京アニ裁判 妄想の影響 検察と弁護側医師 改めて異なる見解

「京都アニメーション」の放火殺人事件の裁判は、10月30日も青葉真司被告の刑事責任能力についての審理が行われ、被告の精神鑑定を行った2人の医師が、妄想が事件に与えた影響について改めて異なる見解を示しました。

青葉真司被告(45)は、2019年7月、京都市伏見区の「京都アニメーション」の第1スタジオでガソリンをまいて火をつけ、社員36人を死亡させ、32人に重軽傷を負わせたとして殺人や放火などの罪に問われています。
被告の弁護士は「精神障害により、よいことと悪いことを区別して犯行をとどまる責任能力はなかった」などとして無罪を主張しています。
これまでに行われた被告の刑事責任能力についての審理では、起訴前に検察の依頼で精神鑑定を行った医師は、「被告に妄想はあったが、犯行時の行動には影響はほとんどみられない」としたのに対し、起訴後に弁護側の請求で精神鑑定を行った医師は、「妄想が犯行につながった」などとしています。
30日、再び行われた2人の医師への証人尋問では、妄想の影響などについて改めて異なる見解が示され、検察の依頼で鑑定した医師は、「京アニに小説を盗作されたと考えたあと犯行にいたるまで、直接抗議するなど現実的な行動は起こしていない。妄想は被告の言動に著しい影響を及ぼしていない」と述べたうえで、小説が落選して小説家を断念したという現実が主に犯行に影響したとしました。
一方、弁護側の請求で鑑定した医師は、「被告は犯行以前も問題が生じると職場を退職するなど、相手と関係を絶つという解決方法をとってきた。京アニに対しては『盗作され続ける』と妄想し、関係を絶つために犯行に及んだ」と述べ、妄想が犯行に影響したとしました。
次回の裁判は11月6日に行われ、被告の責任能力について、検察の中間論告と弁護側の中間弁論が行われることになっています。