免許持たず高級酒を繰り返し転売か 酒税法違反で行政処分

酒の販売に必要な免許を持たずに卸売業者から購入した高級ウイスキーなど1500本を繰り返し転売したとして、大阪国税局が20代の男性を酒税法違反で行政処分していたことが関係者への取材でわかりました。
酒を無免許で転売するケースはあとを絶たず、国税局は継続した転売は違反になる可能性があるとして注意を呼びかけています。

関係者によりますと、20代の無職の男性は、3年前、大阪市内の卸売業者から高級ウイスキー「マッカラン」など1500本、2500万円相当を購入し、買い取り業者に繰り返し転売していたということです。
飲食店に酒を卸す業者を装って希少性の高いウイスキーを通常の価格で購入し、買い取り業者に持ち込んだ際に購入価格よりも高く売って利ざやを稼いでいたとみられています。
継続して酒を売る場合、目的や販売先にかかわらず、販売業としての免許を取得する必要があり、違反した場合は、1年以下の懲役、または50万円以下の罰金が科されるほか、販売で得た利益を申告していない場合は、追徴課税されます。
今回のケースでは、継続的に大量の酒を業者に持ち込み利益を得ていたため、大阪国税局は無免許での販売と判断し酒税法に違反したとして、罰金相当額の納付を通告しました。
関係者によりますと、転売で得た金は借金の返済や遊興費にあてていたということです。
一方、家庭で不要になった酒を買い取り業者やフリマサイトで売るなど、継続的な販売に該当しない場合は免許は必要ないとされています。
大阪国税局の松代孝廣 課税第二部長は「取締りを強化しているが、酒の無免許販売はあとを絶たない。例えば、お歳暮で送られた酒を1本や2本、処分することは違反にはならないが、継続して行うと免許が必要になるので、注意してほしい」と話していました。

【「宅飲み」増など背景に転売相次ぐ】
関係者によりますと、10年ほど前から複数のインターネットのオークションサイトで、販売数量が少なく人気を集めていた焼酎や日本酒などの転売が目立つようになったということです。
最近では、コロナ禍で家で酒を楽しむ「宅飲み」が増えたことなどを背景に新商品のビールの高額な転売が相次ぎ、人気の酒をフリマアプリなどで転売して利益を得る行為はあとを絶ちません。
国税庁のまとめによりますと、令和3年度までの10年間に無免許で酒の販売を繰り返し酒税法に違反したとして全国で303件の行政処分を行い、あわせて4300万円余りの罰金相当額を通告したということです。

【酒造会社は対応に苦慮】
醸造する日本酒の転売が相次いでいる酒造会社からは「規制が追いついていないのではないか」という声が上がっています。
山口県岩国市の酒造会社は、国内外で人気が高い日本酒「獺祭(だっさい)」を醸造し、契約を交わしている全国およそ700の百貨店や酒店などで販売しています。
会社によりますと、転売は10年ほど前から目立ち始め、この数年は、フリマアプリやネットオークションの広がりで希望の小売価格の2倍から3倍に高騰している商品もあるということです。
会社では、品質を落とさないよう冷蔵庫に保管し、醸造から1か月以内の消費を推奨していますが、転売されているものの中には、2年経過しているものもありました。
どの店で販売したものかを示す5桁の数字を印字したラベルを貼っていますが、転売された酒の中には数字が消されたものも確認されたということです。
飲食店や結婚式を装ってさまざまな銘柄の酒が大量に購入されたとみられるものもあり、いずれも転売目的だったとみています。
こうした商品を購入した客から「品質が落ちている」などと苦情が寄せられることもあり、対応に頭を悩ませています。
旭酒造の桜井一宏社長は、「転売は、免許の有無の問題だけでなく、商品自体がおいしくないという評価につながる。転売が身近になり広がっているなかで、規制が追いついていないと感じる。お酒を楽しんでほしいという私たちの思いを妨げる行為だと思う」と話していました。