万博会場シンボル大屋根の工事を報道公開 リング型木造建築物

再来年の大阪・関西万博で、会場のシンボルとして設けられるリング型の木造建築物「大屋根」の工事の様子が、27日、報道陣向けに公開されました。

大阪・関西万博のリング型の建物「大屋根」は、▽1周およそ2キロ、▽高さは12メートルから20メートルの完成すれば世界最大級となる木造建築物で、会場コンセプトの「多様でありながら、ひとつ」を表現するシンボルとして建設されています。
大屋根の建設の予定費は344億円で、3つの企業体に分割して工事が進められていて、27日はその1つ、大林組などでつくる企業体の工事の様子が報道陣に公開されました。
この企業体は柱と「はり」をつなぐ接合部分に、「貫工法(ぬきこうほう)」と呼ばれる日本の神社仏閣などの建築に使用されてきた伝統的な建築方法をベースにして、耐震性や耐久性を強化するため金属のボルトなどで補強する建設方法で工事を進めています。
大屋根の屋上には、幅およそ8メートルの歩道が設けられ、来場者が会場全体を眺めながら散策できるようになるということです。
建設会社などによりますと、大屋根は全体のおよそ3分の1で組み立てが進み、来年の秋ごろにリングとしてつながる予定だということで、これまでのところ工事は順調に進んでいるということです。
この工事の責任者を務める大林組の内林隆文さんは「リングはお客さんを招き入れる建物として重要な役割を果たすと思う。工期に間に合わせてみなさんに喜んでもらえるよう頑張っているので期待してほしい」と話していました。

【大屋根とは さまざまな意見】
会場のシンボルとして建設が進む「大屋根=リング」は、1周およそ2キロ、高さは12メートルから20メートルで、完成すれば、世界最大級の木造建築物となります。
実施主体の博覧会協会は「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表すものだとしています。
このリングは屋上を歩けるようになっていて、博覧会協会は雨風や夏の日ざしを遮る空間としても利用できるほか、大阪の中心部や瀬戸内海などを展望できるとしています。
ただ、リングに対しては会場建設費の増額をきっかけに「費用がかかりすぎだ」という声も出ています。
SNSでは「お金はかかるが、それ以上の価値を見せてくれることを期待している」などという意見の一方、「半年で撤去するリングに使うにはとんでもない金額だ」とか、「税金のむだづかいではないか」といった意見が多く投稿されています。
万博の会場は、閉幕後にさら地にして大阪市へ返還することになっているため、博覧会協会は「大屋根」も解体したあと再利用する方針だとしていますが、こうした声を受けて、関係者からは移設なども選択肢になりうるという発言が相次いでいます。
博覧会協会の副会長を務める大阪府の吉村知事は、今月24日、記者団に対し「万博が始まって高く評価され、別の場所に移設をして残していきたいという意見も出るかも分からないので、そういった可能性についても考えていかなければならない」と述べています。
同じく協会の副会長を務める大阪市の横山市長は「例えば学校現場に配るとか有償で渡して新しい公共建築物として生まれ変わっていくというのもあると思う。いろいろな選択肢が検討されるべきだ」と述べていました。
博覧会協会の石毛博行 事務総長は今月24日の記者会見で「参加国がつながり上からは世界を見渡せる万博会場ではリングは不可欠な象徴だと思っている」と述べたうえで、「持続可能性を掲げる万博の重要な理念にかかわるので、広く関係者の意見を聞きながら閉幕後の利用方法を決めていくものだと思っている」と述べました。

【前売券30日から販売 課題も】
大阪・関西万博の前売券の販売は開幕まで500日となる、11月30日から始まります。
会期中に販売される一日券は大人で7500円ですが、会期中いつでも使える「一日券」の前売券は、▼来年10月7日以降に買えば大人で6700円、▼来年10月6日までに買えば、6000円などと割安に設定されています。
また、過去の万博で会期の前半の入場者が少なかった傾向を踏まえて、▼開幕からおよそ3か月後まで使える「前期券」は5000円、▼開幕から2週間後まで使える「開幕券」は4000円に設定されています。
入場券の売り上げは万博の運営費に充てられることになっています。
基本計画では運営にかかる809億円のうち、702億円を入場券の販売収入でまかなう予定でしたが、実施主体の博覧会協会は運営費の精査を進めていて、今後、こうした金額が変更になる可能性もあります。
前売券については、経済団体が会員の企業などに対して購入を呼びかけていて、関西経済連合会によりますと、関西に本社などがある大企業を中心にすでに300万枚の購入が見込まれているとしています。
万博に対して全国的な盛り上がりに欠けると指摘される中、今後、どのように関心を高めていくかが協会側にとっての課題となりそうです。

【経団連 十倉会長“意義大きい”】
今月末に、大阪・関西万博の開催まで500日となる中、博覧会協会のトップを務める経団連の十倉会長は、27日に北陸地方で行われた懇談会で「命をテーマにした国際万博でその意義は大きい」と述べ、全国的な機運醸成に向けた協力を呼びかけました。
懇談会は27日に金沢市内で行われ、経団連の十倉会長など幹部や北陸地方を代表する企業の経営者らが出席しました。
十倉会長は大阪・関西万博の実施主体の博覧会協会でトップを務めていて、懇談会では、今月30日に万博開催まで500日となり、前売券の販売が始まることを説明しました。
そのうえで、「万博は大阪・関西にとどまらない国家イベントだ。新型コロナや世界中の戦争・紛争で命の大切さを痛感したが、ポストコロナで初めて開かれる、命をテーマにした国際万博でその意義は大きい」と述べ、全国的な機運醸成に向けた協力を呼びかけました。
また、懇談会では万博の開催期間に日本を訪れる外国人旅行者に関西だけでなく、北陸を含めたほかの地域にも行ってもらい、地域経済の活性化につなげることが重要だという意見も出されました。

【十倉会長“リングの有効利用も”】
経団連の十倉会長は、北陸経済界との懇談後の記者会見で、大阪・関西万博の会場のシンボルとしてつくられるリング型の木造建築物「大屋根」について、「前回の万博の『太陽の塔』と同じように非常にシンボリックな意味合いがある。万博には多くの国に参加してもらうがいま世界では分断の危機がいっそう高まっているので、世界はつながらないといけないということが込められていると聞いている。ぜひ完成に向けて工事を進めていきたい」と述べました。
また、閉幕後の移設や再利用については、「『太陽の塔』のような形ではないので難しい面はあるが、せっかくの木造でつくった巨大リングで、いろんな意義を見いだすことができると思う」と述べ、有効利用に向けて前向きに検討すべきだという考えを示しました。