日立造船社員自殺“慣れない業務などで精神疾患発症”労災認定

大阪市に本社がある機械メーカー、日立造船に勤務していた当時27歳の男性社員が3年前、海外赴任先のタイで自殺したのは、慣れない業務による負担や上司に厳しく指導されたことなどから精神疾患を発症したことが原因だとして、今月(3月)、労働基準監督署から労災に認定されたことを家族や弁護士が明らかにしました。

日立造船に勤務していた上田優貴さん(当時27歳)は、3年前の2021年4月、海外赴任先のタイの工場で高さおよそ30メートルの位置から転落して死亡しました。
25日、上田さんの母親の直美さんと代理人弁護士が会見し、労働基準監督署から今月、労災と認定されたと明らかにしました。
それによりますと、上田さんは、初めての海外勤務で、タイのゴミ焼却発電所の建設プロジェクトに従事していましたが当時、新型コロナの影響で事前の現地での研修がなかったほか、途中で派遣期間が延長され、専門外であるプラントの試運転業務にも当たっていたということです。
また、仕事上のミスなどについて上司から厳しく指導されることも何度もあったということです。
弁護士によりますと労働基準監督署は、海外で慣れない業務に当たっていたことやミスに対する厳しい指導などによる心理的な負担が大きく、精神疾患を発症したと認定したということです。
母親の直美さんは、「ボーナスが出たときは家族のために家電製品を購入してくれるような優しい息子でした。海外赴任から戻る予定だった5月を迎えると息子が帰ってくるのではないかと待っている自分がいます。労災認定されたことを受けて、会社は十分に説明してほしい」と話していました。

【会社調査報告書とコメント】
日立造船では、弁護士でつくる第三者委員会を設置し、去年11月に調査報告書をまとめています。
その中では、上田さんの死亡について、「自殺なのか偶然の事故によるものなのかは認定できなかった」としています。
一方、上田さんが現地でつけていた日記の中に「昼までは死にたかった」などと自殺に言及する記載があったことを認定しています。
また、現地での上田さんの業務が専門とする電気設備の立ち上げ業務からプラントの試運転業務に変わった後、時間外労働が急激に増加しているとしています。
また、上司からの指導や注意については「一部感情的なものがあったが、社会通念上、相当な範囲を超えるものとまでは認められなかった」としています。
そのうえで報告書では、上田さんは、「慣れない試運転業務や時間外労働の急激な増加等による疲労の蓄積、他のメンバーからの注意・指導による心理的負担等が積み重なっていたことが認められる」と結論づけています。
労災が認定されたことについて日立造船は、「あらためてご冥福をお祈り申し上げます。会社として誠意を持ってご遺族に対応させていただきたいと考えています。今後、二度とこのようなことが起きないように再発防止に向けた取り組みを進めていく所存です」とコメントしています。

【悩み抱える人の相談窓口】
不安や悩みを抱える人の相談窓口は、厚生労働省のホームページなどで紹介しています。
インターネットで「まもろうよこころ」で検索することもできます。
電話での主な相談窓口は、▼「よりそいホットライン」が0120−279−338、▼「こころの健康相談統一ダイヤル」が0570−064−556となっています。