財務省文書改ざん 2審も元局長の賠償責任認めず 大阪高裁

財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ自殺した近畿財務局の職員の妻が、財務省の佐川元理財局長に賠償を求めた裁判で、19日、大阪高等裁判所は、1審に続いて、元局長個人の賠償責任を認めず訴えを退けました。

森友学園に関する財務省の決裁文書の改ざんに関与させられ、5年前に自殺した近畿財務局の職員、赤木俊夫さん(当時54)の妻の雅子さんは、改ざんの方向性を決定づけたとされる財務省の佐川宣寿 元理財局長に賠償を求める訴えを起こし、1審の大阪地方裁判所は去年11月、訴えを退け、雅子さんが控訴していました。
19日の判決で、大阪高等裁判所の黒野功久裁判長は、「職務中の行為に対して公務員個人が責任を負うかどうかについて、最高裁判所が過去に示した『民事上の損害賠償責任を個人は負わない』という解釈を否定すべきとはいえず、元局長から誠意を尽くした説明や謝罪があってしかるべきと考えられるが、法的義務を課すことは困難だ」と述べ、1審に続いて、佐川元局長個人の賠償責任を認めず、訴えを退けました。
裁判の中で、雅子さんは、指示の具体的な内容を明らかにするため、元局長の尋問を求めていましたが、1審と2審ともに認めない判断を示し、実現しませんでした。
一方、雅子さんは国にも賠償を求め、国側は当初、争う姿勢を示していましたが、裁判の途中で、「財務省理財局からの改ざん指示への対応を含め、業務に忙殺され、過剰な負荷が継続していた」などとして賠償責任を認め国との裁判は終結しています。

【赤木さんの妻“諦めない”】
赤木俊夫さんの妻で原告の赤木雅子さんは、夫の写真と夫が使っていた手帳をかばんに入れて判決を迎えました。
判決の後、雅子さんは、「『一緒に行こうか』と言って写真を持ってきたので、一緒に聞いていてくれたと思います。この判決を想像していたが、実際に棄却と聞くと、また、国に捨てられたという気持ちになりました」と話していました。
そのうえで、「公務員個人の責任は問わないということを根本的に変えるために今後も諦めません。夫と同じような立場の人が出てきたときにどこに助けを求めたらいいのか、裁判所がもう少し人間的な心を持って判断してほしい」と話していました。

【原告側の弁護士“無責任な言いぶり”】
判決後に会見した原告の代理人の生越照幸 弁護士は、「最高裁の判例の枠組みを踏襲し、公務員の個人責任を認めないという判断をした。判決の中で、公務員の違法行為は懲戒処分などで制裁することが想定されているとあるが、その制度が機能不全に陥っているから民事訴訟を行っているのであって無責任な言いぶりに感じる」などと批判し、今後、最高裁判所に上告する方針を示しました。