「シェアリングエコノミー」広がる

モノや場所などをインターネットを通じて取り引きする「シェアリングエコノミー」について考える催しが、先週、滋賀県で開かれました。

この催しは、滋賀県守山市とシェアリングエコノミー協会が今月1日に開いたもので、自治体職員や会社員などおよそ40人が参加しました。
シェアリングエコノミーは、モノや場所のほか個人が持つ技術などをインターネットを通じて取り引きすることで、具体的には▽モノを売買するフリマアプリやネットオークション、▽空き部屋を提供する民泊、▽自分の技術や労働力を生かす宅配代行サービスなどのことで手軽さやスキマ時間の活用などから副業として注目されています。
イベントでは、空いている駐車場を共有するサービスを提供している会社の社長が、駐車場を探す際に困った体験からサービスを思いついたことなどを講演しました。
このあと参加者たちは地域にあるモノや技術などの活用方法を書き出していました。
参加した銀行員は、「いらなくなった物が中心ですが、フリマアプリで売り買いしています」と話していました。
守山市の森中市長は、「シェアリングエコノミーは活用できていない土地やモノ、スキルや時間などを活用して生活を豊かにする有効なツールだと思います。行政の課題の解決にもつながると思います」と期待を寄せていました。
協会によりますと、国内の市場規模は、2022年度は2兆6100億円余りで、今後さらに拡大し、2032年度には15兆円を超える規模にまで成長すると予測しています。
協会では、適切な納税を促すため、初めて確定申告をする人やサービスを利用して収入を得ている人を対象に、申告の方法などを説明するセミナーを毎年、開いていて、先月(2月)のセミナーには700人余りが参加したということです。
シェアリングエコノミー協会の高田理世さんは、「勤めている会社が倒産するなど何が起きるか分からない時代で自分の収入をいろいろな所から得られるのは安心感につながります。シェアリングエコノミーは暮らしのひとつのインフラになっていると思います」と話していました。

【トレーディングカード転売 現場は】
フリマアプリやネットサイトで取引されているトレーディングカードは1枚が高額で取引されることも珍しくなく、手軽に売買できることから副業としても注目を集めています。
トレーディングカードを取り扱う大阪・北区の店では、1枚が59万8000円で売られている人気アニメのカードもあります。
店によりますと、日本のアニメのカードは海外でも人気が高く、高額で取り引きされるケースも珍しくなく、1枚30万円で買い取りをするものもあるということです。
店長の保科悠さんは、「希少性が高く入手が難しいカードは、保存状態がいいと値段が高くなる傾向があり、買い取った中には1枚350万円のカードもありました」と話していました。
こうした、高額な取り引きに注目して、カードに投資をして転売で利益を得ようとする人は少なくないといいます。
SNSなどでカードの投資情報を発信する後藤寛さんは、本業の輸入業のかたわら、10年ほど前から副業としてカードへの投資を行い日本のカードを海外の販売サイトで売ることで月に100万円稼ぐこともあったと言います。
カードの売買で得た収入については、毎年、申告を行っているということです。
後藤さんのもとにはカードの売買を副業でやってみたいという問い合わせもある一方、確定申告のやり方や税務署から指摘を受けたという相談も寄せられています。
後藤さんは、「フリマアプリはスマートフォンでもできるのでやりやすさからカードの売買をする人は増えています。不況で給料も上がらないので、少しでも収入がほしい人がやるようになっていますが、稼いだ金をすぐに使ってしまい手元に残らない人も多いので、納税には注意するよう呼びかけています。とにかく取引した履歴を写真で残しておくのが大事で、いくらお金が入っていくら出たのかというのを客観的に見える証拠を残しておくといいと思います」と話していました。

【市場規模拡大 申告漏れも】
「シェアリングエコノミー」の市場規模が拡大する中、取引で得た所得の申告漏れが相次ぎ、去年、近畿地方では、およそ29億円に上っています。
なかでも、民泊やネットオークションなどによる所得の申告漏れが目立つということで、国税局は適切な申告を呼びかけています。
関係者によりますと、兵庫県に住む男性は「ポケットモンスター」や「遊戯王」など人気アニメのトレーディングカードをインターネットサイトなどで転売していました。
しかし、2021年までの5年にわたっておよそ5000万円の所得を申告せず、大阪国税局から無申告加算税を含むおよそ1300万円の追徴課税を受けたということです。
給与以外に副業などで20万円を超える所得を得た場合は確定申告が必要で、確定申告をしないと、本来納めるべき所得税に加えて、「無申告加算税」などのペナルティーが科されます。
大阪国税局によりますと、「シェアリングエコノミー」に関する所得の申告漏れは、近畿地方では去年6月末までの1年間におよそ29億円にのぼり、前の年と比べると倍近くに増えているということです。
また、個人に対する税務調査は204件で、▽民泊やカーシェアなど「シェアリングビジネス」が69件と最も多く、次いで、▽ネットオークションなど「ネット通販」が63件、▽「ネット広告」が20件などとなっています。
関係者によりますと、申告漏れの要因は、サラリーマンなどふだん申告になじみのない人で、申告への認識がなかったり、申告のしかたがわからなかったりすることが多いということです。
国税局は新たな経済活動への対策として、ネット上の取引を把握する専門のチームで情報収集や分析を進め、積極的な税務調査を行っていて、適切な申告を呼びかけています。