堺 認定こども園で保育士一斉退職の意向 園児受け入れ困難も

大阪・堺市にある認定こども園で常勤の保育士のほとんどが今月末で一斉に退職の意向を示していることが堺市や園への取材で分かりました。
市と園は子どもたちの受け入れが難しくなるおそれがあるとしています。

保育士が一斉退職の意向を示しているのは堺市西区にある認定こども園「あいあい浜寺中央こども園」です。
園によりますと、園長を含む常勤の保育士12人のうち園長を含む10人が今月末で一斉に退職する意向を示し、園を運営する社会福祉法人に退職届を提出したということです。
保育士らは、運営法人の一部の役員によるパワーハラスメントなどの不適切な対応があり、子どもたちを預かる環境が整えられていないと訴えているということです。
運営法人は今月12日と13日、保護者向けの説明会を開きました。
市や園によりますと、来月以降の新年度も120人余りの園児が継続して通うことになっていたほか、新たに19人が入園を予定していましたが、市と園は、子どもたちの受け入れが難しくなるおそれがあるとしています。
市は▽園に対して保育士に勤務を続けてもらうため話し合うよう求めるとともに、▽保護者に対して転園の希望を受け付けるなどの対応を取っているということです。
園を運営する社会福祉法人「森の子ども」の宮下鉱二 理事長はNHKの取材に対し「このような事態に至ってしまったことに対して保護者の方には申し訳ないという思いです。子どもへの影響をできるだけ少なくして、人員を確保し立て直しを図りたい」と話しています。
堺市は「行き場を失う子どもが出ないようサポートしたい」としています。

【保護者“子どもかわいそう”】
13日夜、園で行われた保護者向けの説明会は深夜まで及びました。
説明会に参加した父親は「保育士のほぼ全員が辞めると聞きました。不安しかないですし4月からどうすればいいのか分かりません。転園は簡単ではないし、子どもたちもいきなり違う環境に適応できないと思うのでかわいそうです」と話していました。

【保護者“不安しかない”】
説明会に参加した母親は「現場の先生たちには感謝していますし、何の不満もありませんが、運営していた側に対しての憤りはあります。こういう事態になる前に早く手を打ってほしかったですし、3月の保育園の選考が終わっているなかでの発表で、『なぜこの時期なんだ』という気持ちです。別の保育園にすぐに入れるわけではありませんし、気持ちが追いつかずどうしたらいいのかという不安しかありません」と話していました。

【保育士が語った経緯は】
退職届を出した保育士の1人はNHKの取材に対して、園では以前から一部の役員によるパワーハラスメントがあり、退職者が後を絶たなかったと証言しています。
慢性的な人手不足が続いていて、保育士たちは園を運営する社会福祉法人に職場環境の改善と新たな人材の確保を求めたものの問題は解決されなかったということです。
この保育士は「園はただ子どもを預かればいいのではなく、安心、安全に預かる責任があると思っています。パワハラも退職の理由ではありますが、今の人員では子どもたちを守ることができないと考えました」と話していました。
また、12日に行われた説明会に参加した保護者によりますと、説明会には退職する意向の保育士も出席し、これまでのいきさつを話したということです。
説明会で保育士は「かわいい子どもたちや温かく見守ってくれた保護者のために『もう1年頑張ろう』とみんなで力をあわせて頑張ってきました。保育士が足りず、いつ子どもたちに危険が及ぶか分からないと声もあげてきました。それでも人材が確保されることはなく、大切な子どもたちに別の施設で安全な保育教育を受けてほしいと考え、みんなで退職を申し出ました」と述べたということです。

【保育施設の空き状況】
堺市によりますと、このこども園がある堺市西区では、ことし2月15日現在、ほかの認定こども園や保育所などの空きが270人余りあるということです。
市は、保護者から希望を聞きながら転園の手続きを進めていますが、新年度を間近に控える中で保護者や子どもたちは急な対応を迫られることになります。
子どもによっては希望する施設に入れずに西区以外の離れた場所にある預け先を探すことになる可能性もあるということです。