な大雨では、秋田県内の広い範囲で住宅が浸水し、県によりますと、これまでに7039棟の住宅で被害が確認されています。

このうち、秋田市で被害を受けた住宅は全壊が11棟、半壊が2431棟、一部損壊が22棟、床上浸水が599棟、床下浸水が2729棟のあわせて5792棟で、全壊と半壊のほとんどは床上浸水したことによる被害だということです。

また、浸水や機械設備などへの被害を受けた事業所の数は、県内全体で568件となり、今も休業を続けたり再開を断念したりする事業所も出ています。

被災した人の中には、避難を続けている人や住宅などの再建にめどが立たない人もいて、暮らしへの影響が長期化していくなかでどのような支援を進めていくかが課題となっています。

去年7月の記録的な大雨から半年がたちましたが、住宅が大きな被害を受けた人の中には、いまも住まいについて頭を悩ませている人がいます。

秋田市南通地区で自宅が床上浸水の被害にあった石川公之さん(71)は、避難所生活をへて去年8月から市内のアパートで暮らしています。

石川さんは66歳の弟と2人で生活をしていて、持病がある弟は避難所生活では体調が優れませんでしたが、アパートに入居してからは落ち着いたということです。

一方、かつて暮らしていた平屋建ての住宅は夏に浸水した家財道具を処分して以降、手を付けられていない状況で、床には流れ込んだ土砂が残るなど住める状況にはないということです。

こうしたことから、石川さんは平屋建ての住宅を解体し、支援が必要な弟を連れて家族や親族がいる兵庫県へ引っ越すことを検討しています。

しかし、秋田市によりますと、半壊と判定された石川さんの住宅については、現時点で解体する際の費用の補助制度がないということで、住宅解体のめどは立っていません。

石川さんは「本当なら家を残して弟が住めたら良いのだが、現実的に難しいので取り壊すしかない。ただ家を処分する費用もなくてどうすればいいか思い悩んでいます」と話していました。

去年7月の記録的な大雨で大きな被害を受けた秋田市中心部では、半年たったいまも道路の復旧工事が続いているほか、今後の災害への備えとして、河川の改修工事の計画も進んでいます。

このうち、秋田市中心部の中通地区では、旭川の護岸となっている県の歩道が65メートルにわたって崩落し、川沿いの県道も車の通行ができなくなりました。

この復旧工事は大雨から半年たったいまも行われていて、北に向かう車線を通行止めにして一方通行の規制を続けています。

工事が終わり、交通規制が解除されるのはことし3月中旬となる見通しで、歩道が通行できるようになるのはことしの秋以降になる見通しです。

一方、河川では今後の災害に備えるための抜本的な対策も計画されています。

秋田市中心部を流れる太平川は流域の広面地区などで氾濫し、周辺の2500棟余りが床上まで、1800棟余りが床下まで水につかるなど甚大な被害となりました。

今回の被害を受けて、県は今年度から2028年度までに、あわせて195億円をかけて広面地区と桜地区にかかる桜大橋から旭川との合流地点までの4.6キロにわたり、川の底を掘り下げて護岸を強化するなどの改修工事を進める計画です。

工事の予算は去年11月下旬、国の補正予算の成立に伴って確定したばかりで、現在、県は工事の開始に向けて、発注の準備を進めているということです。

大雨から半年がたった今も、秋田市ではNPOによる被災者への支援活動が続けられています。

このうち、多くの住宅が床上浸水の被害を受けた秋田市南通に活動拠点があるNPO法人「あきた結いネット」では、大雨の直後から被災した人のために炊き出しなどの支援にあたってきました。

大雨から半年がたった今も、月に2回、生活に困っている人たちに弁当を提供していて、今月の活動でも、アジフライやエビチリ、ちくわの磯辺揚げが入った弁当や温かいスープなどをおよそ30世帯分用意して、受け取りに来た人に渡したり、自宅まで配達したりしていました。

弁当を受け取りに来た近くに住む70代の女性は「自宅は床上30センチから40センチの高さまで浸水しました。1人暮らしをしているので、住宅や生活を元に戻すのはなかなか大変です。物価も高騰していますし、いろいろなことにお金がかかるので、こうした支援があると本当に助かります」と話していました。

この団体では月2回の弁当の提供とあわせて、ことし4月から戸別訪問活動も始める予定で、被災した住宅に住み続けることが難しい人の転居のサポートや、公営住宅に避難している人の住まい探しなどにも、秋田市と協力して取り組みたいとしています。

NPO法人の坂下美沙理事長は「住宅の改修や修繕に加え、暖房器具を買いそろえるのも難しいという人もまだいて、被災した状況によって元どおりの生活まで早く戻れる人と、なかなか難しい人の格差が大きく出てきているように感じます。いつでも相談ができて、困っている人がきちんとSOSを出せるようなつながりをこれからも維持していきたい」と話していました。