びわ湖の水位 例年に比べ大幅に低下 滋賀知事“水を大切に”

雨が少ない影響で、びわ湖の水位が例年に比べて大幅に低くなっていることから滋賀県が調査した結果、一部の港で船の乗り降りに影響が出ていることがわかりました。
滋賀県の三日月知事は、引き続き状況を注視するとともに水を大切に使うよう呼びかけたいとしています。

ことしの夏以降、雨が少ない影響で、びわ湖の水位が下がり続けていて5日午前6時の時点では、基準から69センチ低くなり、例年のこの時期の平均を30センチ下回っています。
こうした状況を受けて、滋賀県は先月(11月)27日に、2年ぶりとなる「水位低下連絡調整会議」を設置し、漁業や観光などへの影響を調べています。
滋賀県の三日月知事は、5日の定例会見で調査結果を公表しました。
それによりますと▼一部の港で岸壁と船との高低差が大きくなり、人の乗り降りや荷物の積み降ろしに影響が出ているほか、▼漁船のスクリューが湖底の石などに当たって破損する被害が出ているということです。
これについて三日月知事は、「現時点では県民生活に大きな影響は出ていないが、引き続き状況を注視したい。『水を大切に使ってください』という発信を繰り返しやっていきたい」と話していました。

【長浜「奥の洲」が陸続きに】
滋賀県長浜市では、びわ湖の水位が下がって、沖合にある「奥の洲」と呼ばれる小島のような場所まで陸続きになる珍しい現象が起きています。
長浜市湖北町のびわ湖の沖合、およそ200メートルには「奥の洲」と呼ばれる小島のような州がありますが水位が低下した影響で現在は湖岸と陸続きになっています。
近くにある長浜市の湖北野鳥センターによりますと、「奥の洲」は、ふだんはコハクチョウやヒシクイなど野鳥のすみかになっていて、びわ湖の水位が50センチほど低下すると湖岸との間に幅数メートルの道が現れるということです。
4日、NHKが上空からヘリコプターで撮影した際は、何人もの人がこの珍しい道を歩いていました。
また、同じ長浜市にある長浜城跡近くの湖岸では、ふだんは水面下にある「太閤井戸」と呼ばれる井戸の跡地まで歩いて行けるようになっています。
豊臣秀吉が築城した長浜城で使われていたとされる「太閤井戸」は、昭和14年(1939年)にびわ湖の水位が低下した際に見つかったもので、ふだんは水面下に沈んでいるため、その存在を示す高さ2メートルほどの石碑が建てられています。
長浜城跡にある豊公園管理事務所の山岡信夫さんによりますと、ふだんは石碑の土台部分まで水につかっていますが、水位の低下に伴って歩いて近づくことができるようになり、石碑の後ろ側に回り込むと、「昭和十四年」などといった文字も確認できます。
山岡さんは、「歩いて行けるようになり、今は撮影スポットになっています。少し困っているのは井戸の周りにごみが流れ着くことですね」と話していました。
このほか、4日、NHKが上空からヘリコプターから撮影した滋賀県高島市にある白鬚神社は、湖の中に浮かぶように建つ鳥居で有名ですが、水位の低下に伴ってふだんは隠れている鳥居の柱の下の部分が見えるようになっています。
また、びわ湖の東西を結ぶ琵琶湖大橋の橋脚もふだんは水の下に隠れている部分が見える状態になっています。

【大津 カヤック教室にも影響】
びわ湖の水位が低下したことでカヤックなどの水上スポーツが体験できる大津市の施設では、内容を一部変更するなどの影響が出ています。
大津市雄琴にある水上スポーツの体験学習施設では、カヤックなどの教室を開いています。
ところが、びわ湖の水位が下がったことで湖面がこれまでより10メートルほど遠くなりました。
もともとの水際は、水深があったためカヤックがこぎ出しやすかったということですが、いまは水深が浅い場所からこぎ出すことを余儀なくされています。
5日も市内の中学生2人が訪れていましたが、講師は最初は深くこがないよう指示していました。
また、ふだん案内している湖岸のヨシの茂みに近づくことが難しくなっていて、ルートも変更しているということです。
体験学習施設の中岡靖雄マネージャーは、「水位低下は困ったことですが、ふだんは見えない湖底のゴミが見えるようになり、環境問題に気づくきっかけにもなるかなと思っています」と話していました。

【大津 坂本城跡の石垣の石が出現】
びわ湖の水位が低下したことで、大津市の湖岸ではふだんは水面下にあって見えない城跡の石垣の石が姿を現しました。
現在の大津市下阪本にあった坂本城は、明智光秀が築いた城で、びわ湖の底には石垣に使われていたとみられる石が沈んでいます。
この石は、2年前(2021年)の渇水の際にも姿を現しましたが、先月(11月)中旬から再び見られるようになったということです。
現地には、石を見ようと連日、多くの人が訪れていて、大津市は看板を設置して、石に触れないよう注意を呼びかけています。
滋賀県草津市から訪れた70代の男性は、「いつか見に来たいと思っていました」と話していました。
滋賀県文化財保護課は「文化財なのでマナーを守って眺めてほしい」と話しています。

【これまでの水位の経緯】
ことし8月に近畿地方を縦断した台風7号のあと、びわ湖の水位は基準に対してプラスマイナス0となっていました。
しかしその後は、まとまった雨がなく、9月と10月をあわせた降水量は、彦根市で139ミリと平年の半分以下となったほか、大津市では216ミリと平年の3分の2程度となりました。
こうしたことから、びわ湖の水位は徐々に下がり始め、▼9月下旬にはマイナス30センチ程度でしたが、▼10月下旬にはマイナス50センチ、▼11月下旬にはマイナス65センチまで下がりました。
そして、5日午前6時の時点では、マイナス69センチとなっています。
びわ湖の南側にある瀬田川洗堰(せたがわあらいぜき)で、びわ湖から流れ出る水を調整している国土交通省琵琶湖河川事務所では、多いときには毎秒数百トンになることもある水の量を、9月以降、毎秒15トンから25トンに抑えています。
これは、下流の大阪や京都で利用される水をまかなうために必要な最低限の量だということです。
琵琶湖河川事務所では、「関係機関と調整しながら放流量を抑え、引き続きびわ湖の水位低下の抑制に努めていきたい」としています。
滋賀県によりますと今後、▼水位がマイナス75センチまで低下した場合は、「渇水対策本部」を設置し、広く節水の呼びかけなどを行うほか、▼マイナス90センチまで低下すると国や大阪府、京都府などとともに取水制限を検討するということです。

【「水位0メートル」の高さは】
滋賀県によりますと、「びわ湖の水位」として示されている水位は、びわ湖の南側にある観測所の高さを「水位0メートル」として、湖内の5つの水位観測所の値を平均した数値で、水位1センチ分の水の量はおよそ68億リットルだということです。
びわ湖は大阪湾へ流れる川の上流にあるため、この「水位0メートル」の高さは川の下流から見ると、大阪城の天守閣までとほぼ同じ高さだということです。
また、この「水位0メートル」の高さは、明治時代に観測所が設置された際に「これ以上下がることがない」と判断された水位ではないかとも言われているということです。

【過去の水位低下で起こったこと】
びわ湖では過去の水位低下の際には市民生活への影響も出ています。
雨不足で渇水に見舞われた1994年には、水位は過去最大のマイナス1メートル23センチに達しました。
下流域では10パーセントから20パーセントの取水制限が行われ、高台にある住宅などで水が出にくくなったり、学校のプールが使えなくなったりするなど、市民生活にも影響が出ました。
水位がマイナス75センチまで低下した場合は県が「渇水対策本部」を設置し、さらなる節水を呼びかけることになります。
2021年以来、2年ぶりの低水準が続くことが予想されることから、今後も状況を見守る必要がありそうです。