堺 職場のAED届け女性の命救う 会社員らに消防から感謝状

職場に設置されていたAEDを路上に倒れた女性のもとに走って届け、命を救ったとして、大阪・堺市の会社員らに消防から感謝状が贈られました。

13日、感謝状が贈られたのは、▽空調メーカー「ダイキン」の堺市にある工場に勤務する社員や、▽当時、現場にいあわせた看護師などあわせて5人です。
堺北消防署の上野栄太郎 署長が「勇敢かつ迅速、的確な救命活動でした」と述べて、ひとりひとりに感謝状を手渡しました。
消防によりますと、去年12月、堺市北区のコンビニエンスストアの駐車場で70代の女性が倒れ、心肺停止の状態になりました。
堺市では、企業や施設などに設置されたAEDをいざというときに誰でも借りることができる「まちかどAED」という取り組みを進めています。
119番通報を受けた消防は救急車を向かわせるとともに、「まちかどAED」に協力している現場近くの「ダイキン」の工場に電話し、すぐにAEDを持っていってほしいと依頼したということです。
電話を受けた宮脇順子さんら社員たち3人がおよそ200メートル離れた現場まで走ってAEDを運び、その場にいあわせた人たちとともにAEDを作動させました。
女性は意識を回復して、その後、無事に退院し、後遺症もないということです。
感謝状を受け取った宮脇さんは「一刻を争う事態に何とか反応できました。女性が元気に回復されて本当に良かったです」と話していました。
堺市消防局救急課の堀英治 課長は「事業所側の人が命を最優先して現場にAEDを運んでくれたことで人命救助につながった好例だと思います。救急車が到着するまでのこうした対応について、引き続き、市民のみなさんに協力を求めていきたい」と話していました。

【救命の詳細は】
AEDをどのようにして現場にすばやく届けることができたのか。
対応にあたった工場の社員が詳細を語りました。
はじめに消防からの電話を受けた宮脇順子さんは、話の内容がすぐには理解できなかったといいます。
それでも「心肺停止」「AEDを持っていって」という消防の言葉から緊急事態だということがわかりました。
電話の途中で、近くにいる後輩社員に大きな声で「正門のAEDをいま持っていって」と伝えたということです。
「足には自信があった」という後輩社員。
そこから50メートルほど離れた正門の警備室に走って向かい、AEDを持ってさらに150メートル離れた現場まで走りました。
現場のコンビニエンスストアの駐車場には70代の女性が倒れていて、いあわせた人が胸骨圧迫の心臓マッサージを行っていました。
この人たちと協力してスムーズにAEDを作動させることができたということです。
さらに、車で通りかかった看護師も加わりました。
宮脇さんも工場から現場に駆けつけ、携帯電話で、女性の状況について消防への報告を続けました。
会社では、13年前に従業員が倒れた際、AEDによって一命をとりとめたことがあり、AEDの台数を増やしたり、定期的に使用訓練を行ったりしていました。

【まちかどAEDとは】
総務省消防庁によりますとおととし1年間に路上で倒れるなど一般市民が目撃した心肺停止の患者は、全国で2万8834人でこのうち現場でAEDが使われたのは1229人と4%にとどまっています。
こうした中、AEDの活用率を高めようと堺市消防局では「まちかどAED」という取り組みを5年前から進めています。
AEDがある施設やオフィスの場所をインターネット上の地図に掲載し、いざというときに誰でも借りることができるようにしていて、堺市消防局は協力してくれる企業などを増やす活動を続けています。
地図に掲載できたAEDは今月1日時点で1912か所、2018台に上りました。
堺市消防局に119番が入った場合は、その地図を活用して現場近くのAEDの場所を通報者に伝えたり、AEDの所有者に現場に持っていってもらえないか依頼しているということです。
去年1年間にこの「まちかどAED」のしくみでAEDが貸し出されて使われたケースは6件あり、いずれの患者も回復して社会復帰できたということです。
堺市消防局では今後も協力してくれる企業などを増やしていきたいとしているほか、市民に対しても自宅やよく通る道の近くでどこにAEDがあるのか日頃から確認しておいてほしいと呼びかけています。
こうした取り組みは一部の自治体にとどまっていますが、全国のAEDの設置場所について日本救急医療財団がまとめた「全国AEDマップ」もインターネットで公開されています。
所有者が任意で登録し、同意を得られたものが公開されています。
堺市以外の方も万が一の事態に備えてAEDがどこにあるのか、ぜひ確認しておいてください。