“1グラムで地球破壊”巨大なエネルギー持つ「宇宙線」発見

宇宙から降り注ぐ小さな粒子「宇宙線」のうち、計算上、わずか1グラムで地球が破壊されるほどの巨大なエネルギーを持つものを発見したと、大阪公立大学などの国際研究グループが発表しました。
観測史上2番目に高いエネルギーの宇宙線だということで、グループでは巨大な星が爆発するなどして発生した可能性があるとしています。

これは大阪公立大学の藤井俊博准教授ら日本やアメリカなど8か国が参加する国際研究グループが記者会見し発表しました。
グループは宇宙から降り注ぐ小さな粒子「宇宙線」を観測するため、2008年からアメリカ・ユタ州の砂漠地帯に設置した507台の検出装置のデータを定期的に解析してきました。
その結果、おととし5月、244エクサ電子ボルトという観測史上2番目に高いエネルギーの宇宙線を捉えたということです。
この宇宙線のエネルギーは計算上、わずか1グラムで地球が破壊されるほど巨大なものです。
宇宙線が飛んできた方向に発生源となる天体は見つかっておらず、グループでは巨大な星が爆発するなどして発生した可能性があるとしています。
グループは宇宙の謎の解明につなげる期待を込めて、この宇宙線を日本書紀などに登場する神様の名前にちなみ「アマテラス粒子」と名付けました。
藤井准教授は「地道な観測を続けようやく捉えることができた。今後も観測を続けてこの宇宙線の起源を明らかにしたい」と話していました。

【宇宙線の発生源は】
「宇宙線」は宇宙から降り注ぐ陽子などの小さな粒子で、発生源となった天体でどんな現象が起きたのかを知る手がかりとなります。
今回捉えた宇宙線の「244エクサ電子ボルト」というエネルギーは、粒子1つで40ワットの電球をおよそ1秒間点灯できる大きさで、計算上はわずか1グラムで地球が破壊されるほど巨大なものだということです。
1991年に観測され、「驚くべき粒子」という意味で「オーマイゴッド粒子」と名付けられた宇宙線の「320エクサ電子ボルト」に次ぐものでした。
こうした極めて高いエネルギーの宇宙線の発生源では巨大な星が爆発したりブラックホールからガスが噴き出したりするなど大規模な天体現象が起きた可能性があり、今後、研究が進めば未知の天体の発見につながる可能性もあると期待されています。
宇宙から降り注ぐ粒子の観測によって宇宙の成り立ちなどを探る研究は世界各国で進められていて、国内では岐阜県に「KAGRA」と「スーパーカミオカンデ」という大型の実験施設があります。
「KAGRA」は星どうしが衝突したり、ブラックホールが合体したりしたときに生じる「重力波」と呼ばれる時空のゆがみを、「スーパーカミオカンデ」は巨大な星が寿命を終えるときに放出される「ニュートリノ」という粒子をそれぞれ観測しています。
大阪公立大学などの国際研究グループはこうした他の施設の観測結果を組み合わせて解析することで、今回捉えた宇宙線の発生源の解明を進めたいとしています。

【地道なデータ解析で成果】
研究成果を公表した国際研究グループ「テレスコープアレイ実験」は日本やアメリカ、ロシアなど8か国から140人ほどの研究者が参加しています。
グループでは、アメリカ・ユタ州の砂漠地帯に滋賀県の琵琶湖とほぼ同じ広さの700平方キロメートルの範囲に507台の検出装置を設置し、15年前(2008年)から地上に降り注ぐ宇宙線の観測を続けています。
大阪公立大学の藤井准教授は6年前から500台あまりの装置が観測する膨大なデータを解析し共同研究者に配布しています。
3か月に1度、藤井准教授みずから装置のデータが保存されたコンピューターにアクセスして解析を行っていますが、装置に不具合が生じてうまく観測できなかったデータを取り除く作業に時間がかかり、1回分の解析に1週間近く費やすこともあるということです。
藤井准教授は「データを解析する作業は地道なもので、過度に期待を抱くこともなく、これが自分の仕事だと思って続けてきた。モニターのエネルギーの数値が『244』を示しているのを見たときは大変驚き、何かの間違いではないかと何度も確認したが、正しい結果だとわかると歴史的な瞬間に立ち会えた喜びを感じた。発生源で何が起きていたのかという新たな謎を突き止めたくなり、非常にわくわくした」と振り返りました。
そして、「今回のように高いエネルギーの宇宙線が地上に届くことはまれなので、今後も地道に観測と解析を継続する必要がある。ようやく捉えた宇宙線なので今後の宇宙天文学の道しるべになってほしい」と話していました。