奈良 下北山村 国道土砂崩れから1か月 通行止め続く

先月(12月)23日に奈良県下北山村の国道で車2台が巻き込まれる土砂崩れが起きてから23日で1か月です。
国道は今も通行止めのままで、片側交互通行ができるようになるのは春以降になる見通しだということです。

先月23日の夜、下北山村の国道169号線で国道沿いの斜面の土砂が幅およそ30メートルにわたって崩れ、車2台が巻き込まれて1人が死亡、1人が大けがをしました。
崩れ落ちた土砂はおよそ4000立方メートルにのぼり、現場では1か月たった今も通行止めが続いています。
道路を管理する県は専門家らによる委員会を設置し、原因の究明や復旧工事の方法などを検討していて、現在、地質を調べるためのボーリング調査が行われているということです。
県は来月(2月)の委員会で応急対策の方針を決めたいとしていますが、現場の安全を確保しながら工事を進めるには時間がかかり、片側交互通行ができるようになるのは春以降になる見通しだということです。
山下知事は今月17日の会見で「またこういう事態が起きないとも限らないので、きちんと復旧工事をやってからでないと通行止めの解除はできないと思っている。地域の皆さんには不便をかけることになるが、ご理解いただきたい」と話しています。

【国道通行止め う回状況は】
土砂崩れが起きた現場付近は、奈良県内を南北に貫く国道169号線以外の道路はありません。
現場は村の集落の北側にあり村の南側にある三重県の熊野市や尾鷲市、和歌山県の新宮市などに行くことはできます。
一方で、村より北側の奈良県内の都市部や京阪神方面に行くためには、隣の十津川村を経由して国道168号線を使ったり、三重県を通る国道42号線や伊勢自動車道を使ったりして大きくう回しなければならず、通常より時間がかかる状況になっています。

【下北山村 住民の生活や観光に影響】
土砂崩れが起きた国道169号線は、奈良県南部にある下北山村と県中部の市街地を直接結ぶ唯一の道路で、通行止めによって住民の生活や観光などに影響が出ています。
下北山村で唯一の診療所の所長を務める田口浩之 医師(32)によりますと、村では検査や治療のために土砂崩れが起きた国道を通って県中部の大淀町や橿原市などにある病院に定期的に通っている患者が少なくないということです。
国道の通行止めの影響で、県中部に向かうには三重県や和歌山県まで大きく遠回りせざるを得ないため通院先を三重や和歌山の病院に切り替える人も出ているといいます。
橿原市にある整形外科に通院している男性は、「遠回りして行くか通行止めが解除されるのを待つかどうしようかと思っています」と話していました。
また、村で運送会社を営む竹株武司さん(84)は、産業廃棄物の運搬などを請け負っていますが、遠回りによって輸送にかかる時間が1.5倍ほどに増えたほか、燃料費も上がり、大きな負担がかかっていると話しています。
竹株さんは「う回しなければならず、しかもそれが往復なので大変です。生活はもちろん、仕事でも大打撃を受けており、できるだけ早く通れるようにしてほしいです」と話していました。
さらに村の主要な産業の1つ、観光にも影響が出ています。
村にはサッカーグラウンドや宿泊施設などを備えたスポーツ公園があり、県内のJリーグチームのキャンプも行われるなど、年間10万人ほどの利用があります。
公園にはキャンプ場や温泉もあり冬場もにぎわっていたということですが、予約のキャンセルが相次ぎ、今月(1月)15日の時点で利用者は去年の半分ほどに減ってしまったということです。
下北山スポーツ公園の勝平芳明 総支配人(68)は「国道169号を通って京阪神方面から来る客がほとんどいなくなってしまい死活問題です。早く安心して来てもらえるような道にしてもらいたい」と話し、通行止めの解除を心待ちにしていました。