医師働き方改革 大阪府内9病院“診療体制縮小など見込む”

来月(4月)から勤務医の労働時間に上限を設ける医師の働き方改革が本格的に始まりますが、大阪府などが府内の病院にアンケート調査した結果、9つの病院が診療体制の縮小などを見込んでいると回答したことがわかりました。
府は「特に救急医療に多大な影響が生じないよう対応していく」としています。

患者の診療にあたる勤務医に対して、労働基準法に基づき休日や時間外労働の上限規制が適用される働き方改革が来月から本格的に始まります。
その影響を調べようと、大阪府と厚生労働省は去年(令和5年)11月から今月(3月)までの期間に府内の499の病院にアンケート調査を行い、71%にあたる355の病院から回答を得ました。
それによりますと、診療体制への影響については▼全体の97.5%が「縮小などは特に生じないと見込んでいる」と回答した一方、▼残りの2.5%にあたる9つの病院は、「縮小などは避けられないと見込んでいる」と答えたことがわかりました。
さらにこの9つの病院に対し、診療を縮小した場合の地域の医療提供体制への影響を尋ねたところ、「体制は確保できる見込み」と答えたのは2つだけで、そのほかの7つの病院は、「縮小による地域の医療提供体制への影響は不明」などと回答したということです。
調査では、働き方改革の影響で大学病院などからの医師の派遣が取りやめになる予定だと答えた病院もあったということで、調査した大阪府医療対策課は「働き方改革の開始以降も影響などを継続的に把握し、特に救急医療の提供体制に多大な影響が生じないよう適切に対応していく」としています。

【救急医療縮小の病院も】
大阪府内の病院では、すでに救急医療を縮小する動きが出始めています。
大阪・港区にあるJCHO大阪みなと中央病院は、病気やけがの救急患者を24時間受け入れる2次救急の指定病院です。
病院では医師の働き方改革が本格的に始まるのを前に、午後10時から午前7時までの時間外の救急患者の受け入れを原則、かかりつけの患者に限る対応を去年(令和5年)4月から始めています。
去年11月までの8か月間に時間外で受け入れた救急患者の数は、700人余りと前の年の同じ時期と比べておよそ半数に減りました。
病院では、これまで夜間の当直に医師2人で対応してきましたが、▼多いときで一晩におよそ10人の救急患者に対応しなければならず、ほとんど寝る時間がないうえ、▼当直明けの日も通常どおり朝から外来や手術などに対応していて、働き方改革で設けられる時間外労働の上限を超えてしまうおそれがあったということです。
病院で働く医師は、「いまは当直でも8時間眠ることができるようになり、翌朝はすっきりしていて疲労度が全く違う。これまで当たり前のように夜中働き、翌日も働いてきたがやはり普通の人間なので休むべきときは休むほうがいい」と話していました。
この病院を含め、大阪市の西部には2次救急の指定病院が17あり、時間外の受け入れを縮小した場合の影響について事前に相談したということです。
また、時間外の受け入れを縮小する代わりに、救急医を新たに2人雇って昼間の受け入れを増やしたということで、今のところ地域の救急医療に大きな問題は起きていないということです。
JCHO大阪みなと中央病院の細川亙 院長は、「近隣に救急の指定病院が多くあるので相談しながら働き方改革に対応ができたが、1つしか病院がない地域では同じようにはいかないと思う。患者側にもできるかぎり昼間の時間帯に受診する意識を持ってもらうなど、医療現場の負荷を軽くしていかないと医師の働き方改革はうまくいかないのではないか」と話していました。