“宝塚歌劇団調査の弁護士事務所に関連企業役員”遺族側が文書

宝塚歌劇団に所属する25歳の劇団員が死亡したことについて、経緯を調査した弁護士事務所に、歌劇団を運営する阪急電鉄に関連する企業の役員が所属しているとして、遺族側の弁護士は、歌劇団などに事実関係を確認して見解を示すよう要請する文書を送りました。

宝塚歌劇団の宙組に所属していた25歳の劇団員は、入団7年目のことし9月、兵庫県宝塚市で死亡しているのが見つかり、自殺とみられています。
遺族側は、上級生のパワハラなどが原因だと主張していましたが、歌劇団は、大阪の弁護士事務所に依頼して詳しい経緯などを調査した結果、いじめやハラスメントは確認できなかったなどとする報告書を、今月14日に公表しました。
歌劇団は、調査したのは、外部の弁護士事務所だと説明していますが、遺族側の弁護士によりますと、この事務所には歌劇団を運営する阪急電鉄に関連する企業の役員が所属しているということです。
阪急電鉄によりますと、この役員は、阪急阪神百貨店の親会社の「エイチ・ツー・オー リテイリング」で、取締役監査等委員を務めている弁護士だということですが、今回の調査には関わっていないとしています。
これについて、遺族側の弁護士は、17日、「役員が調査委員会のメンバーであったか否かにかかわらず、この問題は看過できない」として、阪急電鉄や歌劇団に対して、事実関係を確認して見解を遺族に示すよう要請する文書を送りました。
遺族の代理人弁護士は、今月14日の会見でも「調査したのは日本弁護士連合会が定めた第三者委員会ではない」などと批判していました。

【阪急電鉄“当該弁護士関与せず”】
阪急電鉄は「調査を依頼した弁護士事務所とは顧問契約はもとより、宝塚歌劇団や阪急電鉄としてもいかなる関係もありません。『エイチ・ツー・オー リテイリング』の役員にこの弁護士事務所の弁護士が入っている点については、当社としても把握はしていますが、『エイチ・ツー・オー リテイリング』は上場しており、宝塚歌劇団や阪急電鉄とは独立した企業です。かつ、この弁護士は『エイチ・ツー・オー リテイリング』の独立社外役員として独立した立場にある者です」としています。
その上で、阪急電鉄は「宝塚歌劇団はこの弁護士を外して調査することを依頼しており、弁護士事務所からも調査報告書の検討・作成にはこの弁護士は関与しておらず、弁護士事務所内でも情報遮断措置をとっていると聞いています」とコメントしています。

【専門家“不透明感ある”】
企業の外部調査に詳しい大原大学院大学の八田進二教授は「関連する企業の役員だったとしても、独立性が疑われるものは払拭(ふっしょく)しなければ歌劇団側に配慮した報告書になっていると疑われてもしかたがない。本来であれば、役員自身がそのリスクについて声を上げるべきだった。調査には担当する弁護士の独立性や専門性などが求められるが、報告書にはどういう立場で、どのような専門性があるのか書かれておらず、不透明感がある。このため、今回の問題の真相究明が十分になされていないように受け取れる」と話しています。

【宙組の東京公演 来月14日まで休演】
宝塚歌劇団は、亡くなった劇団員の女性が所属していた宙組の東京公演について、今月(11月)25日から来月(12月)14日まで休演すると、17日、ホームページ上で発表しました。
来月15日以降の予定については、来月8日に判断するとしています。
宝塚歌劇団の木場健之理事長は今月14日の記者会見で、宙組の東京公演については「出演者の心身の状況を含め、公演を安全に実施できる見込みがたったら実施したい」と話していました。
一方で、宝塚歌劇団は、開幕を延期していた兵庫県宝塚市の宝塚大劇場での雪組の公演を来月1日から上演すると発表しました。