“黒川氏の定年延長目的”元検事長定年延長めぐり 大阪地裁

東京高等検察庁の黒川元検事長の定年を延長した閣議決定をめぐり、大学教授が国に対し経緯を正確に検証できる文書を開示するよう求めた裁判で、大阪地方裁判所は一部の文書の開示を命じました。
判決は「退官を間近に控えた黒川氏の定年延長を目的としたものと考えるほかない」などと指摘しました。

4年前(2020年)の5月、緊急事態宣言のさなかに賭けマージャンをして辞職した東京高等検察庁の黒川弘務 元検事長について、政府は、同じ年の1月に定年を延長する閣議決定をしていました。
この定年延長をめぐり、神戸学院大学の上脇博之 教授は国に対して経緯を正確に検証できる公文書を開示するよう求める訴えを起こしていました。
これまでの裁判で国側は、定年延長を定めた国家公務員法の解釈変更を示す文書の存在は認めたものの元検事長と関係はないと主張し、証人尋問に出廷した当時の法務省の事務次官も法解釈の変更について「黒川氏の定年延長を目的としたものではない」と述べていました。
28日の判決で大阪地方裁判所の徳地淳 裁判長は「開示を求められた行政文書は、請求者の趣旨を解釈するべきで、元検事長の定年延長を目的として行われた協議の文書と理解すべきだ」としています。
そのうえで「法解釈の変更は、元検事長の定年退官に間に合うように短期間で進められるなど、合理的に考えれば、元検事長の定年延長を目的としたものと考えるほかない。国は文書を保有していると認められる」などと指摘し、教授が求めた文書のうち、元検事長の定年延長について法務省内で協議や検討した文書を開示するよう命じました。

【上脇教授“政府は説明を”】
判決の後、上脇教授は会見を開き「裁判所が常識的な法律の解釈と事実認定をしたまっとうな判決だ。検察庁法で規定されている検察官の定年について、国家公務員法を適用するのはどう考えてもありえない。検察官の定年延長を行うのであれば、法律改正をするしかない」と述べていました。
また、裁判所が法解釈の変更が黒川元検事長の定年延長を目的としたものと指摘したことについて「恣意(しい)的な解釈変更を行っていたとすれば大問題で、国民にうそをついたことになる。国側は控訴をしないことで本件の幕を閉じたいと思っているかもしれないが許してはならず、政府の立場から説明をする必要がある」と話していました。

【林官房長官“判決検討 適切対処”】
林官房長官は午後の記者会見で「法務省で判決の内容を検討し、適切に対処する。検察庁法や国家公務員法に関する当時の法解釈は適切になされたものと承知している」と述べました。

【法務省コメント】
判決について法務省は「判決内容を検討し、適切に対処してまいりたい」とコメントしています。