万博運営費 4割余増の1160億円に 博覧会協会が計画案

大阪・関西万博の実施主体の博覧会協会は、14日の理事会で運営費が当初の想定から4割余り多い1160億円になるという計画案を示しました。

博覧会協会は万博の運営費の精査を続けてきましたが、14日、東京都内で開いた理事会でその結果を報告しました。
協会がまとめた計画案では、人件費や会場外での雑踏対策の費用が膨らんだことなどから、当初の想定の809億円から4割余り多い1160億円に増えるとしています。
そのうえで、協会は▼運営費のおよそ8割にあたる969億円を入場券の販売収入でまかない、▼残る191億円については、公式キャラクター、「ミャクミャク」の関連グッズの販売収入や、企業からの賃料収入などを見込んでいるということです。
また、去年、安倍元総理大臣が銃撃された事件などを受けて、運営費とは別に、会場内の警備費として国が199億円を負担する方針です。
博覧会協会のトップを務める経団連の十倉会長は、理事会のあとの記者会見で「今の事態を予測できず申し訳ないが、万博の具体的な議論を始めた5〜6年前に人手不足がここまで激しくなることは予想しにくい面があった。知恵と工夫で抑えた結果だ」と述べました。
そのうえで、記者から赤字となった場合の対応を問われたのに対し、十倉会長は「入場券の販売数をもっと確保できないかも含め、知恵を出して、赤字にならないよう工夫して運営していく」と述べました。

【運営費計画案の内訳は】
博覧会協会が示した運営費の計画案では、▼会場の運営や安全対策などの「会場管理費」が560億円、▼催事の費用や参加国の関係者の宿泊費などの「事業運営費」が155億円、▼来場者の輸送のための「輸送管理費」が143億円などとなっています。
当初の809億円から351億円増額する見込みですが、博覧会協会は、その内訳について、▽人件費の上昇などによるものが220億円、▽会場外での雑踏対策の経費などが131億円だとしています。
これに対し、▽入場券の販売収入が当初の想定よりも267億円、▽公式キャラクター、「ミャクミャク」の関連グッズの販売収入や、会場に出店した企業からの賃料収入などの「その他収入」が当初より84億円、それぞれ多く見込めるとして、経費の増加分をまかなえるとしています。

【運営費 当初の想定は】
大阪・関西万博の実施主体である博覧会協会が2020年にまとめた「基本計画」では、運営費を809億円と見込んでいました。
この中には、▽来場者の案内や救急・救護にあたるスタッフ、それに、▽来場者を会場まで運ぶシャトルバスの運転手の人件費などが含まれていました。
また、国内外の要人や会場の警備に必要な費用などもこの中に含まれていました。
しかし、人件費が上昇していることに加え、警備についても▼去年7月、安倍元総理大臣が銃撃された事件や、▼去年10月、韓国・ソウルのイテウォンで起きた群集事故などを受けて、必要な費用が大幅に増えることになり、精査を続けていました。
これについて、協会幹部の1人は「809億円としていた運営費は万博で何をするか決まっていない時の数字で、これぐらいかかるという『イメージ』のものですごく縛られる数字ではない。いろいろなことが具体的に決まってきて、現実的な数字に基づいてシミュレーションしている」と述べていました。
協会は、運営費のおよそ8割を引き続き入場券の販売収入でまかなう方針です。
ただ、2000年に開かれたドイツ・ハノーバー万博では、入場者が想定より伸びず、およそ1200億円の赤字となり、最終的にドイツ政府と地元の州が負担した例もあります。
このため、博覧会協会は今後、いかに万博への機運を高めて入場券の販売につなげていけるかが課題になります。

【大阪知事“実務的チェックを”】
大阪府の吉村知事は、記者団に対し、大阪・関西万博の運営費が当初の想定から4割余り多い1160億円になるという計画案が示されたことについて、「人件費の上昇や安全計画の強化という中身で、説明や趣旨は、よく分かるが、実務的に一つ一つきちんとチェックしていく必要がある」と述べました。
一方、赤字となった場合の対応を問われたのに対し、「国主催の事業で、国が『赤字を補填(ほてん)しない』と言っている運営費を、大阪府・市が負担するのは明らかにおかしいので、そういったことはしない」と述べました。

【大阪市長 増額やむをえないとの考え】
万博の運営費が当初の想定の809億円から1160億円に増えるという計画案が示されたことについて、大阪市の横山市長は記者団に対し、「言い訳できないところはあると思うが、この間いろいろな事件が起きて警備費などに影響が出たことについて、『3年前に予測しろ』と言うのはさすがに酷な話で、社会情勢を見ながら適切に対応することは必要だ」と述べ、増額はやむをえないという考えを示しました。
また、赤字となった場合の対応については、「税の投与をしないのが議論の前提だ」と述べたうえで、「いま集中すべきことは万が一にも赤字にならないようにすることだ。プラスを生み出すことに全力で集中したい」などと述べ、来場者の増加に向けて、万博の機運醸成にさらに注力する考えを示しました。

【国は「法的弁済責任なし」】
政府は、万博の運営で赤字が出た場合の対応について、ことし10月、実施主体は博覧会協会で、国が法的弁済責任を負うものではなく、赤字を補てんすることはないという考えを示していました。
(※10月27日衆議院予算委員会/立民・米山隆一議員への答弁)

【前売券 2週間で約13万枚販売】
大阪・関西万博の前売券の販売状況について博覧会協会は、13日までの2週間で12万8000枚余りが売れたことを明らかにしました。
このうち、3分の2にあたる8万6000枚余りが、来年10月6日までに買えば開幕後に買うよりも1500円割安で購入できる「超早割一日券」だということです。
博覧会協会の石毛博行 事務総長は「開幕が近づくにつれてパビリオンの内容も具体化されてくるので関心が高まり販売実績が伸びていくことを想定している」と述べました。