将棋 京都で11日に王座戦 藤井七冠 史上初八冠独占なるか

11日行われる将棋の八大タイトルの1つ、「王座戦」五番勝負の第4局を前に、挑戦者の藤井聡太七冠(21)とタイトルを持つ永瀬拓矢王座(31)が10日、会場となる京都市のホテルで対局室を確認する「検分」を行いました。

11日の対局で藤井七冠(21)が勝つと、史上初の八冠独占となります。
11日の「王座戦」五番勝負第4局を前に、挑戦者の藤井七冠とタイトルを持つ永瀬王座は10日、会場となる京都市のホテルを訪れ、対局室を確認する「検分」を行いました。
2人は対局で使う駒や、部屋の温度や照明の明るさなどを立会人とともに確認して11日の対局に備えました。
「王座」は藤井七冠が保持していない唯一のタイトルで、ここまで2勝1敗でタイトル獲得まであと1勝とし、11日の対局に勝つと史上初の八冠独占となります。
一方、永瀬王座は「王座戦」4連覇中で、防衛を果たすとこのタイトルでは3人目となる永世称号「名誉王座」の資格獲得がかかり、粘りを見せて最終局まで持ち込みたいところです。
2人は練習将棋を指す研究仲間としても知られ、ここまでの3局いずれも最終盤まで互いに譲らない熱戦が繰り広げられています。
第4局は11日午前9時に永瀬王座の先手で始まり、夜に勝敗が決まる見通しです。

【谷川浩司十七世名人“互いに力を出し切って”】
藤井聡太七冠が更新するまで「名人」獲得の最年少記録を持っていた谷川浩司十七世名人(61)に、今回の「王座戦」五番勝負について話を聞きました。
谷川十七世名人はここまでの対局について、「藤井さんが2勝1敗とリードしていますが、おそらく永瀬さんは王座戦に向けて半年くらい前から準備をしていて、毎局工夫をこらしています。内容的にはどちらかというと永瀬さんの方が押しているのではないか」と指摘しました。
その上で、自身が立会人を務め、藤井七冠が逆転勝ちをおさめた第3局について「最近の藤井さんにしては珍しく序盤の作戦があまりうまくいかなくて、終盤まで永瀬さんの有利・優勢で進んでいました。ただ藤井さんが終盤で『銀』をぶつける勝負手を放って、それ以降の手に対して永瀬さんが時間を使いすぎてしまった。そのために次の勝負どころで時間が切迫してしまったというのが勝負のあやとしてありました」と話していました。
谷川十七世名人によりますと、相手玉を追い詰める「寄せ」など、“終盤力”に定評のある藤井七冠ですが、ここ最近は、駒組みで万全の体制を整え満を持して攻めていく“横綱相撲”のような将棋も増えてきているということです。
こうした中で、今回の「王座戦」の挑戦者決定トーナメントや五番勝負では、最終盤での逆転勝ちも目立っているとして、「形勢が苦しくなることで、藤井さんのもう1つの強さというか、四段や五段のころの終盤力、鋭さやひらめきが際立っています。小学生の頃から詰将棋を解いて自分で作っていたことで、いろんな詰む形や詰まない形を知識として多く身につけ、実際の対局で読む時間を省略できますし、数多く読めるわけです。AIが例えば90対10という評価をしても絶対に逆転をしない90と、1手間違えたら逆の形勢になってしまう90というのもあります。特に藤井さんは、終盤でも勝負手を指して、1手間違えたら逆転してしまうようなギリギリの終盤に持ち込むことも超一流だと思います」と指摘していました。
27年前(1996年)、日本将棋連盟の羽生善治会長が当時7つあったタイトル独占を達成したときに、残された最後のタイトル、「王将」を保持していたのが谷川十七世名人でした。
谷川十七世名人は「私も30年近く前、羽生さんが七冠を目指しているときに永瀬さんと同じ立場でした。勝負の世界は長く、30年、40年と現役で戦い続けるので、主役の立場になることもあれば脇役にまわることもある。脇役にまわることも大変で、それなりの実力・実績が必要です。藤井さんが八冠を目指して挑戦する最後の相手として永瀬さんがふさわしいということだと思います」と話していました。
その上で、「第3局のあとの打ち上げで永瀬さんが『自分で変えられないことはもう気にしない』と言っていたのが印象的でした。今回藤井さんが八冠を目指していて、ファンやメディアが大きな注目をしていることはもう変えられないことなので気にせずに、実力を高めて対局の場で100%出すことに専念すると話したことに精神力の強さを感じました。今回の勝負は結果がどうなるか分かりませんが、後世に長く伝えられるものになるはずなので、勝ち負けだけでなく、内容もお互い力を出し切ったものにしてほしい」と期待を寄せていました。