神戸5人殺傷事件裁判 2審も無罪判決 大阪高裁

6年前、神戸市で祖父母と近所の女性の3人を殺害し、母親など2人に大けがをさせた罪に問われ、1審で無罪が言い渡された32歳の被告の裁判で、2審の大阪高等裁判所は「心神喪失の状態だった疑いが残るとした1審の判決に不合理な点はない」などとして無罪を言い渡しました。

神戸市北区の32歳の被告は平成29年7月、自宅などでいずれも83歳の祖父と祖母、それに近所の79歳の女性を包丁で刺すなどして殺害し、母親や別の近所の女性にも大けがをさせたとして、殺人などの罪に問われていました。
1審の神戸地方裁判所は、おととし11月、「事件当時、被告は心神喪失の状態だった疑いが残る」として無罪を言い渡し、検察側が控訴していました。
25日の2審の判決で、大阪高等裁判所の坪井祐子 裁判長は、被告の精神鑑定について、1審と同じ弁護側の鑑定結果を採用しました。
そのうえで、「医師の指摘のように、被告は事件当時、妄想などの精神疾患の圧倒的な影響下で犯行に及んだとの疑いは払拭(ふっしょく)できず、1審の判断に不合理な点はない」などとして1審に続き無罪を言い渡しました。

【大阪高検次席“適切に対応する”】
大阪高等検察庁の小弓場文彦 次席検事は「判決内容を精査したうえで適切に対応する」とコメントしています。
【遺族“心を殺すに等しい”】
無罪判決を受けて事件で亡くなった79歳の女性の長男は「私たちは突然、母親を奪われ、これまで暮らしてきたあたり前の時間は止まってしまったような感覚が続いています。きょうの判決は、私たちの心をもう一度殺すに等しいものでした。私たちは、事件の日に被告人から、そして、1審判決と2審判決により、3度にわたり心を踏みにじられたと思います。被告が妄想を抱いていたとしても、人を殺して罰せられない理由はわかりません」などとコメントしています。
【大けがをした女性“納得できない”】
無罪判決を受けて、事件で大けがをした女性は「決して納得できるものではありませんが、私にはどうしようもありません。割り切って、前を向いて生活していくしかないと思っています」とコメントしています。