記者解説)新スタジアム問題 どうなるブラウブリッツ


6月30日、突然の記者会見で明らかになった「ライセンス不交付の可能性」。

サッカーJ2・ブラウブリッツ秋田の岩瀬浩介社長は、秋田市の新しいスタジアム整備の見通しが不透明だとして、Jリーグ側から、来シーズンはJ1とJ2のクラブライセンスをともに交付しない可能性があることを通達されたと明らかにしました。

理由としてあげられたのが、新しいスタジアム整備の見通し。
なにが起きているのか、担当の谷口記者が解説します。

Q)今回の事態、谷口記者はどう見る?
A)ひとことでいうと、新たなスタジアム整備が進まない現状に対して、Jリーグ側がしびれを切らしたとも言えると思います。

そもそも、J1とJ2のライセンスにはスタジアムは観客席の3分の1以上が屋根で覆われていることなどが条件となっていますが、現在のソユースタジアムはこの条件を満たしていません。

しかし、秋田市で新たなスタジアムの検討が進められていたことなどから、条件付きという形で平成30年に初めてJ2のライセンスが交付されたのです。

それにもかかわらず、それから5年がたっても整備に関する基本計画すら策定されていないことから、Jリーグ側は、実現が不透明だと言わざるを得ないとして、ライセンスを交付しない可能性があることを通達したのです。

Q)もしJ1やJ2のライセンスが交付されなければどうなるのか。
A)J1に昇格することはできませんし、J2でプレーを続けることもできなくなる可能性があります。
岩瀬社長は先日の会見で「危機感やこれまでにない不安を抱いている」としたうえで、仮に交付されたとしても何かしらの条件が付けられるのではないかと話していました。

Q)こうしたことはほかのチームでもあるのか。
A)サッカーJ3の鹿児島ユナイテッドも同様の事態に陥っています。

鹿児島ユナイテッドも新しいスタジアムの整備を検討していることなどを理由に条件付きでJ1のクラブライセンスが交付されていますが、整備に向けた動きが停滞しているという理由から、昇格に必要な来シーズンのライセンスの交付を見送る可能性があると、ブラウブリッツと同じ時期にJリーグ側から通達を受けたということです。

Q)新たなスタジアムの整備は、いまどのような段階にあるのか。
A)新スタジアムの整備は、秋田市が進めている外旭川地区のまちづくり事業の一環として議論が進められていて、基本計画が策定されるのは来年の3月になる予定です。

基本計画を前に、ことし3月に策定された基本構想では、民設民営方式で全天候型の屋根付きスタジアムを整備するとしていて、建設費は143億円を想定しています。

参考資料として載せられているイメージには、スタジアム全体を覆う屋根や、可動式のピッチなどが描かれていて、これはJ2のライセンスに必要な条件を満たしています。

Q)こうした現在の状況は、Jリーグ側が納得するものなのか。
A)Jリーグからの通達では、スタジアムの整備に向けた秋田市と県の「意向表明書」を提出するよう求められ、これに対して秋田市は、令和8年度の工事着手を目指して取り組んでいくと回答しました。

ただ、佐竹知事は、3日の県議会で、スタジアムの建設候補地が農地であることをふまえ、次のように述べ、軟弱な地盤に建設するのには7年から8年の時間がかかるとの見方を示しました。

「農地は軟弱地盤です。スタジアムのようなものを作ろうとすれば、地盤改良・土地の落ち着き、埋め立てで相当年数がかかる。地盤改良だけで莫大な費用がかかる。まず7年から8年かかる」

その上で佐竹知事は、建設場所について秋田市の対応を見守る考えを示しました。

一方で秋田市は「知事が示したほどの時間はかからないと考えていて、令和8年度の着工を目指してこれまでどおりのスケジュールで進めていくし、建設候補地も今のところ変更は想定していない」としています。

こうした状況をJリーグ側がどのように判断するのか。
J1のライセンスは第三者機関の審査を経たうえで、ことし9月に交付されるかが決まります。