原発事故避難者訴訟 神戸地裁 東電に賠償命じ国の責任認めず

東京電力福島第一原子力発電所の事故で、兵庫県に避難した人たちが住み慣れた生活を奪われたなどとして、国と東京電力に損害賠償を求めた裁判で、神戸地方裁判所は21日、東京電力に対して合わせて2400万円余りの賠償を命じる判決を言い渡しました。
一方、国の責任については認めませんでした。

東日本大震災による福島第一原発の事故で、福島県や宮城県から兵庫県に避難した30世帯78人は、住み慣れた生活や仕事を奪われ精神的な苦痛を受けたとして、国と東京電力に対し、合わせて6億9000万円余りの損害賠償を求めていました。
21日の判決で、神戸地方裁判所の龍見昇 裁判長は「居住地域からの避難は事故による放射線被ばくの影響を避けるためのものであり、一般人から見てもやむをえない」などと指摘しました。
そのうえで、東京電力に対し、原告のうち22世帯50人に総額およそ2400万円の賠償を命じました。
一方、「国が津波による原発事故を防ぐための適切な措置を講じるよう東京電力に義務づけたとしても、事故は避けられなかった可能性が高い」などとして、国の責任は認めませんでした。
原発事故で避難した人などが国と東京電力を訴えた集団訴訟では、最高裁判所がおととし(2022年)6月に国の賠償責任を否定する判断を示したあと、各地の裁判所で同様の判断が続いています。

【原告の弁護団“不当判決”】
神戸地方裁判所の前では、午後2時半ごろ、原告の弁護団のメンバーが「不当判決」「国の責任を否定」などと書かれた紙を掲げました。
弁護団の津久井進 弁護士は「今回の判決は私たちが求めていた結果とは違う、不当な判決で残念だ」と話していました。

【原告側 控訴の方針】
判決を受けて、原告と弁護団は記者会見を開き、弁護団長の古殿宣敬 弁護士が「今回の判決は慰謝料として認められた額も非常に少なく、おととしの最高裁判所の判決よりも後退していると言わざるをえない。最高裁の判決をそのままなぞるような内容で、今後、高等裁判所でもこの裁判をどう闘っていくか、改めて考えていきたい」と述べ、控訴する方針を明らかにしました。
また、原告の1人で福島県郡山市から避難している50代の女性は「今回の判決はとても残念です。86歳の母が今もひとりで福島県に住んでいますが、原発事故がなければ私も母のそばで世話をしながら過ごすことができたのにと思います。裁判のことを考えずにゆっくり過ごしたいとも思いますが、国や東京電力の責任を追及し、最後までしっかり闘っていきたい」と話していました。

【東京電力と原子力規制委は】
判決を受けて、東京電力ホールディングスはNHKの取材に対し、「原子力発電所の事故により、いまなお福島県、および広く社会のみなさまに多大なるご心配とご負担をおかけしていることについて、心より深くおわび申し上げます。神戸地裁において言い渡された判決について今後内容を精査し、真摯(しんし)に対応してまいります」とコメントしています。
また、国の原子力規制委員会は「神戸地裁において国の損害賠償責任を否定する判決が言い渡されました。いずれにせよ、原子力規制委員会としては、事故を踏まえて策定された新規制基準への適合性審査を厳格に進めていくことにより、適切な規制を行ってまいります」としています。