カメムシ 全国的に大量発生 都市部でも その背景と対策は

苦手な人もいると思いますが、「虫」についてです。
ことしは農作物に被害を及ぼすカメムシが全国的に大量発生しています。
その姿は関西の都市部でも目撃され、インターネットでも関心を集めています。
なぜ、大量発生しているのか、どんな対処法があるのか取材しました。

【農水省 全国的にカメムシの大量発生予想】
農林水産省によりますと、カメムシの大量発生が予想されるとして、28日までに京都府や和歌山県など全国21の道府県が注意報を出して、農作物の管理を徹底するよう呼びかけています。
一方、カメムシは都市部でも目撃が相次いでいて、「カメムシ大量発生」が検索のトレンドの上位にランクインしているほか、SNSでの投稿も相次いでいます。
このうち京都市に住む男性がSNSに投稿した動画では、公園の街灯のまわりにおびただしい数のカメムシが集まっている様子が映されています。
男性は「この公園は月に2〜3回通るが、ふだんとは違うにおいがしたので近づいてみたら、これまで見たことがないほど多くのカメムシがいて驚いた。気持ち悪かったです」と話していました。
また、27日夜、NHK大阪放送局の入り口の前をみたところ、床や天井に張り付いたカメムシを少なくとも20匹以上確認することができました。
カメムシの研究が専門の伊丹市昆虫館の、長島聖大 学芸員によりますと、ことしは杉やひのきの実などのエサが豊富で成長した個体も多く、その一部が都市部に移動し、明かりに集まる様子が目立って目撃されている可能性があると指摘しています。
そのうえで、長島さんは「カメムシは刺激を与えないかぎり、においを出さないので、部屋に入ってきた場合はつぶさないようにして、ティッシュにつつんだり、ペットボトルにいれて外に逃がすといい」と話していました。

【紀の川市 平年の10倍以上増】
和歌山県紀の川市では、柿などの果物に被害を及ぼすカメムシの数が、平年の10倍以上に増えていて、県は病害虫の発生に関する注意報を出して対策をとるよう呼びかけています。
和歌山県農作物病害虫防除所は、先月(8月)26日から今月(9月)5日まで紀の川市や有田川町、それにみなべ町に装置を設置し、みかんや柿などの果物の果汁を吸い被害を及ぼす「チャバネアオカメムシ」や「クサギカメムシ」などの数を調査しました。
その結果、紀の川市では、▼「チャバネアオカメムシ」は平年のおよそ5倍にあたる1844匹、▼「クサギカメムシ」がおよそ11倍にあたる848匹に増えていました。
また、みなべ町でも、▼「チャバネアオカメムシ」が平年のおよそ5倍にあたる8168匹、「クサギカメムシ」がおよそ4倍にあたる552匹にのぼるなど各地で平年を大きく上回る状況が続いています。
県によりますと猛暑が続いてカメムシの活動が活発になったことが原因とみられるということです。
県は「柿や収穫期の早い温州みかんでは、すでに被害が大きくなっている」としていて、県内全域に病害虫の発生に関する注意報を出して、農家に対して薬剤の散布などの対策をとるよう呼びかけています。

【かつらぎ町 柿農家の対策は】
全国有数の柿の産地、和歌山県かつらぎ町では、カメムシの大量発生によって特産の柿の実が黒く変色するなどの被害が出ています。
農家の人たちはさらなる被害を防ごうと農薬を散布するなどの対策を急いでいます。
かつらぎ町で柿農家を営む松本治郎さんはおよそ60アールの畑で3種類の柿を育てています。
このうち刀根早生(とねわせ)という品種が、いま収穫の時期を迎えていますが、大量発生したカメムシによって表面が黒く変色してくぼんだり、実そのものがスポンジ状になったりする被害に悩まされているということです。
収穫を控えた柿全体の3割ほどがこうした被害を受けているということで、松本さんはこれ以上、状況が悪化しないように28日、柿の木に農薬を散布していました。
柿農家の松本さんは、「ことしは1本の柿の木全体がダメになってしまっているものもあり被害が大きい。カメムシの対応には農薬の散布を定期的にやっていくしかない」と話していました。
「JA紀北かわかみ」の井上知映 営農指導員は「畑にカメムシが増えたと感じた時には、少しでも早く農薬を散布して作物をカメムシから守ってほしい」と話していました。