マンションで障害者グループホーム訴訟 大阪高裁で和解

マンションの部屋を障害者のグループホームとして使わないよう管理組合が大阪の社会福祉法人に求めた裁判で、1日、大阪高等裁判所で和解が成立し、引き続きグループホームとして使われることになりました。

大阪の社会福祉法人は平成15年以降、大阪・淀川区のマンションで、2部屋を借りて知的障害がある利用者が生活するグループホームを運営しています。
マンションの管理組合は、グループホームは、部屋を「住宅」以外に使わないよう定めた管理規約に違反すると主張して社会福祉法人に使用の中止を求める訴えを起こし、おととし(令和4年)1月、1審の大阪地方裁判所は管理組合側の訴えを認め、法人側が控訴しました。
これについて大阪高等裁判所は、マンションの部屋は利用者の生活の拠点で、住宅としての使用にあたるとして、1審とは逆に管理規約には違反しないと判断しました。
そのうえで、▽グループホームが障害者の地域生活を支える住宅であることを相互に確認することや▽消防用設備の点検などの費用は社会福祉法人が負担することなどの和解案を示しました。
双方がこれを受け入れて、1日、和解が成立し、引き続きグループホームとして使われることになりました。
グループホームを運営する社会福祉法人、「関西中央福祉会」の義岡淳也 総務課長は、「障害者が地域で暮らす共生社会に弾みがついた。これからも障害者の住まいを守っていきたい」と話していました。

【管理組合“情報共有し協議”】
管理組合の代理人は「グループホームが設置される際、事前に管理組合と情報共有し、消防計画などについて協議することは必要と考えている」とコメントしています。

【専門家“多様性を認めることにつながる意義ある和解”】
今回の和解について、障害者の住まいに詳しい大阪公立大学の野村恭代 教授は、「いまだに障害者が地域で生活することに困難があることを多くの人が知ることになった裁判だったと思う。地域共生社会の実現には広く理解が必要で、和解の内容は多様性を認めることにつながる意義のあるものだった」と評価しました。
そのうえで、「和解が成立したからといって何か前進したわけではなく、われわれ一人一人が障害者も同じ地域で暮らす生活者だと理解しなければならない。グループホームの運営者側も障害者が地域で暮らしやすくするために事前に地域住民と協議するなど受け入れられる環境を整えることも重要だ」と話していました。