小林製薬「紅麹」 大阪市 3製品の回収命じる行政処分

「小林製薬」の「紅麹(べにこうじ)」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、大阪市は27日、会社に対して3つの製品の回収を命じる行政処分を出しました。
市は、回収が完了した時点で改めて製品の廃棄命令を出すとともに、健康被害の原因の究明にも取り組みたいとしています。

小林製薬は、「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことから、この成分を含む3種類の健康食品の自主回収をこれまで進めていて、厚生労働省が26日、会社に行った聞き取り調査では、2人目の死亡事例が明らかになっています。
厚生労働省は、食品衛生法に基づく措置を講じるよう会社の本社がある大阪市に通知し、これを受けて大阪市は27日、会社に対し、自主回収の対象となっていた3つの製品の回収を命じる行政処分を出しました。
行政処分を出したあとの記者会見で、大阪市健康推進部の亀本啓子 保健主幹は「さらなる被害拡大防止を図るため当該食品の回収を命じた」と処分の理由を説明しました。
市によりますと、販売数が多く、販売地域も広いため、現時点で回収完了の時期はわからないということです。
市は、回収が完了した時点で改めて製品の廃棄命令を出すとともに、健康被害の原因の究明にも取り組みたいとしています。
一方、大阪市によりますと、市の保健所にはこれまでに健康被害に関する情報が1件、寄せられているということで、回収対象となっている製品の摂取の有無や、症状など詳細について、現在、調査を進めています。

【小林製薬“深くおわび”】
「小林製薬」は大阪市からの行政処分を受けて「多大なるご迷惑をおかけしますことを深くおわび申し上げます。厳粛に受け止めて適切に対応していきます」とコメントしています。

【回収の対象は3製品 これまで販売されたすべて】
大阪市が、回収命令の対象としたのは「小林製薬」が販売する3つの製品で、▼「紅麹コレステヘルプ」、▼「ナイシヘルプ+コレステロール」、▼「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」です。
製造年月日やロット番号などにかかわらず、いずれもこれまでに販売されたすべてのものが対象となっています。
このうち▽「紅麹コレステヘルプ」は「45粒15日分」、「90粒30日分」、「60粒20日分」の3種類があり、令和3年から今月(3月)まで日本全国のドラッグストアの店頭および通信販売で、およそ100万個が販売されているということです。
▽「ナイシヘルプ+コレステロール」は、去年6月24日から9月15日まで、ECサイトや北陸地区で、およそ40個が販売されたということです。
また、▽「ナットウキナーゼさらさら粒GOLD」は、去年12月16日から今月(3月)22日まで、ECサイトや広島県でおよそ60個が販売されたということです。
「小林製薬」は今月22日から3つの製品の自主回収を始めていますが、大阪市は、これまでに回収された数量については、会社から報告をもらっておらずつかめていないとしています。
大阪市は全国で幅広く販売され、流通量も多いことなどから、回収には少なくとも数か月程度かかると見込んでいて、回収完了の期限を設けることは難しいとしています。
大阪市は消費者に対して、「製品をお持ちの場合は、摂取せずに速やかに回収窓口にご連絡をお願いします。何かしら健康被害があれば医療機関を受診して、摂取した期間などの情報をお伝えいただきたい。これらの食品を購入し、手元にある場合は、絶対食べないようにしてください」と呼びかけています。

【原因究明に向けた調査は】
食品衛生法では、都道府県や政令指定都市などが食品を扱う事業者の会社や工場に立ち入り調査を行うことなどが認められています。
「小林製薬」が記者会見で説明した「想定していない成分」はどこで含まれたのか。
大阪市は26日、会社に▼健康被害の原因の究明に向けた調査の状況や▼紅麹の原料の製造工程に関する情報などを市に報告するよう指示しました。
ただ、市によりますと、今回、回収を命じた3つの製品に使われていた原料が製造されていた大阪市内の工場は、去年(令和5年)12月に閉鎖されていて、使われていた機械は和歌山県内にあるグループ会社の工場に移されているということです。
また、▼流通量が最も多い「紅麹コレステヘルプ」は岐阜県内の工場で▼ほかの2つの製品は、富山市にある2か所の工場で製造されているということです。
市は管轄エリア外では、立ち入り調査を行う権限がなく、27日、大阪市の横山市長は、岐阜県と富山市に調査を依頼したことを明らかにしました。
一方、「小林製薬」の取引先の食品メーカーなどでは、同じ紅麹の原料を使った商品の自主回収の動きが相次いでいます。
このことに関連して大阪市は「回収命令などの権限は、それぞれの商品を作っている事業所があるエリアを管轄する自治体が持っている。同じ原料を使って同じような健康被害が確認される状況であれば、製造場所を管轄する自治体が判断することになる」と説明しています。

【大阪市の依頼で岐阜県調査】
大阪市の横山市長は、27日夕方、記者団の取材に応じ、「小林製薬」に3つの製品の回収を命じる行政処分を出したことについて、「一刻も早く原因の特定と、回収を進めていただきたい。摂取されている方は直ちにやめて回収に応じていただきたい」と呼びかけました。
また、横山市長は27日の行政処分に先立って、26日、3つの製品の工場がある岐阜県と富山市に対して、調査を依頼したことを明らかにしました。
大阪市によりますと、▼流通量が最も多い「紅麹コレステヘルプ」は岐阜県内の工場で▼ほかの2つの製品は、富山市にある2か所の工場で製造されていたということで、大阪市の管轄エリア外のため、それぞれの自治体に対応を依頼したということです。
このうち岐阜県によりますと、26日、保健所の職員2人が池田町内の工場に立ち入り調査を行ったということで、▼健康被害についての苦情などがないかや、▼製造方法などについて調べたということですが、特に異常は見られなかったということです。
岐阜県は近く大阪市に調査結果を報告するとしています。

【対応を準備する医療現場】
大阪府の中核病院の1つ大阪急性期・総合医療センターは今回の件を受けてかかりつけの患者や連携する地域の診療所などから相談や問い合わせがあった場合に備えてスタッフに対応を指示し準備を進めています。
腎臓・高血圧内科で中心となって対応にあたる林晃正 副院長は「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取し腎臓の病気などを発症した患者を実際に診療した複数の医師と情報交換したということです。
林副院長は、「健康食品との関連はわからないが、薬剤などが原因で起こる『尿細管間質障害』の症状に似ているものもあるということだった。そのような腎障害の場合、自覚症状は出にくいのが特徴で尿が多くなったり脱水症状が出たりする人もいる。進行して人工透析が必要になるまで気づかないケースもあるので早期発見がとにかく大事だ。尿検査や血液検査などで調べればわかるので、心配な人はまずかかりつけ医に相談してほしい」と呼びかけていました。

【日本腎臓学会が事態注視 調査も】
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含んだ健康食品を摂取した人たちが腎臓の病気などを発症した問題で、腎臓の専門医などで作る「日本腎臓学会」は、全国の会員に、該当する患者がいないかなどについてのアンケート調査を行うことを決めました。
小林製薬が製造した「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人に腎臓の病気などが相次いでいる問題で、腎臓の専門医などで作る日本腎臓学会は、会員に向けて各地の診療の現場でも該当する患者が受診する可能性があると注意を喚起しています。
さらに学会では、全国の会員の医師などに対し、当該の健康食品を摂取した人で▼腎臓の機能に障害が出ている人が受診していないかや▼人工透析が必要になった人がいないかなどについて近く、インターネットを通じてアンケート調査を行うことを決めたということです。
学会では今後も事態を注視し、情報を集めていくということで、日本腎臓学会の南学正臣 理事長は「問題が発覚したあと、現場の医師たちから懸念の声が寄せられていて、学会としても情報の把握や対応を急ぐ必要がある」と話していました。

【愛媛のメーカー 健康食品を自主回収】
愛媛県に本社がある健康食品メーカーの「ジャパンギャルズsc」は、小林製薬が製造していた紅麹原料を使用した健康食品を自主回収すると発表しました。
これまでに健康被害の申し出はないということです。
自主回収の対象となるのは、「ジャパンギャルズsc」が販売する健康食品「からだにとどく食べる菌」で、小林製薬が製造している紅麹原料を使用していたということです。
全国のドラッグストアなどで販売されていて、販売を開始した2015年7月からのおよそ39万5000個を対象とするとしています。
これまでに購入した人から健康被害の申し出はないということです。
「ジャパンギャルズsc」は、「大変ご迷惑をおかけしますこと おわび申しあげます。手元に商品がありましたら、回収専用の窓口まで送ってほしい」と呼びかけています。

【兵庫の食品メーカーなど3社 自主回収】
兵庫県内の食品メーカーなど3社が、「小林製薬」が製造した紅麹原料を使っていたとして、新たに、菓子や健康食品の自主回収を始めました。
これまでに健康被害などの情報は入っていないということです。
このうち、豊岡市の菓子メーカー「げんぶ堂」は、「こうのとりの郷 松葉マヨネーズ」など、おかきやあられ15種類の販売を中止し、自主回収を始めました。
会社によりますと、対象の製品は小林製薬が回収を進めている機能性表示食品とは異なる種類の紅麹原料を使っていたということですが、原料の仕入れ先を通じて連絡を受けた25日から販売を停止し、購入した人に返品を呼びかけています。
このほか、▼食品の製造・販売を行う高砂市の「籠谷」は、ジェラート「やすらぐ果実」について、また、▼通信販売を行う西宮市の「ツバキ薬粧」は、健康食品「発酵高麗あか人参+金時しょうが」について、それぞれ販売を中止し、自主回収を始めました。
いずれも、これまでのところ健康被害の情報は寄せられていないということです。

【イオン 肉まんなど7品目を自主回収】
流通大手のイオンは、小林製薬の紅麹原料を使ったプライベートブランドの肉まんなど7品目を自主回収することを決めました。
使われた紅麹原料は問題となっているものではないということですが、安全性や流通経路が確認できなかったため、対応したとしています。
発表によりますと、イオンが自主回収するのは、プライベートブランドの「トップバリュベストプライス」の商品で、▼「回鍋肉の素」、▼「麦麹使用でふんわり肉まん」で、コード番号の下2桁が▽「07」と▽「14」のもの、▼「麦麹使用でふんわり肉まん・あんまん」、▼「麦麹使用でふんわり肉まん・カレーまん」、▼「麦麹使用でふんわり肉まん・ピザまん」、それに▼「高菜ピラフ」の合わせて7つの品目です。
これらの商品はいずれもイオン系列の全国の店舗で販売していたということです。
会社によりますと、対象の商品に使われていた小林製薬の紅麹原料は、いずれも腎臓の病気などを発症したことが報告され今回問題となっているものではないということですが、安全性や流通経路について確認ができなかったことから回収に踏み切ったとしています。
会社は、安全性が確認されるまで当面は生産や販売を中止したうえで、購入した店や電話での問い合わせを通じ返金に応じるとしていて、「ご不安な思いをおかけし、深くおわび申し上げます」としています。

【スーパーも対応追われる】
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題を受け、滋賀県内のスーパーでも製品を撤去するなどの対応に追われています。
関西を中心に156店舗を展開するスーパーの大津市の店舗では、自主回収の対象となっている小林製薬の製品のうち、店で販売していた「紅麹コレステヘルプ」を26日、撤去しました。
売り場には「メーカー自主回収が発生したため販売を中止します」という貼り紙が掲示されていました。
また、食料品売り場では小林製薬の紅麹原料を使用し、自主回収の対象となっている酢と日本酒についても自主回収を知らせる紙が貼られていました。
20代の男性の客は「大きい会社の健康食品でこういう問題が出るとは驚いた」と話していました。