宝塚歌劇団員死亡問題 歌劇団側 パワハラ認め遺族側に謝罪

宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡し、遺族側が上級生からのパワハラなどが原因だったとして歌劇団側に謝罪と補償を求めている問題で、歌劇団側は28日、記者会見を開き、去年11月の調査報告書で確認できなかったとしていたパワハラがあったことを認め、遺族側に謝罪したことを明らかにしました。
遺族側は「多数のパワハラの存在を認め、謝罪したことの意義は大きい」としています。

去年9月、宝塚歌劇団の宙組(そらぐみ)に所属していた25歳の劇団員が兵庫県宝塚市で死亡したことについて、歌劇団は去年11月、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする一方、いじめやパワハラは確認できなかったとする調査報告書の内容を公表しました。
これに対し、遺族側は劇団幹部や上級生からのパワハラにあたる行為はあわせて15件に上ると主張し、歌劇団側に対して謝罪と補償を行うよう求めていました。
遺族側と歌劇団側はこれまで代理人を通じて協議を進めてきましたが、歌劇団を運営する阪急電鉄の親会社、阪急阪神ホールディングスは28日午後4時から大阪府内で記者会見を開き、遺族側と合意書を締結したことを明らかにしました。
合意書の中で、歌劇団側は調査報告書で確認できなかったとしていたパワハラがあったことを遺族側に認めたということです。
パワハラ行為をめぐる経緯や解釈については遺族側の主張と一致しない点があったものの、協議の結果、最終的に14件の行為について認めるに至ったとしています。
そのうえで、阪急阪神ホールディングスの角和夫 会長が28日午前、遺族に直接、謝罪したということです。
阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫 社長は会見で「心よりご遺族に謝罪を申し上げたい」としたうえで、「長時間の活動を余儀なくさせ、過重な負担を生じさせたことや、パワーハラスメントに該当するさまざまな行為によって多大な心理的負荷を与えたことは、長年にわたり劇団員にさまざまな負担を強いるような運営を続けてきたことが引き起こした」と述べ、歌劇団側の責任を認めました。
一方、遺族側の弁護士も28日、同じ時間に東京で記者会見を開きました。
この中で遺族側は「おおむね、こちらが主張してきた内容で合意書の締結に至った」としたうえで、「歌劇団側が明確に多数のパワハラの存在を認め、遺族に謝罪したことの意義は大きい。『治外法権』のような劇団内部の実態を改革し、あしき伝統を見直す第一歩として重要な意義がある」と述べました。
また、これまでに上級生など6人から謝罪の手紙を受け取ったほか、補償については歌劇団側が遺族に対し、慰謝料などとして「相当額の金員を支払う」という内容で合意したことを明らかにしました。

【合意した14件のパワハラ行為とは】
歌劇団側と遺族側が最終的に合意したと明らかにした14件のパワハラ行為は次のとおりです。
1)亡くなった劇団員が自分でやることを望んでいたにもかかわらず、宙組の上級生がヘアアイロンで髪を巻いて額にやけどを負わせたこと、それにもかかわらず、亡くなった劇団員の気持ちをくんだ気遣いや謝罪を行わなかったこと。
2)宙組の上級生の指示で、亡くなった劇団員が2日連続で深夜に髪飾りの作り直しの作業を行うことになったこと。
3)宙組の上級生が亡くなった劇団員に対し、新人公演のダメ出しで人格否定のようなことばを浴びせたこと。
そして、当時の宙組のプロデューサーがそれを認識しながら放置し、対処しなかったこと。
4)週刊誌の報道のあと、宙組の幹部が亡くなった劇団員を呼び出したこと。
宙組生全員の集まりを開き、過呼吸の状態になるほど大きな精神的負担が生じたこと。
5)当時の宙組プロデューサーがその会議室を確保し、亡くなった劇団員が精神的な負担を受ける場を設けたこと。
さらに亡くなった劇団員が組替えを求めたにもかかわらず無視したこと。
6)亡くなった劇団員がヘアアイロンでやけどを負った事件について、劇団が「全く事実無根」との見解をホームページで発表したこと。
7)劇団が亡くなった劇団員に対し、死亡する直近の1か月間で過大な業務量を課し、長時間業務を行わせたこと。
8)新人公演の稽古で一部の立ち回りなどについて上級生から本公演での振りを指導してもらう「振り写し」について、新人公演の演出担当者が行う必要はないと言っていたにもかかわらず、宙組幹部が「振り写し」を行うべきであると指導し、その結果、亡くなった劇団員にいっそう過重な業務が課されたこと。
9)新人公演に出演する下級生が演技や早変わりなどの技術を、同じ役を本公演で演じる上級生から学ぶためにいつ、どのような手伝いが必要かを尋ねる「お声がけ」について、新人公演に向けた準備で必須ではないにもかかわらず、宙組の幹部が「お声がけ」を行う必要はないと宙組生に指導せず、その結果、亡くなった劇団員にいっそう過重な業務が課されたこと。
10)新人公演の演出担当者の怠慢で亡くなった劇団員が演出担当者の業務を肩代わりせざるをえなかったこと。
11)新人公演の配役表に関して、宙組の幹部が深夜の時間帯に亡くなった劇団員を指導・叱責したこと。
12)宙組の幹部が亡くなった劇団員に落ち度がないにもかかわらず、「振り写し」に関し指導・叱責したこと。
13)下級生の衣装の取り扱いをめぐる衣装部門からの苦情に関し、亡くなった劇団員に落ち度がないにもかかわらず宙組の上級生が下級生の失敗は劇団員の責任であるとして指導・叱責したこと。
14)宙組の上級生が「お声がけ」に関し、亡くなった劇団員に落ち度がないにもかかわらず大きな声で指導・叱責し、その後、さらに別の上級生が亡くなった劇団員に対してうそをついているかと繰り返し詰問したこと。

【宝塚歌劇団側の会見】
宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡し、遺族側が上級生からのパワハラなどが原因だったとして歌劇団側に謝罪と補償を求めている問題で、歌劇団側は28日、大阪で記者会見を開き、パワハラがあったことを認め、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長らが遺族側に直接面会し、謝罪したことを明らかにしました。
宝塚歌劇団を運営する阪急電鉄の社長を兼務する阪急阪神ホールディングスの嶋田泰夫社長らは28日午後4時から大阪・豊中市内のホテルで記者会見を開きました。
嶋田社長は冒頭、「昨年、宝塚歌劇団宙組の劇団員がご逝去されたことにつきまして亡くなられた劇団員に心より哀悼の意を申し上げますとともにご遺族の方に深くおわびを申し上げます」と謝罪しました。
そして、28日午前中、阪急阪神ホールディングスの角和夫会長らが遺族と直接面会して謝罪し、合意書を締結したことを明らかにしました。
合意書の中で、歌劇団側はパワハラ行為をめぐる経緯や解釈は、遺族側の主張と一致しない点はあったものの、▼上級生がヘアアイロンで劇団員の髪を巻いて、やけどを負わせたうえ、劇団員の気持ちをくんだ気遣いや謝罪を行わなかったことや、▼劇団員に落ち度がないにもかかわらず上級生が「下級生の失敗は劇団員の責任である」と指導・叱責したことなど、あわせて14件がパワハラにあたると認めたということです。
ただし、パワハラと劇団員の死亡の関係については、原因を1つに特定することは難しく、「過密なスケジュールの中で長時間活動を余儀なくさせて過重な負担を生じさせ、パワーハラスメントに該当する行為があったこと、それに長年にわたり劇団員にさまざまな負担を強いるような運営をしてきたということが非常に大きな理由だと考えている」と説明しました。
また、再発防止策として、▼稽古スケジュールの見直しや▼劇団員や関係者の意識改革や行動変容を促す取り組みなどを進めることを明らかにしました。
嶋田社長は、「失った信頼を取り戻し、ご遺族をはじめ社会の皆さまに新しい宝塚歌劇団に生まれ変わったと認めていただけるよう全力で改革に取り組んでまいります」と述べました。

【宝塚歌劇団が再発防止策を公表】
28日の記者会見で、宝塚歌劇団は再発防止に向けた取り組みを公表しました。
それによりますと、ことし(2024年)1月からすでに始めている1週間あたりの公演回数の変更などに加えて、▼稽古スケジュールの見直しや、▼劇団施設への入退館時間を記録できる体制を新たに整備するとしています。
また、現場で起きている問題などを把握できるよう、▼劇団員向けの外部の相談窓口の開設や▼匿名のアンケートを実施するなどの取り組みも強化するということです。
あわせて、劇団内にあるさまざまなルールや慣習を時代に合わせて見直し、ハラスメントやコーチングの研修を導入することなどによって、劇団員や関係者の意識改革や行動変容にも取り組みたい考えです。
また、改革が独りよがりにならないよう、弁護士や大学教授など外部の有識者が助言する「アドバイザリーボード」を来月(4月)1日に立ち上げて、専門的な見地からアドバイスをもらいながら、改革の実効性を高めていくとしています。
嶋田社長は「宝塚歌劇の理念を具現化し続けていくためには、伝統という言葉で現実に目を背けるのではなく基本に立ち返って絶えず適切な形に変えていく姿勢が重要であるということを肝に銘じてまいりたい。失った信頼を取り戻し、ご遺族をはじめ社会の皆さまに新しい宝塚歌劇団に生まれ変わったと認めていただけるよう全力で改革に取り組んでまいります」と話していました。

【遺族側の弁護士会見】
宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡し、遺族側が上級生からのパワハラなどが原因だったとして歌劇団側に謝罪と補償を求めている問題で、遺族側の弁護士は28日、記者会見を開き、歌劇団側がパワハラ行為があったことを認めたほか、これまでに上級生など6人から謝罪の手紙を受け取ったことを明らかにしました。
遺族の代理人を務める川人博 弁護士と井上耕史 弁護士が28日、都内で記者会見を開き、これまでの協議の結果について説明しました。
それによりますと、歌劇団側が▽亡くなった劇団員に対し長時間の活動による過重な負担をさせていたことに加え、▽上級生などによる14件のパワハラ行為があったことを認めたということです。
そして、▽宝塚歌劇団のほか、歌劇団を運営する阪急電鉄や親会社の阪急阪神ホールディングスが会社の責任を明確に認めたうえで、▽阪急阪神ホールディングスの角和夫会長が28日午前、直接、遺族に謝罪をしたことを明らかにしました。
遺族側の弁護士は、「阪急・劇団側がかたくなにパワハラの存在を否定してきたが、明確に多数のパワハラの存在を認め、遺族に謝罪したことの意義は大きい」としています。
また、これまでに上級生や劇団のプロデューサーなど6人から謝罪の手紙を受け取ったということです。
ただ、詳細な内容については控えるとしています。
さらに補償については歌劇団側が遺族に対し、慰謝料などとして「相当額を支払う」ことで合意に至ったということです。
遺族側の弁護士は「宝塚歌劇団は関西の経済界において最も有力な企業集団の1つである阪急阪神グループが所有し運営する組織で、劇団事業はグループの顔となる存在だ。事件後、速やかに遺族に謝罪すべきだったが事実を究明せず、責任を曖昧にしパワハラを否定し続けた。グループが反省し改善すべきことは無数にあることを強く指摘したい」と話していました。

【亡くなった劇団員の母「訴え」全文】
遺族側の弁護士は28日の記者会見で、亡くなった劇団員の母が現在の心境をつづった「訴え」を公表しました。
以下はその全文です。
(原文ママ)
あの日から季節は幾度か変わりましたが、私たちの時間は止まったままです。
娘を想わない日はありません。
娘に会いたい、抱きしめたい、ここに居てくれたらと一日のうちの瞬間、瞬間に何度も思っています。
そして、助けられなかったことを悔い、娘に謝っています。
娘の夢をみて、目覚めた時の現実の虚しさに打ちのめされる、そんな朝を何度迎えたでしょうか。
パワハラが無かったことを前提に作られた調査報告書は、こともあろうか劇団HPに掲載されました。
過重労働については見解の違いはあったものの、ある程度認める内容でしたが、パワハラについては、全ては娘に非があった、そのための正当な範囲内での指導だった、パワハラは一切無かったという酷い内容でした。
劇団が依頼した弁護士の聞き取りの場で、私たちが提出した娘の悲痛な言葉や証拠、そしてパワハラを実際に見聞きし、全てを話してくださった劇団員さんの数々の証言も全く反映されておらず、パワハラを行った側を擁護する内容でした。
劇団側にHPでの掲載を止めるように繰り返し求めましたが、1ヶ月以上経ってからようやく抹消されました。
調査報告書の内容を盾に「パワハラはありませんでした」と断言され、「証拠があるなら是非お見せいただきたい」と画面越しに挑んでこられた劇団の記者会見は、今でも鮮明に覚えています。
それに対して、調査報告書の誤りを詳しく指摘し、私たちが入手した証拠や劇団員さんからの証言を、直接提出しましたが、劇団は、第三者委員会を設置することはなく、パワハラを行った人の意見のみを聞き、それを擁護しました。
今更ながら、2年半前にヘアアイロンによる火傷があった時に泣き寝入りせず、声を上げれば良かった、昨年2月に劇団がヘアアイロンによる火傷の事実を「事実無根」と発表した時に抗議すれば良かったと、後悔してもしきれません。
いずれにしても、事実は隠蔽され、娘の居場所は無くなっていたかもしれません。
けれど、声をあげておけば、娘の命は救えていたはずです。
阪急阪神ホールディングス、宝塚歌劇団の幹部の方々に、もしご自分の娘が同じことになったら、どうされたのかと、お尋ねしたいです。
娘は決して弱かったわけでも、我慢が足りなかったわけでもありません。
過酷な労働環境と、酷いパワハラの中でも、全力で、笑顔で舞台に立っていました。
強く生きていました。
私たちはそんな娘を誇りに思っています。
娘の尊厳を守りたい一心で、今日まできました。
事実を訴え続けた結果、当初は過重労働のみを認め、一切パワハラは無かったと主張された劇団が、多くのパワハラを認め、本日ようやく調印となりました。
言葉では言い表せないたくさんの複雑な想いがあります。
娘に会いたい、生きていてほしかったです。
最後になりましたが、娘にお心を寄せてくださった方々に感謝を申し上げます。

【これまでの経緯】
これまでの経緯についてまとめました。
<去年9月 劇団員が死亡>
宝塚歌劇団の宙組(そらぐみ)に所属していた25歳の劇団員は入団7年目の去年(2023年)9月、兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかりました。
<去年11月10日 遺族側が会見>
遺族側の弁護士は記者会見を開き、長時間の業務と上級生からのハラスメントが原因だったとして、歌劇団に対して謝罪と賠償を求めました。
<去年11月14日 歌劇団側が調査報告書公表>
宝塚歌劇団は外部の弁護士による調査チームを設置し、宙組に所属する劇団員などから聞き取りを行うなどして調査を進めます。
そして去年11月の記者会見で、いじめやパワハラは確認できなかったとする一方、長時間の活動などで強い心理的負荷がかかっていた可能性は否定できないとする調査報告書の内容を公表しました。
会見で当時の木場理事長は「健康面などの管理をもっとすべきだった。安全配慮義務を十分に果たしていなかったと深く反省している」と述べ、去年12月1日付けで理事長を辞任しました。
<遺族側が意見書提出>
これに対し、遺族側は「パワハラが否定されたままで合意解決することはありえない」として、調査報告書の問題点を指摘した意見書を歌劇団側に提出します。
<去年12月7日 遺族側がパワハラの“証拠”公表>
去年12月の会見で、遺族側の弁護士は▼劇団員が額にヘアアイロンを押しつけられた際のやけどの痕だとする写真や、▼家族とのLINEのやり取りなどを公表し、パワハラにあたる行為はあわせて15件に上るとした上で、歌劇団側に対し、こうした行為などを認めて謝罪と補償を行うようあらためて求めたことを明らかにしました。
<遺族側と歌劇団側 合意に向け協議進める>
こうした中、遺族側の弁護士と歌劇団側の代理人はこれまで面談を重ね、合意による解決に向けた協議を進めてきました。
遺族側の弁護士によりますと、歌劇団側はことし1月24日付けの書面で、遺族側が主張する15件のうちの多くがパワハラに該当し、劇団員に多大な心理的負荷を与えたことを認めたということです。
ただ、歌劇団側は具体的にどの行為をパワハラと認めるかについてはこれまで明らかにしていません。
<双方の主張にはへだたりも>
遺族側は、合意した場合の公表のしかたなどをめぐって歌劇団側とは主張にへだたりがあり、今月(3月)も面談を行うとしていました。

【遺族が主張する15のパワハラとは】
遺族側が主張している15件のパワハラ行為は次のとおりです。
1)亡くなった劇団員が断ったにもかかわらず、上級生がヘアアイロンで髪を巻き、額にやけどを負わせた
2)この上級生がやけどを負わせたにもかかわらず、真摯(しんし)な謝罪をしなかった
3)上級生が髪飾りの作り直しなど、深夜に及ぶ労働を課した
4)上級生が新人公演のダメ出しで人格否定のようなことばを浴びせた
5)週刊誌の報道の後、上級生が亡くなった劇団員を呼び出して詰問し、過呼吸の状態に追い込んだ
6)劇団幹部がヘアアイロンでやけどを負ったことについて「全くの事実無根」と発表した
7)劇団幹部が睡眠時間が1日3時間程度しかとれないような極めて過酷な長時間労働を課し、過大な要求をした
8)亡くなった劇団員が所属していた宙組の幹部が「振り写し」の復活により一層過大な要求をした
9)宙組の幹部が「お声がけ」の復活により一層過大な要求をした
10)演出家が怠慢や不備により、到底対応不可能な業務を課した
11)宙組の幹部が配役表の事前開示に関し、2日連続で執ような叱責を行った
12)宙組の幹部が「振り写し」に関し、大声で宙組の組員の前で叱責を行った
13)宙組の幹部が「下級生の失敗はすべてあんたのせいや」などの叱責を繰り返した
14)宙組の幹部が幹部部屋で大声で叫び、威圧的な言動を行った
15)宙組の幹部が「お声がけ」に関し、詰問や叱責を続け、罵倒した

【死亡した劇団員の妹の「訴え」全文】
遺族側の弁護士は先月(2月)、死亡した劇団員の妹が心境をつづった「訴え」を公表しました。
以下はその全文です。

私は遺族として、大切な姉の為、今、宝塚歌劇団に在団している者として想いを述べます。
いくら指導という言葉に置き換えようとしても、置き換えられない行為。
それがパワハラです。
劇団員は宝塚歌劇団が作成した【パワーハラスメントは一切行わない】という誓約書にサインしています。
それにもかかわらず、宝塚歌劇団は、日常的にパワハラをしている人が当たり前にいる世界です。
その世界に今まで在籍してきた私から見ても、姉が受けたパワハラの内容は、そんなレベルとは比べものにならない悪質で強烈に酷い行為です。
厚生労働省のパワハラの定義を見れば、姉が受けた行為は、パワハラ以外の何ものでもありません。
宝塚は治外法権の場所ではありません。
宝塚だから許されることなど一つもないのです。
劇団は今に至ってもなお、パワハラをおこなった者の言い分のみを聞き、第三者の証言を無視しているのは納得がいきません。
劇団は、生徒を守ることを大義名分のようにして、パワハラを行った者を擁護していますが、それならば、目撃したパワハラを証言してくれた方々も、姉も同じ生徒ではないのですか。
そもそも【生徒】という言葉で曖昧にしていますが、パワハラを行った者は、れっきとした社会人であり、宝塚歌劇団は一つの企業です。
企業として、公平な立場で事実に向き合うべきです。
スケジュール改革や、各種改善策に取り組んでいるような発表をしていますが、姉の死を軽視し、問題を曖昧化しているとしか思えません。
これ以上姉と私たち遺族を苦しめないでください。
姉は体調を崩している訳でも、入院している訳でもありません。
二度と帰ってきません。
姉の命の重さを何だと思っているのでしょうか。
劇団は、「誠意を持って」「真摯に」という言葉を繰り返して、世間にアピールしていますが、実際には、現在も遺族に誠意を持って対応しているとは思えません。
これ以上無駄に時間を引きのばさないでください。
大切な姉の命に向き合ってください。

【現役劇団員“意見言える環境を”】
今回の問題について、宝塚歌劇団に所属する現役の劇団員がNHKの取材に応じ、「歌劇団には劇団員一人ひとりが悩みや意見をしっかりと言える環境を作ってほしい」と訴えました。
宝塚歌劇団が去年11月に公表した調査報告書では、今回の問題を受けて対処すべき課題として、劇団員が公式な稽古の前後に行っている自主的な稽古などを挙げていて、過密なスケジュールが全体的な余裕のなさを生んでいたと指摘しています。
今回、取材に応じた現役の劇団員の女性によりますと、自主的な稽古は公演が近づくと毎日のように行われ、日によっては午前0時までの10時間以上に及ぶこともあったということです。
女性は「歌劇団には体調が悪くても絶対に稽古に出なければならないという暗黙のルールがあり、自主的な稽古についても同じような思考に陥っていました。体調が悪いとか、きょうは行きたくないといった理由で休むことはできず、事実上の『強制稽古』ではないかと思っています」と話しています。
自主的な稽古では、時間や余裕がない中、上級生から下級生に対して厳しい指導が行われることもあったといいます。
これについて女性は、みずからも下級生が傷つくような言い方で指導したことがあると明かしたうえで、「私も先輩たちに同じことをされてきたので、後輩もそれを経験するべきだ、乗り越えるべきものだと錯覚していました。本当はおかしいはずなのに見て見ぬふりをして、それが『伝統』という形でずっと続いてきたのだと思います」と話しました。
今回の問題を受けて、歌劇団は劇団員の負担を減らすため、過密な公演スケジュールを見直すとともに組織風土の改善に取り組むとしていて、ことし1月からは1週間あたりの公演回数を減らすなどの具体策を実施しています。
こうした取り組みについて、女性は「体力的には少しは楽になるかもしれませんが、日々の稽古や上下関係などに悩む劇団員のSOSをしっかりと受け止めたうえで改善につなげる仕組みができないかぎり、同じような悲劇は起きかねないと思います」としています。
そのうえで、「劇団員として日々活動する中で、ロボットのように扱われている感覚に陥ることもありますが、私たちはひとりの人間です。歌劇団にはまず、人の心を大切にしてほしい。そして劇団員一人ひとりが悩みや意見をしっかりと言える環境を作ってほしいです」と話していました。