南海トラフ巨大地震評価検討会“特段の変化なし”

南海トラフで巨大地震が起きる可能性を評価する定例の検討会が開かれ、「特段の変化は観測されていない」とする見解をまとめました。

専門家でつくる検討会は、南海トラフの想定震源域や、その周辺で観測されたデータを分析しました。
このうち、巨大地震の想定震源域にあたる地域では先月(8月)以降、目立った地震はありませんでした。
一方、プレート境界付近で「深部低周波地震」と呼ばれる小規模な地震が、▼紀伊半島北部では先月2日から10日にかけて、▼四国西部では先月14日から21日にかけて発生し、これに伴い周辺の複数の「ひずみ計」でわずかな地殻変動が観測されました。
また、▼東海では小規模な地震は観測されなかったものの、先月23日から25日にかけて周辺の複数の「ひずみ計」で、わずかな地殻変動が観測されました。
いずれも想定震源域のプレートの境界がゆっくりとずれ動く「短期的ゆっくりすべり」が原因とみられています。
このほか、▼四国中部で2019年の春ごろから、▼九州南部でことし初めから地殻変動が継続的に観測されていますが、それぞれ、▼四国中部周辺と▼日向灘南部周辺のプレートの境界が年単位でゆっくりとずれ動く「長期的ゆっくりすべり」が原因とみられるということです。
このうち、▼日向灘南部周辺の「長期的ゆっくりすべり」は最近は鈍くなっているということです。
こうした「深部低周波地震」や「短期的ゆっくりすべり」、「長期的ゆっくりすべり」は、これまでも繰り返し観測されていることから、検討会は「大規模な地震の発生の可能性がふだんと比べて相対的に高まったと考えられる特段の変化は観測されていない」とする見解をまとめました。
検討会の会長で東京大学の平田直 名誉教授は、「南海トラフ巨大地震が起きなくなったわけではなく、プレートが沈みこんでいることを示すデータはいくつも観測されている」と述べ、引き続き地震や津波への備えを進めるよう呼びかけています。