播磨灘のイカナゴ漁解禁初日で打ち切り 水揚げ記録的に少なく

瀬戸内に春の訪れを告げるイカナゴ漁が11日、解禁されました。
水揚量が記録的に少なく、地元の漁業者らは資源確保のため、一日で漁を打ち切ることを決めました。

播磨灘や大阪湾は国内有数のイカナゴの漁場ですが、近年は深刻な不漁が続いていて、今シーズンは資源量が極めて少ないため大阪湾での漁は行わず、播磨灘でのみ11日から漁が始まりました。
このうち、明石市の林崎漁港では、早朝から漁船が沖に出て、午前10時半ごろに最初の水揚げが行われました。
初日の水揚げはおよそ500キロと少なく、初競りでは、1キロあたりおよそ6800円と、過去最も高くなりました。
林崎漁業協同組合の久留嶋継光 指導課長は「資源量が少なく、水揚げは少ないと予想はしていたが、実際の水揚げを見て、厳しさを痛感した。高値になってしまうが、消費者のみなさんには春の風物詩をぜひ楽しんでほしい」と話していました。
このあと、明石市内の鮮魚店では、水揚げされたばかりのイカナゴを買い求める人で長い列ができましたが、正午ごろには売り切れていました。
1キロ7000円のイカナゴを8キロ購入した70代の夫婦は「とても高かったので、ことしは買う量を減らしました。この値段が続くなら、来年はくぎ煮を作るのをやめるかもしれません」と話していました。
鮮魚店の社長は「水揚げが少なくしかたがないですが、50年この商売を続けていてこんな値段で売ることになるのは初めてです」と話していました。
地元の漁業者らは資源保護のため、ことしのイカナゴ漁をいつまで行うかについて検討し、一日で漁を打ち切ることを決めました。

【兵庫 イカナゴ漁の不漁続く】
兵庫県内のイカナゴ漁はこのところ深刻な不漁が続いています。
兵庫県によりますと、イカナゴの県内の漁獲量はおよそ20年前までは、年間1万5000トンから3万トンで推移していましたが、2017年(平成29年)以降は、1000トンから1700トンとそれまでの10分の1程度で推移しています。
2020年(令和2年)は記録的な不漁で、過去最低となる142トンとなりました。
このところの不漁の原因について、イカナゴの調査・研究を行う兵庫県の「水産技術センター」では▼プランクトンの不足や、▼海水温の上昇などが考えられるとしています。
水質改善が進み、窒素やリンといった「栄養塩」が減ったことで、イカナゴのえさとなるプランクトンが不足し、えさを十分に食べていない体が青みがかったイカナゴが増えているといいます。
プランクトンの不足は、イカナゴの卵の数にも影響を及ぼしているとみられています。
2018年に「水産技術センター」が行った調査では、30年前と比べて、イカナゴ1匹あたりが持つ卵の数がおよそ3割減っていることが分かっています。
漁業者らは卵を産める一定以上のサイズのイカナゴは捕らないなどの対策をとっていますが、資源の回復には至っていません。
また、暖かい日が続いて海水温が上昇した結果、冬場に暖かい海域にいくはずの大型の魚が播磨灘や大阪湾にとどまっているといった声が漁業者から寄せられていて、「水産技術センタ−」はイカナゴがそれらの魚に捕食されていることも考えられるとしています。
海水温の上昇によってイカナゴ自体も育ちにくくなっているということです。
春の訪れを告げるイカナゴは、めったにお目にかかれない貴重な魚になっています。