万博参加国会議日程終了 協会事務総長“ソフト面支援を強化”

大阪・関西万博の参加国などの担当者を集めた会議は、26日まで2日間の日程を終えました。
実施主体の博覧会協会の石毛博行事務総長は記者会見し「ソフト面での支援を強化したことが大きな成果の1つで今後もニーズに対応した支援をしていく」と述べました。

大阪・関西万博への参加を表明しているおよそ160の国と地域や国際機関の担当者を集めた会議は、2日間の日程を終え、26日午後5時から博覧会協会の石毛事務総長とBIE=博覧会国際事務局のケルケンツェス事務局長が記者会見しました。
この中で、石毛事務総長は「万博の準備が建築から運営に移行する中、参加国などからの相談に答える窓口を新たに設けるなど、ソフト面での支援を強化したことが大きな成果の1つで、今後もニーズに対応した支援をしていく予定だ。万博をなんとしても成功させるという熱気を関西から世界に広げるために参加者にはさらに発信してもらいたい」と述べました。
今回の会議では、参加国などから万博に関する課題について博覧会協会と定期的に議論する運営委員会のメンバーも選出され開幕に向けて意見交換が活発化することになります。

【万博参加国の担当者会議 各国間の意見交換も活発に】
奈良市で25日から2日間にわたって開かれた参加国などの担当者を集めた会議では、各国からは万博に向けてさまざまな質問や意見が出たほか、各国間での意見交換や交流も活発に行われました。
オーストラリア政府代表のナンシー・ゴードンさんは「パビリオンの建設の話だけでなく、文化やビジネスなどイベントの中身についても話し始めた印象がある。雰囲気は非常によかった」と話しました。
全体のイベントや、各国の個別イベントの日程をどのように情報共有できるか、日本の担当者と相談したほか各国とも意見交換したということで「同じ南太平洋の国のサモアやトンガなどと話し、来年の万博で共同でどういうイベントができるかなど意見を交換した」と話していました。

【万博で参加国の意見をとりまとめる「運営委員」選出で会見】
大阪・関西万博の参加国などの担当者を集めた会議では、実施主体の博覧会協会と協議する「運営委員」として20か国余りの代表が選ばれました。
これを受けて、26日、運営委員を務めることになった5か国の代表が記者会見を開き、来年春の開幕に向けて運営面の課題などを洗い出し、解決策を話し合っていくことになりました。
奈良市で開かれている大阪・関西万博に参加する国や地域などの担当者を集めた会議では、26日午後、参加国などの意見をとりまとめて博覧会協会と協議する「運営委員」として20か国余りの代表が選ばれました。
このうち、▼スイス、▼イギリス、▼イタリア、▼オランダ、▼アンゴラの5か国の代表が記者会見に臨み、議長を務めるスイスの政府代表のマヌエル・サルチリ氏は「各国から情報や懸念を出してもらったうえで、博覧会協会と密に連携し、万博を最大限、成功に導きたい」と話していました。
また、イギリスの政府代表を務めるキャロリン・デービッドソン氏は、今回の参加国会議について「万博を具体的にどう実現するかということが主なテーマで、活発でポジティブな意見交換を行うことができた」と述べ、有意義だったと評価しました。
運営委員は、▼来年4月の開幕までは3か月に1度のペースで、▼開幕後は毎月、会議を開き、参加国から寄せられた運営に関する課題などを博覧会協会に伝え、解決策を協議するということです。

【タイプ別に準備の進め方を説明】
大阪・関西万博への参加を表明しているおよそ160の国と地域や国際機関から担当者を集めた会議は、25日から奈良市で開かれました。
2日目となる26日は海外の参加国が、▼自前でパビリオンを建設する「タイプA」、▼博覧会協会が建設した建物を単独で借りる「タイプB」、▼協会が建設した建物に複数の国で入る「タイプC」のそれぞれタイプ別に説明が行われました。
このうち「タイプC」の準備の進め方について、博覧会協会の担当者は、▽9月までに展示スペースを各国へ受け渡してから順次、内装工事を始めてもらい、▽11月には展示品を日本へ輸送、▽開幕1か月前の来年3月13日までに展示の準備を終えるというスケジュールの目安を示していました。
また、▽内装工事で守らなければならない建築基準法や消防法の内容のほか、▽パビリオン内でレストランを営業する場合に必要な食品衛生法の手続きなどについても説明を行ったということです。

【参加国の声】
タイプCの出展を予定しているマーシャル諸島の担当者は「パビリオンでは、自国の工芸のほか、気候変動に対する取り組みなどについての出展を考えています。きょうはタイプCに対する支援策について聞き、本国へ戻ったときに準備を加速させられるようにしたいです」と話していました。
また、同じくタイプCの出展を予定しているアフリカのリベリアの担当者は「きのうはさまざまな課題について協会に質問したので、きょうはその回答をもらって懸念のすべてが解決されるのを楽しみにしています」と話していました。

【共同館(タイプC)とは】
万博に海外の国と地域が参加する方式には「タイプC」という参加のしかたがあります。
自前のパビリオンを建設しない国や地域が、1つの建物のスペースを分け合って展示を行う「共同館方式」と呼ばれ過去の万博でも行われてきました。
パビリオンを建設する資金がない国も参加の機会を得られる一方で、過去の万博では「土産物などが並ぶ見本市のようだった」という指摘もあり、大阪・関西万博では、展示内容をより充実したものにしようという試みが行われています。
<共同館とは>
今回の万博では、参加するおよそ160の国と地域の半数ほどが「共同館」で展示を行います。
共同館は4棟になる見通しで1棟を各国が分け合い、自国のコンセプトに沿って展示を行う予定です。
自前でパビリオンを建設するには資金が足りなかったり、1棟を埋めるには展示物が足りなかったりする国と地域が共同館での展示を希望し、アフリカなどの途上国が多いのが特徴です。
<モントリオール博が始まり>
万博の歴史や意義などを調査・研究する「万博学研究会」によりますと、共同館が設置されたのは1967年にカナダのモントリオールで行われた万博からです。
背景には1960年代にアフリカを中心に植民地支配から独立する国が相次いだことがあるといいます。
独立したばかりの国の参加を支援しようと、主催国のカナダが建物を用意し、こうした国々が共同で展示したのが始まりとされています。
これ以降、共同館は各万博で設置されてきましたが、アフリカやアジア、オセアニアなど、地域ごとにまとめられることが多く、2005年の愛知万博でも「アフリカ共同館」や「中米共同館」などがありました。
<大阪・関西万博の挑戦>
大阪・関西万博では、共同館での展示を地域ごとではなく、テーマごとに分ける試みが行われています。
万博のテーマである「いのち輝く未来社会のデザイン」を踏まえ、去年秋には、共同館に出展予定の国と地域などの展示担当者およそ75人を日本に招き、展示テーマなどについて話し合う研修が行われました。
参加者どうしで「いのち」について議論を交わし、各国が思い描く展示内容に、「いのち」というテーマをどう反映させるかなどが話し合われました。
万博のシニアアドバイザーで、研修で講師を務めた国立民族学博物館の※吉田憲司館長は「テーマの共有がなかった過去の共同館の展示は、土産物などが並ぶ見本市のようだった。今回はテーマを共有するため事前に議論の場を設けることができ、画期的だったと思う。命とのつながりを、どういう形で自国の展示に盛り込んでいくのか、人々の関心を集める展示になってほしい」と話しました。
※「吉」の上が「土」の字。

【ウスビ・サコさんが目指す共同館は】
実施主体の博覧会協会で副会長を務めながら、シニアアドバイザーとして主に発展途上国が出展する共同館の展示にアドバイスを行っているウスビ・サコさんがNHKのインタビューに応じ、「共同館にここまでの力を入れているのは万博史上、今回が初めてではないかと思うので期待してほしいと」と語りました。
アフリカのマリ共和国出身のウスビ・サコさんは1991年に留学生として来日し、いまは京都精華大学で教授を務めています。
今回の万博ではシニアアドバイザーとして主に発展途上国が出展する共同館の展示にアドバイスを行っていてウスビ・サコさんによると、およそ90か国が出展を計画し、このうち半数近くがアフリカの国々だということです。
サコさんは「これまでの万博では、途上国は民芸品やお土産品などを展示して見本市に近いところもあった。共同館は見本市や観光推進ブースでは意味がなく、世界課題に対してあなたの国がどういうビジョンを持っているか、どういう役割を果たしたいか、メッセージを伝えるようアドバイスしている」と話しています。
サコさんは共同館に出展する国々とそれぞれ複数回面談し万博のテーマである「いのち」を反映した展示をするようアドバイスしているということで「共同館にここまでの力を入れているのは万博史上、今回が初めてではないか」と話していました。
また、大阪・関西万博ではSDGs=持続可能な開発目標の達成に向けた取り組みを開催の意義の1つとして掲げられていることを踏まえ、「SDGsの目標の中にはいろんな格差をなくすということもある。経済格差を含めた世界課題を共有して、意識を高めて解決に取り組んでいく展示をしてほしい」と話していました。

【JICA 途上国に展示研修】
大阪・関西万博に参加するおよそ160の国と地域のうち、半数近くは途上国で、その多くが1つの建物の中で共同で展示するタイプCと呼ばれる方式で参加します。
JICA=国際協力機構などは先進国と比べて展示経験が少ない途上国の展示担当者を日本に招いて研修するなどして展示のノウハウなどを学んでもらう取り組みを進めています。
途上国は国際的な場で展示の経験も少なく、過去の万博での展示が「土産品の見本市のようだ」という指摘もされてきました。
こうしたことから実施主体の博覧会協会はJICAなどとともに「いのち輝く未来社会のデザイン」というテーマに沿った展示内容を意識してもらおうと途上国への展示支援をしています。
JICAの支援は去年の春から始まり、秋にはおよそ75か国の担当者が日本を訪れ、国立民族学博物館などで万博のテーマについて議論したうえで実際とほぼ同じ形の展示スペースを使って展示計画を考えたり担当者同士で意見交換したりしたということです。
意見交換の中で、新たな展示のアイデアが生まれることもあったということで、支援を担当するJICA企画部の中根卓さんは「参加者からは『いろんな人と意見交換できたのが非常に有意義だった』という意見があった。研修の講義の中では、万博のテーマである『いのち』について説明しているので、共通のテーマを生かしたうえで、各国が独自の展示を見せてくれるといいと思う」と話しています。

【万博参加国会議 途上国からは日本側の展示支援に感謝の声も】
来年の大阪・関西万博では、博覧会協会が建設する建物に複数の国が入居する「タイプC」という方式で、多くの途上国が共同で出展する予定となっていて、日本側が展示の準備などを支援しています。
奈良市で開かれている参加国などの担当者を集めた会議では、途上国などの担当者からこうした支援に感謝する声も聞かれました。
このうち、「タイプC」で出展する西アフリカ・ガンビアの政府代表は、NHKの取材に対し、「われわれの担当者が去年、JICA=国際協力機構の研修を受けたことで万博のコンセプトを持ち帰ることができた。それによって、コンセプトに沿った準備ができている」と話しました。
ガンビアのブースでは、多様性に富んだ自国の社会や文化などを紹介するとしたうえで、「『いのち輝く未来社会のデザイン』という万博のテーマに沿って、われわれがどのように暮らしているかや、どういったものを食べ、どんな習慣があるのかを知ってもらえるような展示にしていきたい」と話していました。

【ガーナ“日本支援役立った”】
「タイプC」の方式で参加するガーナの政府代表は、博覧会協会やJICAの研修などについて「展示についての支援は全部役に立っている。ガイダンスもそうだしコンテンツを作り上げるためのアドバイスもしてくれた。展示はコンテンツの中身が全てなので支援は非常に助けられた」と話しました。
ガーナは、教育やヘルスケアについて紹介するほか、ドローン製造などガーナの産業についても展示する予定だということです。

【建設未定の国に回答求める】
大阪・関西万博で、パビリオンを自前で建設する方式で参加を予定しているものの建設会社が決まっていない国などについて、実施主体の博覧会協会は、今月末をめどにほかの方式に切り替えるかどうか回答を求めていることがわかりました。
明らかに開幕までに準備が間に合わないと判断される国については、割り当てた敷地を返してもらうよう求める方針だということです。
大阪・関西万博では、51か国が自前でパビリオンを建設する「タイプA」という方式で出展を予定していて、このうち40か国で建設会社が決まり32か国が着工しています。
しかし、資材価格の高騰などを背景に交渉が難航し、建設会社がまだ決まっていない国も11か国あることから、博覧会協会は協会が代わりに建物を建て参加国が費用を負担する「タイプX」や複数の国が1つの建物に入る「タイプC」への移行などの選択肢を提示しています。
関係者によりますと、博覧会協会は開幕に準備を間に合わせる期限が近づいているとして、こうした国などに今月末をめどに回答を求めているということです。
明らかに準備が間に合わないと判断される国には、割り当てた建設用の敷地を返してもらうよう求めていくということです。
敷地が空く場合の活用方法を検討するためだということですが、各国の理解を得られるかどうかは未知数で、博覧会協会としては個別の国と難しい調整を行うことになりそうです。