小林製薬「紅麹」 腎疾患で1人死亡 入院確認や報告70人余

「小林製薬」の「紅麹(べにこうじ)」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを相次いで発症した問題で、ことし(2024年)、1人が腎疾患で亡くなっていたことを会社が明らかにしました。
これまでに入院の確認や報告は70人余りに広がっていて、会社は、対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけるとともに成分の分析を進めています。

小林製薬は、「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症したことから、この成分を含む3種類の機能性表示食品の自主回収を進めています。
会社によりますと、機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」を2021年4月から先月(ことし2月)までおよそ3年間継続して購入していた1人が亡くなっていたことが、遺族からの連絡で分かったということです。
会社は、25日、想定していない成分が含まれている可能性がある製品の製造番号、18種類を明らかにしていて、亡くなった人は、このうち製造番号、▼X304と▼H306、そして▼E301を購入していたということです。
今月22日に今回の問題を発表した直後から3600件を超えるメールが寄せられ、遺族からは今月23日の土曜日の夜にメールで連絡があったものの、週明け25日の月曜日まで確認が遅れたということです。
会社は製品と死亡との因果関係が疑われるとしていて、26日夜、遺族に会い、詳しいいきさつを確認することにしています。
これとは別に、これまでに体調不良を訴えて入院したことが確認されたのは26人にのぼるほか、およそ50人から入院したと報告があったということです。
会社は健康被害の実態把握を進め、対象となる製品の使用を中止するよう呼びかけるとともに成分の分析を進めています。
この問題をめぐっては、会社が自主回収を進めている健康食品に使用しているものと同じ紅麹原料が、子会社を通じて取引先に販売され、食品などに使われたことが分かっていて、食品メーカーなどが自主回収する動きが相次いでいます。

【街で不安の声も】
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症し、1人が腎疾患で亡くなっていたことについて、大阪の人たちからは不安の声が聞かれました。
このうち大阪・中央区の70代の男性は、「健康食品を飲んで病気になるっていうのは、笑い話にもならない。もう社会問題ですね。どういう経緯で製造したのか、人の命がかかっている問題なので、会社は情報を全部開示しないといけない」と話していました。
大阪・此花区の30代の女性は、「経緯が分からないので怖い。小林製薬は大きい会社なので、そこの商品については『いいんだな』って信じてしまうから」と話していました。
枚方市の40代の男性は、「起きうる症状などもっと情報がほしい。自分でも気になるところがあれば病院にいく機会になるので」と話し、詳しい情報の開示を求めました。
また、兵庫県宝塚市の70代の男性は、「最初に被害を把握してから長い間、回収などの対応をしておらずひどいと思う」と話していました。
サプリメントを製造している会社で働いているという池田市の50代の女性は、「亡くなった人がいることは大きなショックだし、たくさんの人が被害にあっているのは怖いです。製品をちゃんと作っている会社まで同じように思われることが心配です」と話していました。

【厚労相 会社の発表遅れに“遺憾”】
武見厚生労働大臣は閣議のあと記者団に対し、最初の症例報告から自主回収の発表までに2か月余りかかり、その間、行政への情報提供もなかったことについて「遺憾と言わざるをえない」と述べました。
そのうえで「全国の自治体に対し、健康被害情報があれば報告するよう依頼するとともに厚生労働省のホームページで回収などについての情報提供を開始した。大阪市などと緊密に連携し、原因の究明や適切な自主回収の実施など、健康被害の拡大防止を図っていく」と述べました。

【消費者庁“安全性を再検証し報告を”】
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、消費者庁は紅麹を使った機能性表示食品として届け出ているサプリメントについて、会社側に対して、安全性を再検証して報告するよう求めました。
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題では、会社によりますと、これまでに対象の商品を摂取し、体調不良を訴えて入院したと確認されたのは26人に上っています。
消費者庁は、会社からの報告を受けて、会社が紅麹を使った機能性表示食品として届けているサプリメント8件について、安全性の根拠となる情報を再検証し、報告するよう通知しました。
また、消費者庁は、あわせて福岡市の会社「ZERO PLUS」についても、紅麹を使った機能性表示食品1件について、安全性の根拠となる情報を再検証するよう求めました。
いずれも回答の期限を来月(4月)5日としています。

【2014年に国が注意喚起】
「紅麹」をめぐっては、2014年に内閣府の食品安全委員会が、紅麹菌を由来とするサプリメントの摂取が原因と疑われる健康被害がヨーロッパで報告されているとして、注意喚起を行っています。
それによりますと、フランスでは、実際に紅麹菌に由来するサプリメントの摂取と関連が疑われる肝障害などの届け出があったとして、服用前に医師に相談するよう注意喚起していて、EU=ヨーロッパ連合では、当時、一部の紅麹菌が生むカビ毒の「シトリニン」について、サプリメントに含まれる基準値を設定していました。
一方、小林製薬は、今回、「シトリニン」についてはサプリメントの原料となった紅麹からは検出されていないとしています。

【大阪市長“卸し先の早期把握と公表を”】
大阪市の横山市長は、市内に本社がある「小林製薬」に対して、卸し先の早期の把握と公表を求めていく考えを示しました。
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、会社はことし1人が腎疾患で亡くなっていたことを明らかにしています。
これについて、「小林製薬」の本社がある大阪市の横山市長は26日、記者団に対して、「現在、会社の方で、事実関係を確認していると聞いている。迅速に確認していただきたい。消費者のみなさんは、ぜひ商品を確認し、お心当たりのある方は摂取を控えていただきたい」と注意を呼びかけました。
そのうえで市の対応について、「会社と情報を共有しながら調査を進めているところだ。一刻も早く、どういう因果関係があったのか、われわれの取りうる選択肢はすべて取り、調査や情報収集にあたっていきたい」と述べました。
また、取引先の食品メーカーなどで同じ紅麹の原料を使った商品の自主回収の動きが相次いでいることを踏まえて、卸し先の情報については、「少しでもリスクがある商品に関しては早く共有して、世に公表していくことが重要だと思う。大阪市としても情報連携しながら、可能なかぎり早期の把握と公表を求めていきたい」と述べました。

【滋賀 東近江 紅麹原料使ったパン 店が自主回収】
滋賀県東近江市にあるパンの製造販売店が、「小林製薬」が製造した紅麹原料を使ったパンの自主回収を始めました。
これまでに購入した人から健康被害の申し出はないということです。
自主回収を始めたのは東近江市にあるパンの製造販売店「パンのカワバタ」です。
今月9日に市内で行われたイベントで、小林製薬が製造した紅麹原料を使ったパン「いのちのパン(紅麹パン)」6枚切り1斤を6点販売したということです。
店では、ふだん、予約があった分だけを販売していて、今月18日から22日までに製造・販売した分についてはすでに自主回収を実施し、その際、客から聞き取りを行ったところ、健康被害の申し出はなかったということです。
店では、現在、この「いのちのパン」の販売を停止しています。
「パンのカワバタ」の店主、川端宏明さんは「強い憤りを感じています。毎週購入して食べていたお客様もいますが、今のところ体調不良を訴えている人がいないことが不幸中の幸いです。これまで主力商品として販売していて、風評被害もこれから心配です。早く原因を究明してほしい」と話していました。

【ノエビア 紅麹原料使った健康食品自主回収】
神戸市に本社のある化粧品メーカー「ノエビア」は小林製薬が製造した紅麹原料を使った健康食品を販売していたとして、製品の販売を中止し、自主回収すると発表しました。
これまでに健康被害の報告は入っていないということです。
自主回収の対象となるのは神戸市に本社を置く化粧品メーカー「ノエビア」が販売していた健康食品「ノエビア DHA&EPA」です。
会社によりますと、対象の製品は、8年前(2016年)から小林製薬から仕入れた紅麹原料を使って委託先の静岡県のメーカーが製造していて、▽主に代理店を通じての対面の販売のほか、▽会社の公式サイトでも販売しているということです。
会社では、委託先を通じて連絡を受けた今月22日から販売を停止し、購入した人に製品を返品するように呼びかけていますが、現在のところ、健康被害の報告は寄せられていないということです。
「ノエビア」は「お客様に多大なご心配とご迷惑をおかけすることを心からおわび申し上げます。今後はより一層の品質管理体制の強化に努めてまいります」とコメントしています。

【京都の4社が自主回収】
京都市のみそ製造販売会社などあわせて4社が、いずれも「小林製薬」が製造した紅麹原料を使っていたとして、商品の自主回収を始めました。
これまでのところ健康被害などは、確認されていないということです。
自主回収を始めたのは、いずれも京都市に本社があるみそ製造販売の「本田味噌本店」のほか、みそ製造卸の「西京味噌」、食品製造販売の「京都一の傳」「京都やま六」のあわせて4社です。
対象の商品は、みそやしょうゆ、みそ漬けなどで、取引先に卸していたほか、店頭や各地のデパートで販売したり通信販売で取り扱ったりしていたということです。
4社が使った紅麹原料は、小林製薬が回収を進めている機能性表示食品「紅麹コレステヘルプ」に使われているものとは異なる種類のものですが、予防的措置として自主回収を決めたとしています。
4社によりますと、これまでのところ、健康被害などは確認されていないということです。