阪神優勝目前 地元は早くも祝賀ムード 警察は街頭混乱に備え

プロ野球、セ・リーグ首位の阪神。
12日の試合で巨人に勝ち、広島が敗れたため優勝へのマジックナンバーは「3」となりました。
地元では早くもお祝いムードに包まれています。
一方、優勝が決まった際の繁華街などでの混乱を防ごうと警察では態勢を強化することにしています。

兵庫県西宮市のJR甲子園口駅の近くにある「すずらん通り商店街」では、阪神のマジックが初めて点灯した先月(8月)16日から、通りの両側にあわせて25本の旗を掲げています。
タイガースをイメージした黄色い布に黒色の文字で「阪神タイガース優勝」と書かれていて、道行く人からは「気が早い」という声や、「『アレ』は間違いないです」という声が聞かれました。
商店街では念願がかなった際のサービスを検討している店もあります。
店の外にマジックナンバーを貼り出しているラーメン店では、18年ぶりの優勝となれば、翌日はラーメンを1杯180円で提供するなどのサービスを予定しているということです。
「すずらん通り商店会」の莵原和義 会長は、「ことしは確実と思ったので、早めに旗を揚げました。小さい商店街ですが、力いっぱい応援しながら地域を盛り上げたいです」と話していました。

【大阪府警 1300人態勢で警戒へ】
阪神タイガースが優勝した場合、大阪・ミナミの道頓堀を中心に多くの人が集まることが予想されるとして、大阪府警察本部はおよそ1300人の態勢で警戒にあたることにしています。
阪神が優勝すると、大阪市の繁華街などに多くの人が集まり優勝を祝うのが恒例となっていますが、2003年のリーグ優勝時には道頓堀の戎橋から5000人以上が川に飛び込む騒ぎとなり、1人が死亡したほか、複数のけが人が出ています。
前回、リーグ優勝した2005年には戎橋周辺の通行を規制するなどの対策が取られ、川に飛び込む人は大幅に減りましたが、周辺は一時、身動きがとれないほど混雑し、歩行者が車道にまではみ出す事態になったということです。
大阪府警察本部は、今回もこうした事態が予想されるとして、優勝した場合には警備本部を立ち上げ、およそ1300人の態勢で警戒にあたることになりました。
当日はミナミの繁華街などを重点的に警戒するほか、飛び込みを防ぐため戎橋への立ち入りを一部規制したうえで、いわゆる「DJポリス」と呼ばれる機動隊員を配置し、歩行者の誘導や注意の呼びかけを行うことにしています。
大阪府警察本部は「人が密集すると大きな事故につながりかねないので、現場の警察官の誘導に従ってほしい。悪質な行為については厳正に対処していく」と話しています。

【過去の優勝で 大阪 道頓堀は】
これまで、阪神タイガースが優勝した際には大阪・ミナミの道頓堀川に多くのファンが飛び込むなど、さまざまな騒動が起きています。
このうち、1985年にリーグ優勝した際には、熱狂的なファンがファストフード店に設置されていた「カーネル・サンダース人形」を胴上げし、道頓堀川に投げ込みました。
人形は、当時、三冠王を獲得したバースさんによく似ているとされていました。
大阪市によりますと、道頓堀川にファンが飛び込んだのもこの時が始まりとされているということです。
また、複数のファンが市内で車をひっくり返す事件なども起きています。
それから18年後、2003年のリーグ優勝時には、道頓堀の戎橋に多くのファンが詰めかけておよそ5300人が道頓堀川に飛び込み、男性1人が死亡したほか、複数のけが人も出ました。
このため、翌月に開催された日本シリーズでは、飛び込みを防ぐため橋の欄干に木の板が取り付けられ、柱や信号などにも有刺鉄線が張り巡らされる事態となりました。
そして前回、2005年のリーグ優勝の時も戎橋周辺の通行を規制するなどの対策が取られ、川に飛び込む人は大幅に減りましたが、警察によりますと、周辺は一時、身動きが取れないほど混雑し、酒に酔った若者たちが近くの御堂筋の車道に飛び出したり、車の屋根にのぼったりしたということです。
この時は、公務執行妨害や器物損壊などの疑いで合わせて13人が検挙されています。

【「アレ」を目前に 道頓堀はいま】
阪神タイガースが優勝した場合に多くの人が集まることが予想されている大阪・ミナミの道頓堀では、商店街の関係者などから期待と不安の声が聞かれました。
このうち、道頓堀商店街にあるたこ焼き店の35歳の男性スタッフは「阪神ファンなので、優勝して大阪の街が活気づくのはうれしいです。訪れる人たちには常識の範囲内で盛り上がってほしいと思います」と話していました。
また、串カツ店の40歳の店長は「18年前にリーグ優勝した時は、店の前にある看板や人形を壊された経験があります。盛り上がるのはいいことですが、盛り上がりすぎて物を壊したり、勝手に持って行ったりするのはやめてほしいです」と話していました。
商店街の事務局によりますと、優勝が決まった場合に臨時休業などの対応をとるかどうかは決めておらず、状況に応じて個々の店の判断に任せるとしています。
一方、戎橋やその周辺では、今のところ通行規制などは行われていませんが、ところどころに日本語や英語など4か国語で「飛び込み危険」と書かれたポスターが貼られていて、警察と市が注意を呼びかけていました。

【兵庫県警は500人態勢で警備強化へ】
プロ野球、阪神の優勝が決まった際の繁華街などでの混乱を防ごうと、兵庫県警察本部は、マジックナンバーが「2」か「1」になった時点で総勢500人余りの態勢で警備にあたることにしています。
繁華街などでの混乱を防ごうと、兵庫県警察本部は、マジックナンバーが「2」か「1」になった時点で総勢530人の警察官を動員し、大勢の人が集まる▽甲子園球場や▽JR三ノ宮駅、それに▽阪神尼崎駅の3か所の周辺で重点的に警備にあたることにしています。
▼各警察署や県警本部の交通部門の警察官などあわせて280人が専従で3か所の雑踏警備や交通誘導にあたるほか、▼機動隊などからも状況に応じて250人が配置されるということです。
兵庫県警地域企画課の担当者は、「ムードが高まって人が集まれば不測の事態が起こりかねない。状況を見極めながら事故防止に努めたい」と話しています。

【専門家“引き返すことも考えて”】
阪神タイガースがリーグ優勝した場合に懸念されているのが、繁華街に多くの人が密集することによる事故やトラブルです。
去年10月には韓国・ソウルで起きた群集事故で150人以上が亡くなっていて、専門家は「ルールを守って行動し、危険を感じたらその場から引き返すことも考えてほしい」と話しています。
<前回・2005年の様子は?>
群集の行動や事故に詳しい大阪工業大学の吉村英祐 特任教授は、前回、2005年に阪神タイガースがリーグ優勝した際に偶然、大阪・ミナミの道頓堀の近くにいたということで、当時の混雑の様子を撮影していました。
この時の状況について吉村特任教授は、「道頓堀に近づくと、どんどん人が増えていき、戎橋に近づくことはできなかった。集まった人たちは興奮した様子で、警察官や警備員も制止できていないように見えた。一般的に、警察官などの制服を見ると人は冷静になると言われているが、当時は警備にあたる人たちも群集に埋もれてしまい、姿が見えなくなっていた」と振り返ります。
<より多くの人が集まる懸念も>
警察は今回、戎橋への立ち入りを一部規制したり、いわゆる「DJポリス」を配置したりして警備を強化することにしていますが、特任教授は、2005年と比べて、▼スマートフォンの普及で動画などの撮影がしやすくなったことや▼SNSで情報がすぐに拡散するようになったこと、それに▼海外からの観光客が増えたことなどによって、当時よりも多くの人が集まる可能性があるとしています。
<群集事故を防ぐには?>
去年10月には、韓国・ソウルの繁華街イテウォンで日本人2人を含む150人以上が亡くなる群集事故が起きました。
当時は、ハロウィーンを前に仮装した若者などが密集し、身動きが取れない状況が続いたといいます。
こうした事故やトラブルを防ぐにはどうしたらいいのか。
重要なのは、密集しすぎないよう、周囲の状況をよく確認することだといいます。
特任教授によりますと、1平方メートルあたりの人数が5〜6人を超えると、引き返そうと思っても後ろから押されるなどしてできなくなるということです。
目安は「エレベーターの中に例えると、定員オーバーのブザーが鳴りそうかどうか」です。
また、人が密集していると足元に物が落ちていても見えにくいため転倒しやすく、1人でもつまずくと大きな事故につながるリスクがあるということです。
吉村特任教授は「お年寄りや背が低い人、それに子どもを肩車している人などはリスクが高いので、混雑した場所には近づかないほうがいい。事故やトラブルが起きるとせっかくの優勝も後味が悪くなってしまうので、ルールを守って行動し、危険を感じたらその場から引き返すことも考えてほしい」と話していました。