万博まで500日 会場やパビリオン建設 来場者輸送の課題は

大阪・関西万博の開幕まで残り500日となるなか、「準備」はどこまで進んでいるのでしょうか。
今回注目するのが「会場整備」と「来場者の輸送」です。

【会場整備の現状は】
大阪・関西万博の会場となる夢洲では万博のシンボルとされる大屋根の工事が進められているほか、9月以降、パビリオンの着工も相次いでいます。
万博会場の広さは約155ヘクタール。
1970年の大阪万博の半分程度の比較的コンパクトな会場で、ことし4月に起工式が行われ工事が本格的に始まりました。
現時点で目を引くのは完成すれば世界最大級の木造建築として建設されている円周およそ2キロの大屋根。
万博の理念である「多様でありながら、ひとつ」を表現する会場のシンボルで、これまでにリングのおよそ3分の1で工事が進められています。
また、会場の中心に位置する「静けさの森」の予定地には土が盛られていて、12月上旬から植樹が始まる予定です。
「いのち」をテーマに8人のプロデューサーが作るパビリオンはこれまでに3つが会場内で着工しました。
ただ、目立った建物はまだありません。
海外パビリオンは協会が建設した建物に参加国が1か国ずつ入るタイプBや、複数の国で入るタイプCはすでに着工が始まっています。
一方で、自前で建設するタイプAと呼ばれる方式で参加予定のおよそ50か国については建設会社が決まったのが30か国程度にとどまっています。
タイプAはまだ着工した国はなく、建設予定地はさら地のままとなっています。
タイプA以外の工事の進捗(しんちょく)について博覧会協会は「順調」としていますが、建設現場にはまだ、電気や下水が通っていないため建設会社が自家発電の電力機や仮設トイレを持ち込んで作業を進めているほか、今後、工事がピークを迎えたときの道路の渋滞を懸念する声も関係者からは出ています。
会場の整備の3分の1の工区を担当する企業体の責任者を務める大林組の内林隆文さんは、「これまでの工事は予定どおり推移しているが、全体のスケジュールは非常に厳しく今後施工していく会社もたくさんある。動線の確保など全体としてどう進めていくかがいちばん難しいと思う」と話しています。

【参加国の現状は】
大阪・関西万博には159の国と地域が参加する予定です。
出展のしかたはもともと3種類あり、▼参加国が独自のデザインをもとに自前で建設するのが「タイプA」と呼ばれるパビリオンです。
そして、▼実施主体の博覧会協会が準備した建物を使うのが「タイプB」、▼協会が準備した建物に複数の国で入るのが「タイプC」です。
このうち、「タイプA」のパビリオンは建設の遅れが表面化しています。
およそ50か国がこの方法で出展する計画ですがいまのところ、着工した国はありません。
遅れの理由としては、▼資材や人件費の高騰によるコストの上昇や、▼デザインの複雑さなどのため、建設を請け負う建設会社が見つかりにくいことがあります。
現状では「タイプA」のおよそ50か国のうち、建設会社が決まっているのは30か国にとどまっています。
建設を加速するため、博覧会協会は参加国に代わって協会が組み立て式の建物を建て、費用を参加国が負担する「タイプX」と呼ばれる方式を新たに各国に提案しました。
これまでにアンゴラとブラジルが、タイプAからタイプXに変更しました。
こうしたなかで11月にかけて、タイプの変更や撤退の動きがありナイジェリアとスロベニアは、タイプAからタイプCに変更したほか、メキシコとエストニア、そしてロシアは万博への参加自体を取りやめました。
メキシコとエストニアは、国内の財政事情などを理由にしているほか、ロシアは、ウクライナ侵攻をめぐり日本や欧米の姿勢に反発した可能性が指摘されています。
一方で、デンマークやフィンランド、チリやカメルーンなど9か国から新たに参加の表明があり、現時点で参加する国と地域は、あわせて159となっています。

【バス運転手 少なくとも100人不足】
開幕まで500日の節目を迎えるなか、深刻な課題として浮上しているのが、来場者の会場へのアクセス手段の確保です。
博覧会協会は開催期間中、2820万人が来場し、ピーク時には1日に最大で22万7000人が訪れると想定しています。
ただ、会場がある夢洲は人工の島で、渡ることができるルートは、▼開幕に向けて延伸され、会場近くに駅が設けられる大阪メトロ中央線と、▼舞洲や咲洲と橋やトンネルで結ぶあわせて3つのルートに限られています。
主な輸送手段は、▼大阪メトロ中央線(12万4000人/日最大)、▼駅シャトルバスや空港などからの直行バス(3万5000人/日最大)、▼団体バス・タクシーや会場周辺からのパークアンドライドのバス(6万8000人/日最大)の3つが想定されています。
このうち、大阪市内を中心に10の主要な駅から出発する駅シャトルバスでは、会場から直線距離で3.5キロほど離れた場所にあるJR桜島駅と会場を結ぶルートが主力となる予定です。
博覧会協会は、このルートで1日に最大290便を運行し、1万6000人を運ぶ計画をたてていて、府内のバス会社と連携して70台のEV=電気自動車のバスの確保を進めていますが、運転手の確保は難航しています。
博覧会協会によりますと、府内のバス会社は、ほかのルートのシャトルバスや通常路線の運行などで手いっぱいとなっていて、運行に必要な180人のうち、現時点では、少なくとも100人足りず、さらに不足する可能性もあるということです。

【バス運転手確保へ模索中】
博覧会協会は、主要な駅と会場を結ぶシャトルバスの運転手の確保を「喫緊の課題」と位置づけて対策に乗り出しています。
JR桜島駅と会場を結ぶルートで、少なくとも100人の運転手が不足している問題を受けて、11月21日に大阪市内で開かれた運転手の確保に向けた説明会には、全国の貸し切りバス会社や旅行会社などおよそ50社が参加しました。
大阪府内のバス会社が、ほかのルートのシャトルバスや通常路線の運行で手いっぱいとなっていることなどから、博覧会協会としては、▼ツアー旅行などを専門に扱う貸し切りバス会社や、▼そうした会社とふだんから取り引きのある旅行会社に的を絞って、広く全国から協力してくれる運転手を掘り起こすのがねらいです。
ただ、路線バスの廃止が全国で相次ぐなど、バス運転手の不足が社会的な課題となっている背景も踏まえ、説明会に出席した旅行会社の担当者は簡単な話ではないと感じています。
大阪・吹田市の旅行会社、「ツアーズジャパン」は、主に大学生の合宿などのツアー旅行を手がけ、10社以上の貸し切りバス会社と取り引きがありますが、運転手不足に頭を悩ませているところが多いと感じているといいます。
この旅行会社では、ことしの売り上げが新型コロナの影響で大きく落ち込んだおととし(令和3年)に比べ、すでに7倍以上に回復しているということで、今後も国内旅行の需要や外国人旅行客の増加が見込まれるなか、さらなる運転手の確保は簡単なことではないといいます。
「ツアーズジャパン」の北野晶久 社長は「今までは簡単に手配できたが、今年はちょっと違うなと感じていた。いくらバス会社とつきあいがあると言っても運転手不足は切実な問題で、簡単な話ではないと思う。ただ、浪花節の血が騒いでいるところもあり、できるかぎりの協力はしたい」と話していました。
博覧会協会は、旅行会社のネットワークを生かして、全国各地のバス会社に協力を呼びかけるとともに、運転手を派遣してくれたバス会社への営業補償などについても詳細を検討していくことにしています。
博覧会協会の淡中泰雄 交通部長は「会場に来るまでに疲れてしまったり、楽しい思い出を作ったのに帰りが大変で、大変だったという思いで終わってしまうのは非常に悲しいことだと思う。輸送に携わるチームとして、万博に来て良かったと思うお客さんが1人でも増えるように、しっかり準備していきたい」と話しています。