芦屋 いじめ不登校 重大事態認定に7か月 児童転校余儀なく

兵庫県芦屋市の小学校で、いじめによる不登校の「重大事態」があったにもかかわらず、認定までに7か月かかったうえ、被害を受けた児童が転校を余儀なくされていたことが、市の教育委員会などへの取材でわかりました。
国のガイドラインでは、いじめの疑いで年間30日程度不登校となった場合、「重大事態」に認定することとしていて、専門家は速やかに認定するべきだったと指摘しています。

芦屋市教育委員会によりますと、市内の小学校に通っていた当時4年生の児童が同級生からいじめを受け、おととし(令和3年)12月から去年3月にかけて、49日間、欠席したということです。
児童の保護者によりますと、同級生から「死ね」などと携帯電話の画面一面に書かれたメールを見せられ、児童は学校に通うのが怖くなったということです。
国のいじめ防止基本方針では、いじめの疑いで年間30日程度不登校となった場合、学校が「重大事態」と認定し、学校や自治体は、速やかに調査を開始しなければならないとしています。
しかし、学校が認定したのは、児童がいじめを訴えた7か月後の去年(令和4年)7月で、児童はその後も登校できない状況が続き、転校せざるをえなくなったということです。
これについて、芦屋市教育委員会は「重大事態の認定の時期が適切だったかも含めて審議会に諮っている」とコメントしています。
教育委員会では、審議会を立ち上げて調査を進めていて、年内にも報告書をまとめたいとしています。

【被害児童の保護者は】
いじめの被害を受けた児童の保護者は、「命の危険性がないと重大事態には認定されない」と話し、自治体の対応が遅かったと訴えています。
児童は、活発で天真らんまんな性格で、学校に行くのが大好きだったといいます。
しかし、同級生からいじめを受けたあと学校に通うのが怖くなり、4年生の2学期から3学期にかけて49日間、欠席しました。
学年が変わって5年生になると学校に通えるようになりましたが、去年6月ごろに不登校のきっかけとなった同級生との接触があって急速に体調を崩したということです。
次第に体重が減るなど、児童の体調の悪化が著しくなり、去年7月にようやくいじめの「重大事態」と認定されたということです。
児童の保護者は「目つきや顔つきが変わって子どものふだんの姿がなくなっていきました。どんどん体重が減り、体がペラペラになって消えてしまいそうで、見ていてすごくしんどかったです。結局、命の危険性がないと重大事態には認定されないんだなと思いました。もっと早く認定してちゃんと対応してほしかったです」と話しています。
重大事態と認定されたあとも学校の対応が改善していないと感じ、やむなく転校したということです。
保護者は、「子どもも最初は転校したくないと言っていて『みんなと一緒に卒業したい、なんで自分が』と話していました。被害を受けたほうが、転校しないと日常を取り戻せないのは、納得できないと感じています」と話していました。

【専門家“速やかに重大事態認定すべきだった”】
芦屋市の対応について、学校現場のいじめ問題に詳しい立命館大学大学院の春日井敏之教授は、いじめの疑いがある時点で、速やかに「重大事態」と認定し、調査を始めるべきだったと指摘しています。
春日井教授は、「一定の指導をして様子を見ようという側面があったのかもしれないが、さらに欠席が増え、その結果、いじめられた側が学校に居場所がないと判断して転校したケースだと思う。重大事態と認定することには命に関わるような事態を防ぐという意味があり、第三者が調査に入るほうがいじめが止まる可能性が高い。むしろ早期に認定することで、被害児童と加害児童の両方を守っていくことにもなるのではないか」と話しています。