春節を前に 中国などから観光客到着 関西各地では

中国で旧正月の春節にあわせた大型連休が10日から始まるのを前に、関西空港には一足早く、中国などからの観光客が到着しています。
ただ、関西空港と中国本土を結ぶ便の数は依然としてコロナ禍前の4割程度の水準にとどまっていて、本格的な回復には至っていません。

新年を旧暦で祝う中国などでは、10日から旧正月の「春節」にあわせた大型連休が始まります。
これを前に、関西空港では、9日昼ごろから中国などからの旅客機が次々と到着し、到着ロビーには団体旅行客の姿も見られました。
中国・瀋陽から家族で来たという女性は「USJとディズニーランドで遊ぶのを楽しみにしている。京都の雰囲気も味わいたい」と話していました。
日本に2週間滞在する予定だという青島から来た男性は「ヨーロッパをはじめ海外旅行の値段が高騰する中、日本への旅行は値段がそれほど高くなく、コストパフォーマンスがよいのがメリットだ」と話していました。
航空各社などによりますと、関西空港と中国を結ぶ便の搭乗率はこのところ7割から8割程度で推移していましたが、9日から大型連休の前半にかけての到着便は、いずれも満席か、満席に近い状態だということです。
ただ、足もとでは、中国本土とを結ぶ便の数はコロナ禍前の4割程度までしか回復しておらず、連休中も増便する予定はないということで、中国からの観光客の本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。

【神戸 有馬温泉 観光客受け入れ準備】
10日から中国の旧正月「春節」が始まるのを前に全国有数の温泉地、神戸市の有馬温泉では中国や台湾などからの観光客を歓迎しようと、準備を進めています。
中国の旧正月「春節」はことしは10日から始まり、大型連休を利用して中国や台湾から観光客が日本を訪れる見込みです。
これに向けて、神戸市北区にある全国有数の温泉地、有馬温泉の旅館では観光客を受け入れる準備を進めています。
このうち、老舗旅館の「陶泉 御所坊」では3か月ほど前から春節の期間の予約が増え、すでにほぼ埋まっているということで、その多くが海外からだということです。
旅館では訪れた人をもてなそうと、夕食のメニューの中に期間限定で旧正月に食べられる料理の「大根餅」を提供しています。
餅の上に煮込んだ大根をのせ、酒かすを使った「あん」をかけたり、さけやいくらを添えたりして、和風にアレンジしています。
新型コロナの水際対策が大幅に緩和されて以降、中国や韓国を中心に海外からの観光客は急激に増えていて、春節を前に期待感が高まっているということです。
有馬温泉観光協会の会長で、旅館を経営する金井啓修さんは「日本の年末年始と少しずれた閑散期に、春節の時期が重なるので旅館としてはありがたいです。コロナ禍の間に改修工事などを施して、各旅館はグレードアップしているので、訪れた人には喜んで帰ってもらいたい」と話していました。

【神戸中心部〜有馬温泉 シャトルバス運行】
春節で神戸を訪れる観光客に日帰りで有馬温泉や市街地での散策を楽しんでもらおうと、10日から17日までの間、神戸市中心部と有馬温泉を結ぶシャトルバスが運行されることになりました。
このシャトルバスは兵庫県内でバス事業を手がける「神姫バス」が神戸観光局の協力を得て初めて運行するものです。
バスは神戸市中心部の三宮を経由しポートアイランドと有馬温泉を往復するもので、期間中は毎日、5本の日帰りツアーが予定されています。
バス会社のホームページから事前の予約が必要で、▼所定のホテルに宿泊する場合は無料、▼そのほかの人は往復2000円で乗車することができます。
▽有馬温泉に向かうツアーには日帰り温泉施設の利用券が、▽神戸の市街地に向かうツアーには飲食店で利用できるクーポンがついています。
ツアーを行うことで、宿泊料金が比較的高く客室数も限られる有馬温泉に気軽に足を伸ばし、日本らしい風情を味わってもらうとともに、有馬温泉の宿泊客にも神戸の市街地での散策を楽しみ、消費につなげてもらおうというねらいです。
神姫バス地域事業推進課の後藤健太さんは「神戸の市街地と有馬温泉は30分でアクセスできる距離にあるものの、どうやって行けばいいか分からないといった声もある。ぜひこの機会に神戸と有馬温泉の魅力を楽しんでもらいたいです」と話していました。

【大阪 黒門市場 期待と慎重な声】
中国の旧正月にあたる「春節」を10日に控え、外国人観光客が多く訪れる大阪・中央区の黒門市場の店主らからは中国人観光客に対する期待の一方、以前のような盛り上がりは難しいという慎重な声も聞かれました。
新年を旧暦で祝う中国などでは、10日から旧正月の「春節」にあわせた大型連休が始まります。
これを前に、外国人観光客が多く訪れる大阪・中央区の黒門市場では、店の人から期待する声が聞かれました。
このうち、珍味を扱う店では、春節用に乾燥ナマコや干し貝柱などを仕入れたといいます。
この店で働く女性は「中国人向けに最高級の食材を売り出しています。店を手伝いに来ましたが、期待しています」と話していました。
また、フグ専門店の男性は「品物は十分に用意しています。この時期はかなり来てくれるからありがたいです」と話しました。
一方で、関西空港と中国本土を結ぶ航空便はコロナ禍前の4割程度の水準にとどまっていて、中国人観光客の数も本格的な回復には至っていません。
背景には、▼中国で景気が減速していることに加え、▼日本への団体旅行の解禁が遅れたことなどがあるとみられています。
こうした状況を踏まえ、カニ専門店の男性は「まだ全体的に客足が戻っておらず、特別な催しや企画は考えていません」と話していました。
また、鮮魚店の男性は「春節には期待していますが、以前のような勢いまで戻るのは少し難しいと思いますね」と話していました。

【中国政府 春節で“のべ90億人移動”と予測発表】
中国政府は、春節の大型連休を含む40日間に帰省や旅行などで移動する人の数について、「のべ90億人にのぼり、過去最多になる」とする予測を発表しています。
このうち、およそ8割を占めるのが自家用車での移動で、去年(2023年)の同じ時期の実績の2倍以上の、のべ72億人としています。
一方で、鉄道や飛行機などの公共交通機関を利用する人はのべ18億人で、去年の実績からの増え幅は1割余りにとどまるとしています。
中国政府は、春節の人の移動については、これまで公共交通機関の利用者の予測のみを発表していて、自家用車を含めた予測を公表するのは初めてです。
中国政府は「春節の移動には構造的な変化が起きている」としていて、景気の低迷を背景に、市民の節約志向が広がるなかでも自家用車での移動は増え、人の移動も活発だと強調するねらいもあるとみられます。
一方、中国から海外への旅行者は、団体旅行の再開を進めたことなどから増加するとみられています。
大手旅行予約サイト「シートリップ」によりますと、先月(1月)中旬の時点で、春節の大型連休中の海外旅行の予約数は、去年の同じ時期の10倍以上に増えているということです。
人気の行き先は、タイやマレーシアなど東南アジアのほか、日本やオーストラリアなどとしています。
ただ、北京の日本大使館によりますと、香港を除く中国本土の在外公館で先月(1月)発給された日本を訪れるためのビザの件数は、新型コロナの感染拡大前の2019年の同じ時期と比べて、6割程度にとどまっているということです。
その理由について、日本大使館は「日本との間の航空機の便数が新型コロナの感染拡大前の水準まで回復していないことが背景にあるのではないか」としています。

【専門家“中国人観光客 回復に時間”】
関西経済に詳しい、日本総研の若林厚仁 主任研究員はことしの春節について、「中国経済の減速により、国民の財布のひもがかたくなっている。春節なので旅行しないわけではないが、海外旅行よりも安い、近い、かつ短期の中国国内の旅行にシフトしているような状況になっている」と指摘しています。
そのうえで、若林氏は今後の中国人観光客の動向については、「今までのように団体旅行で押し寄せて、いわゆる『爆買い』と言われるようなコロナ禍の前のような消費は期待できないと思う。観光客の数は緩やかに元の水準に戻っていくとみているが、回復には少なくとも2年ないし3年はかかるのではないか」と話していました。