ミナミで放置自転車“見つけしだい撤去” 大阪市が始める

大阪市は路上に止められ、歩行者の通行の妨げなどになっている「放置自転車」を見つけしだい、すぐに撤去する取り組みを13日から、大阪・ミナミで始めました。

大阪・ミナミでは、駐輪場ではなく、路上に止められている「放置自転車」が、歩行者の通行の妨げになったり、景観を悪化させたりするなど、問題になっています。
こうしたなか大阪市は、「放置自転車」を見つけしだい、すぐにその場から運び出す「リアルタイム撤去」を13日から試験的に始めました。
13日は午前10時ごろから、大阪・中央区で市の職員などが作業にあたり、放置された自転車に警告のメッセージを貼りつけ、そのままトラックに積み込んで撤去していきました。
大阪市ではこれまで、警告から一定の時間がたっても放置されているものを撤去していましたが、所有者が一時的に動かし、撤去作業の終了後に再び路上に放置するケースが相次ぐなどしていたことから、対策の強化に乗り出したということです。
大阪市によりますと、同様の取り組みは、東京都や京都市などでも行われていますが大阪市内では初めてで、道頓堀や心斎橋などを含めたミナミエリア一帯を対象に、平日の日中に行う予定だということです。
大阪市建設局市岡工営所の利岡裕介 担当課長は「ミナミではいつなんどき、撤去されるかわからないという意識を持ってもらうことで放置自転車を減らしていきたい」と話していました。

【撤去エリアと撤去後は】
大阪市が今回、「リアルタイム撤去」の対象としたのは、ミナミの繁華街で、アメリカ村や戎橋などが含まれるエリアです。
撤去された自転車は当日中に、2キロほど離れた保管所に運ばれることになっていて、引き取るためには20日以内に保管所を訪れたうえで2500円を支払う必要があります。
大阪市によりますと、ミナミエリア周辺におよそ3700台の駐輪場を整備しているほか、民間の駐輪場の整備も進んでいるとしていて、場所によって利用開始から1時間前後は無料で使えるところもあるということです。
市は、「目的の場所や店などから少し離れて不便かもしれないが、魅力的な街づくりにご協力をお願いしたい」としています。

【街の声 地域の声は】
大阪市が試験導入を始めた「リアルタイム撤去」について、大阪・ミナミで聞きました。
3歳の娘がいる20代の女性は「大賛成です。ベビーカーを押している時に放置自転車のせいで歩道が狭くなって、自転車とぎりぎりですれ違うことがあって、すごく怖かったのでどんどん撤去してほしい」と話していました。
また20代の男性は「目的地と離れた場所に自転車を止めて歩くのがめんどくさいので、歩道に止めることがあるが、自分でも邪魔だなと思う時もあるので、いい取り組みだと思う」と話していました。
30代の女性は「取り組みとしては悪くないと思うが、駐輪場が足りないから置いてしまう人もいると思う。もう少し駐輪場を増やしてほしいという思いもある」と話していました。
13日に撤去作業が行われた周防町町会の中村芳弘会長は「この地域では、歩道に店の看板や商品がはみ出していたり、自転車が止められていたりして、歩きづらい状況になっていて困っていた。地元の住民としては歓迎する声が多いし、インバウンドで観光客が増えている現状もあり、誰もが歩きやすい街にしていきたい」と話していました。

【リアルタイム撤去を始めた背景】
「リアルタイム撤去」を試験的に始めた背景には、エリア一帯を歩行者優先の空間に再編する計画が進んでいることがあります。
今回のエリアに含まれる南海なんば駅周辺では、▼複数の場所で車両の通行が禁止されていて、▼駅北側には今月(11月)23日に歩行者天国の「なんば広場」がオープンします。
また、この広場につながる大阪のメインストリート、「御堂筋」でも歩道の拡幅工事が進んでいます。
こうした動きに加えて、このエリアには、▼新型コロナの影響で減少していた人出が戻り、▼再来年の大阪・関西万博の際には、国内外から訪れた大勢の観光客が行き交うことが見込まれています。
観光客などが快適に滞在し、地域が活性化するためにも、地元の商店街などは、「放置自転車」への対策を強化しようと、ことし4月、大阪市や地元企業などで作る団体とともにワーキンググループを立ち上げました。
そして、ミナミエリアでおよそ1500台の実態を調べたり、放置した人にヒアリングをしたりした結果、▼買い物客や繁華街の店の従業員が大半で、▼放置時間も1時間にも満たないようなケースが多いことが見えてきたということです。
こうした調査結果などを踏まえて、大阪市は従来の対策では効果が薄く、より強力な対策を実施する必要があるとして、今回「リアルタイム撤去」の試験導入を決めたということです。