障害福祉サービス事業所の報酬 4月に改定 一部で大幅減か

障害のある人が利用する「障害福祉サービス事業所」に支払われる報酬が来月(4月)改定され、一部の事業所では、利用者がサービスを受けた時間に応じて支払われることになります。
報酬が大幅に減少するおそれがある事業所からは「事業を継続できなくなる」という声が上がっていて、厚生労働省は対応を検討するとしています。

厚生労働省は、生活介護や自立に向けた訓練などを行う「障害福祉サービス事業所」に支払われる報酬について、3年ごとに見直しを行っていて今回も来月から改定されます。
このうち、障害者の生活介護を行う事業所ではこれまで営業時間に応じて報酬が支払われていましたが、より実態に即した報酬とするため利用者がサービスを受けた時間に応じて支払われることになりました。
ところが、これによって報酬が大幅に減るおそれがあるという声が一部の事業所から上がっています。
このうち大阪・生野区にある精神障害者向けの生活介護事業所「アトリエ・IK」では40代から70代の利用者33人を受け入れています。
障害の特性から、日によって体調に差があったり、ほかの人と長時間いることが難しかったりするため、それぞれの利用者によって時間の長さはまちまちで、5時間未満の利用が半数余りに上るといいます。
事業所の試算では、来月の改定によって報酬が38%減る見込みだということです。
事業所を運営するNPO法人「精神障害者支援の会ヒット」の藤川治彦 事務局長は「経営の努力や工夫で対応できる下げ幅ではなく、このままでは事業を継続できなくなる。短い時間でも毎日通うことが利用者の生活の支えになるのでどうにか維持できるような対応を国は検討してほしい」と話していました。
大阪の障害者団体は、大阪府内で精神障害者の生活介護を行っている事業所10か所を対象に調査したところ報酬が3割から5割ほど減少する見通しだったとして、厚生労働省に対応を求めています。
こうした声を受けて厚生労働省は、限られた時間しか利用できない人を受け入れる事業所については一定の配慮を設ける方針で、今月(3月)中に対応を検討するとしています。

【盲ろうの人が通う事業所でも危機感】
今回の報酬改定では、視覚と聴覚の両方に障害がある盲ろうの人が通う事業所も危機感を募らせています。
このうち、大阪・港区にある事業所「手と手とハウス」には19人が通っています。
盲ろうの人は自分でインターネットを見たりラジオを聞いたりすることが難しいため、事業所では毎日、利用者が希望する情報や新聞記事の内容を伝えています。
情報の伝達は介助者が1人ずつ付き添い手を触って伝える「触手話」や「指点字」で行います。
いずれも手先に神経を集中させて情報を読み取る必要があるため、長い時間やりとりを続けることは疲労をともなうということです。
利用者の60代の男性は、「さまざまな情報を得ることができるので事業所で過ごす時間は大切ですが、やりとりにとても気を遣うため何時間も続けるのは難しいです」と話していました。
事業所によりますと、利用者のほぼ全員が5時間ほどの利用となっていて、改定後の報酬は3割ほど減るおそれがあるということです。
事業所の管理者を務める町田知枝さんは「利用時間の長さだけで考えるのではなく、その利用時間の中身や短い時間にならざるをえない事情もふまえながら、国には検討を進めてもらいたいです」と話していました。